宰相の策もリオンにはバレバレ
ヒルダ諜報部長のスパイメカは優秀なのです
ルフランの宰相が王都の大混乱をなんとか収束させようと四苦八苦している頃。
「・・・これは本当に事実なのか?」
俺は例によって超優秀すぎるヒルダ諜報部長から、とある報告を受けていた。
目の前のモニター画面に映し出されているのは、先程俺の飛空艇によって半壊させられたルフランの王城の内部。そこに居たのはルフラン王国の宰相と1人の騎士。
だがそれよりも問題だったのは、この2人が話していた内容だ。
なんとこいつら、事もあろうに既に国王を暗殺し、今まで生きている様に装っていたのだ!
暗殺した時期は王太子が変死してから数日後らしい。
その王太子も俺の予想通り、呪いによる呪詛であると、御丁寧にも本人達がベラベラと喋っていたよ。
だが王太子の死を知った国王は、第2王子のグーズゲスではなく、第1王女のアリシアを自分の後継者に指名したらしい。
宰相一派にとっては利発なアリシアが次期国王になるよりも、バカで扱いやすいグーズゲスの方が都合が良い。
何しろ宰相一派はルフラン王国を思いのままにして甘い汁を吸いまくりたいんだからね。
だから王を暗殺した。
グーズゲスも贅沢三昧の暮らしを保証する事で仲間に引き込んだ。
後は王が生きている様に装い、重い病に伏せっていると称して面会謝絶として、アリシアが会えない様にした訳だ。
そうしたらさっきの飛空艇の砲撃で半壊した城の一部が崩落して、瓦礫の一部が王の寝室を直撃したらしい。
宰相はこれ幸いと国王の死を公表して、俺達の攻撃によって国王が戦死した、とアピールする腹積もりの様だ。
アノ腹黒宰相、まさしく転んでもただでは起きないな。
まぁ俺も、ヒルダに事実かと問いかけはしたものの、目の前の映像と音声は疑問の余地はない。
「すまないなヒルダ。あまりに衝撃的な内容だったから、つい間抜けな質問をしてしまった。改めて問うが、宰相が俺達に国王殺害を擦り付けようとしている策略について、ぶっちゃけフォーチュンにどれほどの影響があると考える?」
ヒルダは考える仕草を見せた後、
「・・・ではお答え致します。まずは短期的な予測ですが、これは全く我が国には影響を及ぼさないと断言出来ます。現在ルフラン王国は先日の我が国との戦闘で2万人もの兵を失っております。我が国に侵攻したくとも、差し向ける兵力がありません。どうか御安心を。」
ふむ、あの時ムーのブレスのお陰でルフランの精鋭2万人を全滅させたからな。そりゃこちらに侵攻する余力はないわな。
「・・・次に長期的な予測ですが、これもまた大した影響はないと思慮致します。宰相のプロバガンダに賛同するのも、恐らく貴族階級くらいかと。大多数の平民達には無視されるでしょう。我が国に向けて放たれたルフランの密偵や工作員も、全て我がスパイメカによって排除されており、情報漏洩の心配も全くございません。」
「そうか・・・。ご苦労だったヒルダ。これからも監視活動を宜しく頼む。特にトリマとルフランに関してはくれぐれも厳重にな。」
俺の労いに華麗なる敬礼をしながら、
「イエス!マスター!」
音もなく退出するヒルダ諜報部長。
さてここには俺以外に(当然の事ながら)嫁達もいるんだけど・・・。
あまりにも衝撃的な真相を知らされて、アリシアは顔を両手で覆って泣き崩れている・・・。それを他の嫁達が一生懸命に慰めている。
まあ無理もない。病に伏せっていると聞かされていた父親である国王が、王太子の死の後すぐに暗殺されていたなんてな。
しかもあろうことか自分の兄のグーズゲスが、事もあろうに宰相一派とグルだったなんて、まさにアリシアからしたら信じがたい事実だろうな。
やれやれ・・・。
もうじきランチだというのに、思いっきり場が湿っぽくなってしまったぞ( ̄▽ ̄;)
居た堪れないから、俺は食堂に人数分のランチを並べて、ひと足早く帝国に向かった。皇妃とルイーゼには住民達の分も含めたランチをマジックバッグに入れてあるからね。
後は皇帝に餌付けするのみ!
早速転移すると、やはり今日も皇帝は食堂にて俺のランチを待っておられました♡
ランチを並べながら俺は皇帝にルフラン王国での顛末を報告した。
ランチを食べながら皇帝は、
「・・・モグモグッ。そうか・・・。既にルフラン国王は落命していたという事だったのか・・・。私とはさほど親しかった訳では無いが、面識はあった。中々の人物であったぞ。王太子もアリシア姫も将来を嘱望されておった。それにひきかえ第2王子のグーズゲスと来たら!飲む打つ買う以外になんの取り柄もない男だ。宰相め・・・!グーズゲスを傀儡にしてルフランを完全に思うがままにする算段とみえる。・・・あいわかった。我が帝国もルフランの動向を注視する事にしよう。」
皇帝のランチを済ませた俺は、(帰りたくないけど)飛空艇へと転移した。
・・・案の定特別展望室で、嫁達はまさしくお通夜状態でランチを食べておりました。
「リオンよ〜場の空気が重いのじゃあ〜。こんな時は呑まねばやってられんのじゃあ〜。ビールもっとお代わりなのじゃあ〜。」
「リオンさん〜今日はリオンさんの美味しい筈の料理がちっとも美味しく感じられないんですぅ〜。こんな時はもう呑むしかないですぅ。私もビールお代わりですぅ。」
「・・・リオン様ビールお代わりください・・・。今日は呑まなきゃやってられません!とことん呑みます!」
うわ〜!珍しくアリシアの目が据わってるぞぅ!
・・・まぁ気持ちは痛い程よくわかるからご希望通りとことん呑ませてやろう・・・。
「・・・アリシア様・・・可哀想・・・国王陛下の・・・冥福を祈る・・・ビールお代わり・・・。」
「ぬおぉぉぉぉ!我が主君アリシア様を泣かせるとは〜!宰相め〜!許すまじ!よーし!ならば私はビールを宰相に見立てて成敗致す!ゴキュッゴキュッゴキュッ!プハ〜ッ!ビールどんどんお代わりを持て〜い!」
・・・ただ1人いつもと全くブレないロゼッタ・・・。
ある意味尊敬するぞ。
「リオン神様今日は悲しいです!なので私とお付達にビールお代わりです!」
「ビェェェェェ〜ン!アリシアさん可哀想だよぅ!涙が止まらないよぅ!ビールお代わりだよぅ!」
「リオンちゃん今日は呑みまくるの!辛い気持ちを忘れる為にはお酒しかないの!ビールじゃんじゃんお代わりなの!」
「くぅ〜!辛いのです!悲しいのです!寂静無為なのです!深山幽谷なのです!佐渡金山なのです!石見銀山なのです!とにかくもっともっとビールお代わりなのです!」
・・・まぁさておき、嫁達へのランチは一応完了しました(*^^*)
悲しい時でも嫁達は呑みまくるのです♡




