ルフラン大混乱と腹黒宰相
久々のルフラン宰相の話♡
◆◆◆◆ルフラン王国宰相視点◆◆◆◆
ソレが起こった瞬間、まさしく私を含めた城内の人間全てが唖然とした。
我がルフランの誇る屈強なる騎士達が、揃って膝から崩れ落ちた。
中には必死に祈りを捧げている者もいた。
かくいう私も見事に腰を抜かした。
・・・その際下半身を濡らしたのは絶対に内緒だ!
だが・・・城内が恐慌状態となるのも無理はない。
突如として見た事もない様な巨大な空飛ぶ船が王都ルフラン上空に出現し、徐に凄まじい光の奔流を我が王城に向かって放ちおった!
光の奔流は我が王城の誇る尖塔及び王城の上層階を残らず消滅させた。
尖塔及び上層階は平時には人の出入りが全く無かった為、人的被害が皆無であったのが不幸中の幸いではあったが、私を含めた大勢の人間達に与えた恐怖は想像にかたくない。
その上御丁寧にも空飛ぶ船は、大音響で声明文を読み上げたのだ!
曰く、
自分はフォーチュン王国国王のリオン・ローゼンハイムである。
ルフランが一方的にフォーチュンに対して戦争を仕掛けてきた。
今回の攻撃はその報復である。
自分は創造神の代理人であり、その代理人に喧嘩を売ったという事は、創造神に喧嘩を売ったに等しい。
創造神は今回の事で激怒し、ルフラン王国に対して記録的な大凶作と飢饉を神罰として下す。
・・・概ねそのような内容であった・・・。
そして声明文を読み上げた後、件の空飛ぶ船は何処かに飛び去った。
・・・で、今現在の恐慌状態に至る訳だ。
皆が茫然自失状態だ・・・。
流石の私ですら、頭が真っ白になって全く思考が働かない。
勿論、考えなければならない事、判断しなければならない事は山ほどあるのだが、目の前で起きた事があまりにも非現実的すぎて私を含めこの場にいる全員が思考停止している。
・・・一体どれほどの時間茫然自失としていたのだろう?
「・・・・・閣下!宰相閣下!」
気が付くと、私の周りには大勢の騎士や兵士達が集まっていた。
いかんいかん!上に立つ者が動揺していては、下の者達の士気に関わる!
「・・・申し訳ない。あまりの惨状に暫し我を忘れていた。」
恐らく私の周りに集まった騎士や兵士達は、今回の件に関する各方面からの報告であろう。
「お前達の報告を聞こう。」
すると騎士の1人が、
「・・・では某から報告致します・・・。まず王城の損害ですが、城の尖塔及び上層階は文字通り完全に消滅しておりました。幸い非常時でもなければ人が寄り付かない場所でしたので、奇跡的にも犠牲者はおりませんでした。」
私の予想通り犠牲者は出なかったか・・・まさしく重畳だな。
次いで別の騎士が、
「・・・城自体の被害はその通りなのですが、問題が山積しております。まず王都の民全てがパニック状態でございます。一部の民達は荷馬車に家財道具を積み込んで王都から逃げ出す動きを見せており、其れを阻止しようとする騎士や兵士達との間で小競り合いが発生しております。また一部の民達は暴徒化して、市場や商店になだれ込み、略奪行為に及んでおります。現在騎士団を差し向けて鎮圧に当たっておりますが、その・・・。兵力が足りません!何卒宰相閣下のお力で、城から増援部隊を差し向けて頂きたいのです!」
まさしく目を覆う様な・・・いや、頭を抱えたくなる様な事態だ・・・!
だが、むざむざと手をこまねいている余裕はない!
「この城の事は構うな!至急城内の全ての戦力を引き連れて、可及的速やかに暴徒共を鎮圧するのだ!」
「はっゴミ宰相閣下!!」
騎士は早速指示を伝えに私の元から去る。
その後も私は騎士や兵士達にあれこれと指示を出し、気付けば自分の周りには騎士1人を残すのみ。
「・・・お前か・・・。要件は?」
コイツは特別だ。この騎士は言わば私の腹心なのだ。
他の者達には知られたくないな後暗い事をやらせている男だ。
この男が態々私の前に姿を現すとは相応に重要な案件であるという事だ。
騎士は私の耳元に顔を近付けて、
「実は先程の攻撃による余波で、城の一部が崩落しました。その際に例の死体が瓦礫の直撃を受けました。如何致しましょうか?」
・・・この男の言う例の死体とは、何を隠そうこの国の現国王だ。
そう!このルフラン王国の現国王はとうの昔に死んでいたのだよ!
私とこの男、あとは宮廷魔導師長の3人で結託して、今まで生きている様に偽装していた訳だ。
それもこれもあのアホ王め!!
苦労して邪魔な王太子を呪詛して始末したのに、王太子が死去したら今度はアリシア王女に王位を譲ると抜かしおった!!
アリシア王女は昔から聡明だった。聡すぎるくらい聡かった。
あんな女に王位を継がれたら、国政を壟断する事が出来ぬではないか!
・・・だから密かにアホ国王をあの騎士に始末させ、宮廷魔導師長に命じて幻影魔法によって重い病に伏せっている様に偽装した訳だ。
当然の事ながら面会謝絶。アリシア王女とて国王には会えない様にした。
その間に第2王子のグーズゲスに近付き、怠惰な生活と引き換えに一味に引き込んだ。
あのアホ王子は呑む事と女を抱く事と金銀財宝に囲まれる事にしか興味無い真のアホだからな。
こちらとしては実に扱いやすい存在だ。
しかしコレは寧ろ好都合かもしれん。
フォーチュンからの攻撃による城の半壊に巻き込まれて重篤な病で床に伏せってる国王陛下が崩御したとなれば、自国の貴族達や臣民達はフォーチュン憎しで一致団結するであろう。
たとえ今は戦端を開く余力がなくとも、フォーチュンに対して敵愾心を植え付ける事で、国を纏める事が出来る。
私は件の騎士に、
「国内の全ての貴族達と各都市に早馬を出せ。内容は無礼なフォーチュンから言われなき攻撃を受けた。王城はその所為で半壊。その余波で病気療養中の陛下が巻き込まれて崩御なされたと。各都市には高札を立てて広く知らせるのだ!」
クククッ!リオン王とやら・・・。
このルフラン王国宰相、ゴミ・クズ。
転んでもただでは起きないのだよ!
いずれ目に物見せてやるぞ!首を洗って待っていろ!
果たして宰相の悪足掻きは何処までリオンに通用するのか!?




