【095話】劣勢から始まる2回戦
「では、これより2回戦を開始します」
審判の合図が入る。
ランドとセイ・ジョールとの戦いが始まる。
完全に俺のことロックオンしているランドと、明らかに普通の状態ではないセイ・ジョール。
──多分向こうは万全の状態じゃない。
先程のランドが発した言葉。
『貴族のお嬢様が相手って言うから、簡単な戦いかと思ったが……』
──あれはつまり、2回戦で当たる俺たちのことを全く警戒していなかった。というか、知らなかったように見えた。
加えて、ランドはセイ・ジョールと協力して俺たちと戦おうだなんて微塵も考えていないようである。
モナのことをただの御令嬢と考えているのであれば、俺だけ倒してしまえば、雌雄が決すると考えているみたいだ。
けれども、ランドのことは以前、俺に襲い掛かってきた時に返り討ちにしたことがある。
自力では確実にこちらが上。
ランドは、挑戦者側であるはずなのだ。
それなのに、あんなに自信満々な顔……。
──勝算があるのか?
「モナ、警戒しろ」
「分かってるわよ。あの腹立つ男は任せるわ。私は、アイツをできるだけ早く倒してくる」
向こうが何か仕掛けてくるかもしれないが、俺は普段通りに大盾を構える。
まあ、やることは変わらない。
俺が望み通り、ランドの相手をしてやればいい。
セイ・ジョールに関しては、モナが瞬殺してくるだろう。
「それでは、試合開始っ!」
俺とモナは示し合わせた通り、各自狙った相手の方へと向かった。
▼▼▼
「レオォッッッ!」
ランドが大剣を振り下ろしてくる。
そこは、大盾できっちり防ぐ……防いだのだが。
「うぐっ……」
「まだまだぁっ!」
ランドは勢いよく大剣を振り回す。
何故だ?
ランドの一撃が重過ぎる。
以前とは、全くの別物。これは……Sランク冒険者の渾身の一撃と言われても、驚かないほどの重圧だ。
盾越しに衝撃が伝わるたびに後方に押しのけられる。
「馬鹿にするなよっ! 俺は、最強になる男なんだよ!」
ヤバい。
このまま、防戦し続けるだけだと勝ち目はない。
──モナは⁉︎
モナの決着を待たなければならない。そう思い、俺はモナとセイ・ジョールの戦いに視線を向ける。
「……嘘だろ」
思わず声が漏れる。
モナが押されている……。
セイ・ジョールは、手頃なサイズの片手剣を使い、モナの槍での攻撃を弾いている。
あり得ない光景だ。
あのモナの猛攻を顔色ひとつ変えずに防いでいる。
「もう、このっ!」
モナにも焦りが見える。
まさかの苦戦。こんなところで、負けるわけにはいかないと頭では分かっているのだが、どうしたってランドの猛攻に押され、モナも思うように戦えていない現状。
「オラアッ! 余所見なんかしてる余裕ないぜ?」
「くっ!」
ランドの激しい攻撃が続く。
腕が痺れてきた。
時間制限もあるこの試合。このまま押され続ければ、判定負けでモナの冒険者としての未来が閉ざされるのが安易に想像できる。
──出し惜しみなんて、してるわけにはいかないな!
「はぁっ!」
ランドが大剣を全力を込めて振り下ろそうとする瞬間。
ランドは完全に動きを止めた。
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