【093話】モナとの連携を高めよう
「戻るわよ!」
モナから腕を引かれる。
アウグスト、レジーナペアの試合は圧巻だった。
とはいえ、実質アウグスト1人で試合を終わらせてしまったというものであったが……。
これが、Sランクパーティ【神々の楽園】の実力か、と。
現実を思い知らされた気分であった。
そんなつい見入ってしまうような状態の俺を現実に引き戻してくれたのは、やはりモナである。
相手の強さを知り、それでも勝利への歩みを止めることはない。
モナは決して折れたりはしない。
「……あの2人、強かったわね」
「ああ、前年度優勝してるってのも、納得の動きだったからな」
観戦を終え、モナは俺を引っ張りやや早足で歩く。
「でも、最後にあの舞台に立ち続けるのは、私たち」
表情は見えない。
けれども、モナの言葉は力強いものであった。
「ああ、その通りだ」
「諦めたりしないわ。壁がいくら高くても、壊してしまえば問題ないもの」
相変わらずの脳筋思考。
押せ押せで戦えば、なんとかなるというモナの強気な姿勢がよく伝わってくる。
でもきっと、モナのその考え方は一貫して正しい。
武術大会は、より強い者を決める大会。
力をぶつけ合い、押し負けるようでは優勝は望めない。
──俺たちも、地力は十分にある。勝つか負けるか……それはきっと、その時になってみないと分からない。
そして、力のぶつかり合いをより有利な方向へと導くために、戦術、戦略がある。
モナの実力を最大限に発揮できるような環境づくり。
急務で行うべきことは、これだ。
「モナ、次の試合までは、時間あるよな?」
「ええ、猶予はまだ十分にあるわ」
「なら、少し付き合ってくれないか。モナともっと動きを合わせたい」
個人戦であれば、己の実力のみで勝ち上がれるが、タッグ戦は違う。
2人で勝ち上がる。
互いの弱点を補いながら、長所をより伸ばす。
そんな戦い方が必要だ。
モナの広い攻撃パターンは彼女の持つ大きな武器だ。
槍だけではなく、魔法や体術。
それらを駆使して、理詰めで戦えば、予想外の劣勢になることはなくなるだろう。
「そうね。私もレオともっと強くなりたいもの」
モナは、こちらの提案に好意的な返答をする。
よし、次の戦いはこちらが有利だと思うが、念には念を入れて、準備は万全に。
「俺のスキルは限りなく温存する。モナの戦い方によって、俺たちの運命は変わるぞ」
「望むところよ。私に任せて!」
試合ごとに動きを変え、相手に手の内を予測させない。
武術大会の攻略法は、モナの万能性を生かした早期決着だ。




