【089話】最大の敵を想定して
2回戦の開始を待つ。
参加者が多いため、初戦を終えた後の待ち時間はかなり長くなりそうであった。
タッグ戦への参加ペア数は、2000組以上。
俺たちは、シード枠とかではないので、優勝には、11回勝利を重ねる必要がある。
ハードルはかなり高いが、個人戦に比べれば、これでも難易度は緩和されている方だ。
個人戦の参加者は10000人を超える。
国内最大の武術大会とはいえ、腕自慢のそれらの頂点に立つなんて、どれだけ低確率なことか……。
──モナがいくら強いとは言え、やっぱりちゃんとした作戦も立てないとな。
「レオ? どうしたのそんな深刻そうな顔して」
「いや、勝つためにはどうすればいいのかとか、考えててさ」
「全部叩きのめす?」
「そう単純に勝ち進めるのは序盤だけだから……」
首を傾げて可愛らしい顔のモナであるが、今はその要素はいらなかった……。
自分を過信しすぎるのはよくない。
もちろん、自信はあった方がいい。
けれども、あらゆる可能性を考えて、それに対応できる策は多ければ多いほど保険として、今後の戦いに生きてくる。
「モナ、今大会の優勝候補とかって分かるか?」
モナは少しも考える素振りを見せずに、
「私たち?」
安直に即答した。
いやいや、質問の意図……。
今のは、鼓舞とか、そういうことではない。
「いや、俺たち以外で有力そうなペアはどこかってことなんだけど」
そう告げると、モナは考え込む。
まあ、俺視点ではある程度は絞り込めている。
【神々の楽園】のアウグストとレジーナのペア。
このペアは、前年度優勝した実績を持つ。
【神々の楽園】や【シリウス旅団】というSランクパーティからの参加ペアは、他にもいるが、正直なところ、アウグスト、レジーナの2人が飛び抜けて強い。
「警戒すべきは、前回大会の優勝ペアじゃないかしら」
モナも同意見のようだ。
「そうだな。2人とも高速アタッカーらしいから、油断すれば、即落ちさせられる可能性が大きい」
「そのためのレオね。物理アタッカーらしいから、簡単に受け切れるわよね!」
「いや、そうとも限らないけど……」
「自信がないの? タンクなのに?」
──いや、大盾使ってるからって、ノーダメージで受けきれるとは限らないだろ。
だいたい、相手がSランクパーティのエース2人なのだ。
破壊力はヴィランやモナと比類するか、それよりも上の可能性だってある。
盾ごと突破されるという状況も考えられる以上、モナを守りつつ安全策だけで立ち回れるほど、トントン拍子には、進まないだろう。
「モナもある程度の攻撃は受けられるようにして欲しい」
「ふーん。レオがそこまで言うってことは、それくらいの強敵なのね」
「ああ、彼らはシード枠で2回戦からの参戦になるが、恐らく他の参加者とは空気が違う」
「私を完全には守りきれないってこと?」
「そうだ。経験と実力は、向こうが上な気がする」
これは警告だ。
モナがやられてしまえば、この大会での勝利は掴めない。
それを彼女にはもっと自覚してほしいと思っている。
盾での耐久がずっとやれるわけじゃない。
限界は必ず存在する。
──ベストは尽くすが、全てを守りきれる保障なんてないからな。
だからこそ、アウグスト、レジーナペアとの対戦時は、覚悟を持って臨む必要がある。
「分かったわ。気を引き締める」
「頼む」
まあ、アウグストとレジーナと当たるのはまだまだ先のことだ。
今はただ目の前の戦いを勝ち抜いていくことを意識するだけである。
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