【088話】素敵な笑顔を浮かべて……
「失礼するわ!」
「た、頼む。モナリーゼッ!」
セイ・ジョールの縋り付くような声に耳を傾けることなく、モナはその場からさっさと立ち去る。
まあ、自業自得だろうし、俺は特に何も考えずにモナの後ろを歩く。
「いいのか」
必要ないとは感じているが、一応モナに確認する。
あんなんでも、モナの元婚約者。
話を聞くくらいする余地も微量にあるかもしれない……と、本当に少しだけ考えたので尋ねてみる。
モナは、振り向くことなく、
「いいのよ。あんなやつ、もうどうでもいいから」
バッサリ切り捨てた。
もう過去のことを引きずっている様子はない。
モナは、前を向いて歩き出した。
元婚約者であるセイ・ジョールなどは、この先の未来に関与するに足らない存在であると、しっかりと告げた。
──そっちの方がモナらしくていいな。
自分の意思を貫き、常に心を強く持つ。
それが、俺の知っているモナ。
後めたい過去があったとしても、そんなことは関係ないと吐き捨てて、今を全力で謳歌する。
「なら、いいけどさ」
「ええ。あれのことは、忘れましょう」
残念ながら、忘れることはまだ出来ないけどな。
トーナメント表からして、次の対戦相手は彼だ。
その対戦がモナにとって最後になるのか分からないが、とにかく、その時までは、セイ・ジョールと対面することは避けられない。
「次の対戦相手、あいつだぞ」
モナにその事実を告げると、モナは鼻で笑う。
「あら、そういうことなら、全力で相手してあげないとね」
セイ・ジョールの謙った態度の意味を理解したのか、モナは不敵に笑う。
──うわぁ、絶対に今までの鬱憤を晴らそうと、最大火力の魔法を撃つなり、槍でボコボコにするつもりだ。
なんてことを思っても、止めたりすることはない。
知らんぷり。
1人の人間がこの後酷い目に遭うことがほとんど確定的であったとしても、俺はその件に関しては、不介入。
当事者同士の問題にあまり首を突っ込むものではない。
「まあ、ほどほどにな」
死なないかな。
とセイ・ジョールの生命を案じた結果、俺は表面上そう言う。
まあ、これに意味なんてない。
全ては、モナ次第。
俺がちょっとやそっと宥めたところで、結末に大きな変化があるとは思えない。
モナは、満面の笑みを浮かべる。
「もちろんよ。配慮はするつもり!」
その笑顔が信用できない。
きっと、制止などが意味を成さないくらいに大暴れするのだろうなと、理解しつつ、2回戦に備えて、気持ちを切り替えるのであった。
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