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【085話】緊張の初戦が始まる




「さあ、準備はいい?」


「抜かりないよ」


 初戦開始時刻。

 俺とモナは、試合会場の上で対戦相手を横目で伺いながら、最終確認を行なっていた。

 試合会場を見下ろすように観客席には、多くの観戦者が集まっていた。

 会場はものすごく大きい。

 既に俺たちの隣のステージでは、試合が行われており、その他にもちらほら、戦闘が始まっているところもあった。


「相手は、2人とも剣士。物理受けの得意なレオがいれば、問題ないわね」


 あっさりとそれだけ告げたモナは、そのまま相手の方へと歩みを進める。


 ──信頼してくれているってことなんだろうけど、もう少し作戦会議とかしてもよかった気がする。


 小細工なんて必要ないということなのだろう。

 モナにしてみたら、こんなところで躓くことは、あり得ないという考えから簡素な話し合いで終えたっぽい。

 モナの未来がかかってる大会だから、もっと慎重に動いてもいいのではないかと思ったが、どうせモナが相手を蹂躙する未来しか見えない。


「一度でも盾で弾けば、勝ち確定か……」


 勝利する未来を想像して、そんなことを呟く。

 俺の役目はそんなに多くない。

 相手が攻撃してきたところを盾で弾き、隙を作る。それをモナが一瞬で叩きのめす。


 作戦とは言い難い。

 作業に近いかもしれない。けれども、勝ち進める試合は、この単純な動作を続けていくつもりだ。


 ──【釘付け】と【腐食】の使い時は、本当にピンチになった時だけ。


 モナと事前に打ち合わせていたこと。

 俺のスキルは、対人戦においても有用であるが、手の内を晒してしまえば、次の対戦相手からは、対策を練られてしまう。

 勝ち進めば勝ち進むほどに、その対策は分厚く破りにくいものへと強化されていくことだろう。


「ほ〜ら、相手の人待たせちゃ悪いでしょ?」


「悪い、今行く」


 考え込むのは、後にしよう。

 今は、目の前の戦いに集中だ。

 作戦の組み立ては、即興でやればいい。モナであれば、俺のその場その場での指示を聞き、的確な動きをしてくれるはず。


 ……まあ、きっとその必要があるか怪しいくらいの大暴れをしてくれる可能性もあるけどね。


 対戦相手の騎士との顔合わせ。


「「よろしくお願いします!」」


 礼儀正しい若い騎士の2人は、そう告げた頭を下げる。流石に冒険者と違い、所作が綺麗である。

 俺たちもそれに従い頭を下げる。


「よろしくお願いします」


「お願いします」


 一通りの、挨拶を済ませると、フィールド上にいる審判が手を挙げる。


「では、これよりタッグ戦初戦を開始いたします。制限時間は10分。どちらか一方のペアが気を失うか、場外判定になった場合に勝敗を決することとします。なお、制限時間を超過した場合、審判の判定により、勝敗を決めることとします」


 相手の意識を刈り取れば、勝利か。

 モナの怒涛の攻撃で場外にする手もある。

 制限時間の判定は、なるべくさせたくない。審判の主観が混じるし、それこそ運任せな勝ち方、負け方になる。


 ──負けるわけにはいかないからな。


 早期決着。

 慎重ながらも、時間切れに注意しつつ、勝利を目指す。


「それでは、試合開始っ!」


 戦いの幕が上がる。

 しかし、恐ることは何もない。

 頼もしい相方。

 彼女のサポートをしっかりとしていく。そうすれば、絶対に勝ち抜けるはずだ。




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