【076話】私の人生は私が決める!(モナ視点)
手紙が私宛に届いた。
『モナリーゼ・セントール宛
グロウ・セントールより』
その手紙は、お父様からのものだった。
『モナリーゼへ。
お前が冒険者を続けるなど、到底認めたくない!』
冒頭部分から、私の生き方を否定してくるような文面だった。
なんか腹立つわ!
けれども、その怒りを抑えて私は続きを読み進めてゆく。
『だが、お前なりに考えていることもあるんだろう。だから、お前が冒険者を続けることに条件付きで同意した。その条件を今から伝えよう』
話し合いの場で、お父様は、無条件に私の冒険者として生きていく今後を認めないと言った。
だから、実力を認めてもらおう。そういう話になったんだ。
どんな内容だって、私は乗り越えてみせる!
だいたいSランク冒険者で、あらゆる窮地を乗り越えてきたこの私が並大抵なことで躓いたりはしない!
どうせ、簡単な腕試し。
そう思いつつも、流すように内容に目を通す。
『クラッシュ王国武術大会が近日開催されるそうだ。そこでお前が冒険者として、確固たる実力があるのだと証明できれば、お前が冒険者を続けることを認めよう』
──武術大会。
なるほどと感じた。
国内最大の腕試しとも言える。
セントール子爵領内にて、私たち【エクスポーション】の実力は最も高い。
けれども、それはこの小さな領地でのお話。
国にはまだ、私たちよりも強い冒険者や武人がいるかもしれない。
──面白いじゃないの。
出場したことは今までで一度もない。
それでも、毎年開催される注目行事。
風の噂で、色々と耳にしたことくらいはあった。
他のSランクパーティと手合わせはしたことがない。
そもそも、名前しか聞いたことがない。
未知の敵。
実力は、こちらよりも上かもしれない。
……だからこそ、今回私の前に立ち塞がる壁としては、十分なくらいのものである。
『優勝。……優勝だ。敗北は認めない。負けた場合、お前はすぐにセントール子爵邸に帰ってきなさい』
──負けるわけないじゃない。
自信に溢れていた。
敵は強ければ、強いほど倒すための活力が湧いてくる。
燃え上がる闘志を抑え、いよいよ最後の文に目を通す。
──その文面を見た瞬間、頭が沸騰しそうなくらいに冷静さを失った。
『見合いの準備を進めている。モナリーゼ、お前がセントール子爵家の令嬢として、戻ってきたら、すぐに相手を見繕おう』
認めない。
お見合いなんて、私はしない。
私はもう貴族なんかじゃない。
何にも縛られない。
自由で、強くて、誰よりもレオのことを大切に思っている冒険者のモナなの!
手紙を握る手に力が入る。
まだ続きがある。
読みたくはない。
この続きなんて、どうせ私にとっては、苦悩の種になるよな内容なのだろう。
けれども、一応は読んでおかなければならない。
だから、私は視線をその場所に再度向けた。
『……だが、もしもお前が冒険者を続けたいというのであれば、今回私が出した課題もきっと乗り越えることだろう。クラッシュ王国武術大会は3部門ある。お前1人で出場しても良いし、信頼する仲間と出場してもよい。……お前の成長を確かめられることを期待している』
最後の最後に、こんなこと書いちゃって。
本当にお父様は……。
『私の娘なら、答えは分かるな?』
──当たり前でしょ。馬鹿にしないで。
私はそっと手紙を折り畳む。
恐れることはない。
私はいつだって、目の前に現れた厄介な問題とぶつかって、打ち破ってきた。
──お見合いなんてくだらない。
私の人生を左右できるのは、私だけ。
他の誰でもない。
道は作ってもらうものではない。自分自身で切り開くものだから。
「大丈夫?」
アイリスが心配そうな顔でこちらを見てくる。
そんな顔されても、困るわ。
私は、落ち込んだりなんてしていない。
だからこそ、堂々とこの挑戦を受けてやろうじゃないの!
「……3日後に開催される。クラッシュ王国武術大会に参加するわ!」
お父様の出してきた条件。
厳しいものであることくらい、ちゃんと分かっている。それでも、私は逃げない。
それが【エクスポーション】のモナであることへの誇りを守ることに繋がるものだから──。
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