【075話】不敗への挑戦
クラッシュ王国武術大会。
国内にいる15歳以上であれば、誰でも参加することができる武術の大会。
多くは、貴族や騎士、腕に自信のある冒険者などがこぞって参加する大規模なイベント。
──それに参加するなんて言い出すとは、絶対によからぬことが書いてあったに違いない。
「モナ、その手紙。なんて書かれてた?」
モナは、俺の問いかけに躊躇うことなく答える。
「武術大会で優勝したら、冒険者としての生活を続けていいと書かれていたわ! だから、クラッシュ王国武術大会に参加して、優勝するの!」
マジか……。
俺は、頭を抱える。
他のメンバーも同じく、苦い顔をした。
「ちょっと、そんなに深刻そうな顔することじゃないでしょ? Sランク冒険者の私がそう簡単に負けるはずないじゃない」
──モナの言っていることは正しい。
生半可な実力者であれば、モナが苦戦することはないだろう。
しかし、優勝という条件付き。
モナがその武術大会で優勝できるかどうかは別問題である。
重要なことを失念しているモナに、アレンは厳しい事実を告げる。
「モナ……その武術大会は、クラッシュ王国において、最大規模のものだ。当然、国内最強の実力者も参加する」
「国内最強?」
「うん。例えば……【神々の楽園】や【シリウス旅団】という古参のSランクパーティとかね」
そうなのだ。
アレンの言う通り、大規模Sランクパーティのメンバーが大勢参加してくる。
武術大会の部門は3つ。
個人戦。
タッグ戦。
チーム戦。
この3つを己のパーティ一色に染めようとしてくるはずだ。
「そんなの、全部倒しちゃえばいいじゃないの」
「んなぁ、簡単な話じゃねぇんだよなぁ……」
普段であれば、軽い答えを返してきそうなヴィランも苦言を呈す。
俺たち【エクスポーション】は国内に3つしかないSランクパーティであるものの、経歴は浅い。
経験、実力、規模、その他多くの部分において、俺たちは他2つのSランクパーティに劣っている。
──少人数だから、チーム戦は無理だな。
チーム戦は3人以上20人以下での条件下で参加が可能。
大規模Sランクパーティであれば、確実に上限人数まで使ってくるので、5人しかいない俺たちでは、他勢に無勢。
──個人戦も、不安定だったか?
個人戦は1人での参加。
そのため、参加条件のハードルが低く、参加者が特に多くなるのだ。
そのため、本戦前に大人数での勝ち残り戦が行われることになっている。
振り分けはランダム。
協力も裏切りもなんでもあり。
とにかく、この戦いに勝ち残れたものが本戦出場を果たすことになっている。
──モナ向きのルールじゃないのは、確かだな。
本戦前の乱戦。
最初の方は誰かと結託して、戦うのが個人戦のセオリーだ。
しかし、モナの性格だと誰とも協力しない。むしろ、全員を挑発して、全ヘイトを買いかねない。
となると、残るのはタッグ戦。
最初から、トーナメント形式のタッグ戦が個人戦よりも安定した戦いが望める。
人数不利を背負うチーム戦。
不確定要素の多い個人戦。
この2つを除外した結果、タッグ戦が最適であると考えられたため、俺は告げる。
「出るなら、タッグ戦がいい」
「私もそう思います……」
アイリスも俺の言葉に頷き、同意する。
もちろん、タッグ戦に出たからといって、絶対的に優勝できる保証なんてない。
Sランクパーティの面々を含め、王国中の猛者が集う。
序盤はいいかもしれないが、勝ち上がれば勝ち上がるほどに厳しい戦いを強いられることだろう。
「タッグ戦なら、この中から1人だけってことよね」
モナは、俺たちを見る。
モナの出場が確定として、残る1枠を誰が埋めるのか。
攻撃特化なら、アレン。
回復安定なら、アイリス。
絡め手重視なら、ヴィラン。
──誰にするか迷うだろうな。
それでも、誰か1人を選ばなければならない。
モナはスッと深呼吸をした。
32000pt到達しました。
ありがとうございます!




