【074話】父親からの手紙
パーティハウス。
セントール子爵邸から、帰宅した俺とモナは、パーティハウスに残った3人から熱烈な励ましを受けた。
俺の表情が疲れ切ったものだったからだろう。
「2人ともお疲れ様。大丈夫、なんとかなるよ!」
「モナちゃん、私たちはずっとモナちゃんと一緒にいるからね」
「んな、しけた面してんなって! 夜逃げの準備くらい済ませたっての!」
アレン、アイリス、ヴィランの順に声をかけられた。
話し合いが上手くいかず、モナの冒険者としての道が閉ざされたかのような言葉の数々。
勘違いされては困る。
俺は、全身全霊を持ってして、綱渡りのような不安定な環境下で交渉を成立させた。モナの冒険者としての道はまだ閉ざされてなどいない。
──いや、モナが不自然に燃えたような瞳をしているのが見えなかったのか?
挑戦を待つバトルジャンキーみたいなモナ。
帰ってから一言も喋っていないが、それは彼女が先の展開をワクワクしながら心待ちにしているというのが理由である。
モナに関して言えば、断じて落ち込んでいるとか、そういうことはない。
疲労感を覚えているのは、俺だけ。
なんというか、俺だけ負けた気分である。
「レオ、今日は朝までゆっくり飲もう」
アレンが優しく背中に手を添える。
「……いや、飲まんから」
普通にそういう気分じゃない。
失敗していない。
ああ!
事情を聞かないで慰めるようなことは、やめて欲しい。
──なんか、不安になっちゃうから!
▼▼▼
翌日。
パーティハウスに一通の手紙が届いた。
「モナちゃん……」
郵便受けに入れられていたその手紙をアイリスがモナに手渡す。
5人が全員揃っているこの場でモナはその手紙の封を切る。
『モナリーゼ・セントール宛。
グロウ・セントールより』
案の定、手紙はセントール子爵家から出されたものであった。
──というか、グロウって、モナの父親の名前か。
あの厳しそうな顔にピッタリな名前だなと頭の片隅で考えたのは秘密だ。
モナが最初に手紙の内容に目を通す。
表情に変化はない。
視線の動き。
俺たちは、黙ってモナが手紙を読み終えるのをひたすらに待つ。
モナは手紙を読み終えると、そっとその手紙を畳み机の上に置いた。
沈黙。
モナは、何か考えているのか喋ろうとしない。
手紙に何が書いてあったのか、俺たちは知りたくてたまらなかった。
「ふぅ……」
「大丈夫?」
モナの不自然な様子に心配そうな顔をしたアイリスはたまらず、声をかける。
モナは、すっと顔を上げ真剣な顔で告げる。
「……3日後に開催される。クラッシュ王国武術大会に参加するわ!」
「「「「はい?」」」」
モナの突然過ぎる宣言に、俺たちは戸惑いを隠しきれなかった。
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