【071話】ちぐはぐな関係を垣間見て
部屋から飛び出したモナは、屋敷の中庭にいた。
落ち込んでいる様子はない。
だか、平常心であるかのように静かだ。
庭に咲く無数の花を眺めるその姿は、奥ゆかしい貴族令嬢そのもの。
──やっと見つけた。
「モナ!」
すぐに駆け寄る。
モナは、俺の声を聞くと、すぐにこちらに振り向いた。
「あっ、レオ……悪かったわね。恥ずかしいところ見せちゃって」
「いや、そんなこと思ってないし」
例の喧嘩のことだろう。
売り言葉に買い言葉。
頭に血が上っていたことは間違いない。
けれども、素直な気持ちをぶつけ合っていた親子の喧嘩を恥ずかしいものだなんて思ったりはしない。
むしろ、自分の意見を堂々と言えていたのは、格好いいものですらあった。
「幼い時から、お父様とは喧嘩ばかり。仕事ばかりしているお父様のくせに、私が何かやりたがったら、すぐにダメダメって……今回だってそう。話もまともに聞いてくれない」
──親子同士での悩みか。
あまり首を突っ込まない方がいいのかもしれない。
「でもね。ちゃんと話し合えば、分かってくれると思ったの。……だから今日は、来たくもなかったここにも足を運んだ」
──でも、喧嘩しちゃったと。
「モナが悪いわけじゃないと思うよ。きっとモナのお父さんもモナのことを心配してたから、あんな風になっちゃったんじゃないか?」
「そうなのかしら?」
「……まあ、これは俺の勝手な憶測に過ぎないけど」
──いや、憶測ではあるが、確実に近い気がしている。
モナの父親は、娘であるモナのことを真剣に案じている。でなければ、俺に対してあんな言葉を投げかけるはずがない。
好きの反対は無関心。
今回、モナは父親とぶつかった。
であれば、少なくとも家族の繋がりが修復できないということはないはずなのである。
──けれど、普通に話し合いをしたならば、また言い争いになる感じがする。
互いに素直になれていないというのが俺個人の見解だ。
──誰かが間に入ってくれれば、なんとかなりそうな気がする。
ならば、適任は多分あの人。
「モナ、もう一回だけ話し合いに行こう!」
モナに対して、そう言うが、モナの反応は芳しくない。
「無理よ」
「どうして?」
「話し合いの余地なんてなかったじゃないの」
──それは2人が冷静さを欠いていたからだと思う。
「顔を合わせたら、感情が爆発した。……俺にはそういう風に見えた。だから、誰かに頼んでモナの意思を間接的に伝えてもらうという手法なら、さっきよりもいい話し合いになると思うんだけど」
モナは顎に手を当てて考え込む。
迷うよな。
それでも、話を通さなければならない。
今後の【エクスポーション】がどう変わっていくのか。その分岐点であるのだから。
モナに策がないのであれば、俺の提案を受け入れてほしい。
話はまとめられる。
その過程が少しだけ予定と違うだけであって、結果はきっといい方向に動かせる。
本日1本目っ!




