【070話】さっきと印象が違う
モナの父親に呼び止められた。
──うぅ、緊張で吐きそう。
「お前は、モナの冒険者仲間か何かか?」
ずばり聞いてくるモナの父親。
いやいや、なんでそんなこと聞いてくるんだ?
恐る恐る俺は、口を開く。
「そうです。モナには、いつもお世話になっています」
「そうか」
──あれ?
意外と反応が薄い。
さっきの勢いを目の当たりにしていたから、もっと色々と言われるかと思っていた。
モナへの対応と俺への対応は別物である。
「モナリーゼは、どうだ?」
「どうだ、とは?」
「冒険者として、うまくやれているのか?」
普通にモナのことを心配しているような顔であった。
ちゃんとした父親の顔。
モナを屋敷から追い出したとは思えないほどだ。
──そして、何故俺がモナと深い関係にあるだと分かっているんだ?
モナは、話していない。
立場上、俺はモナを連れてきた人物。それ以上でもそれ以下でもないはずだ。
けれども、目の前にいる鋭い視線は、俺がモナと親しい者であると理解しているものだ。
「どうして、そんなことを聞くんですか?」
俺の疑問を正確に理解したモナの父親は、目を細めながらも口を開く。
「娘のことは、親である私が最も理解している。モナリーゼの仕草から、お前がモナリーゼと親しいのは一目瞭然だ」
なるほど。
モナの親であることからの確信。
──多分だが、モナとこの人の間には、大きな誤解がある気がする。
モナの父親の態度を見て、そんなことを考えてしまった。
これほどまでにモナのことをしっかりと考え、観察している。そんな父親がモナに対して理不尽な仕打ちをしたとは思えなかった。
「……モナは、立派に冒険者をやれていますよ。もう一人前です」
──本当にそうだ。
モナのことをまだまだ未熟な冒険者だとするならば、このセントール子爵領内にいるほぼ全ての冒険者が未熟者ということになる。
それくらい、モナは強く立派に冒険者をやれている。
しかし、モナの父親は懐疑的な視線である。
「本当なのか? あのモナリーゼが冒険者として、やっていけているなど、信じられないが……」
「本当ですよ」
「そうか。……しかし、あの性格。昔っから少しも変わっていない。そう見えるのは、気のせいだったのか」
──……ん〜、そっちは気のせいではないと思う。
現に出会った頃から一貫して、モナは過激な面が多い。
一度彼女を怒らせたら手がつけられないくらいに大暴れするし、口論になった時も、圧力がものすごい。
そして、素直になれないけども、確かな優しさがあるところも、以前から変わっていない。
「モナの本質は以前のままかもしれません。けれども、成長したというのも、また事実かと」
「そういうものなのか」
感慨深いのか、天を仰ぐ。
俺から話すことはこれくらいでいいだろう。
長々と会話を続けるつもりはない。
そう判断し、俺は再び扉のドアノブに手をかける。
呼び止める声はない。
そのまま扉を開き、部屋から退出する。
「おい……」
──ん?
扉が閉まる直前に、モナの父親から一言だけ告げられた。
「モナとこれからも仲良くしてやってくれ」
……そう聞こえた直後に扉は閉まる。
言われなくても、そのつもりだ。
心の中でそう返事を返した。
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