【060話】伝える覚悟
「なるほどなぁ……」
モナのことをヴィランに相談すると、ヴィランは真剣に悩んでくれた。
眉を寄せ、腕を組むヴィランは、さまざまな可能性を模索しているようだ。
それでも、しばらくするとヴィランはカッと目を開く。
「これは、モナに伝えたほうがいいと思うぞ」
「モナに?」
一通りの可能性を吟味し、ヴィランはそんな結論を告げた。
──モナに、伝えるのか?
この話を?
ヴィランはそう言うが、俺は決心がつかなかった。
思い出したくない過去を思い出させてしまうかもしれない。
モナを傷つけてしまうかもしれない。
そんなまだ見ぬ不安な未来を想像してしまうと、簡単に頷くことはできない。
「不安か?」
「ああ、モナの反応が心配だ……」
「お前は優しいからなぁ……」
──また言われた。
優しいなんて、そんなことはない。
ただ俺が嫌な気分になるから、教えたくないというだけだ。
仲間が辛そうにしているのを見たくない。
そういう考えだから、つい保守的な考え方をしてしまう。
パーティの盾役であるから、前に出過ぎないという考えが染み付いているのだろうか。
「臆病なだけだよ」
俺はそう言う。
その一言は、本当にしっくりくる。
臆病で誰も失いたくない男。
──それが俺だ。
「臆病? レオがか? ガハハッ、そりゃ傑作だ!」
「おい」
──今のは爆笑するような場面じゃないだろうが。
なんでもかんでも面白そうに……。
ヴィランは危機感が欠如している。
「モナの一大事だぞ。真面目に考えてくれ」
「いやいや、俺はいつだって真剣だ。……モナにはやっぱりこのことを話せ。大丈夫、モナはそんなに弱いやつじゃない!」
知っている。
モナがどれだけ強い女の子なのかを俺はちゃんと理解している。
だから、これは俺の問題だ。
「モナは、どんな反応をするんだろうな」
溢れ出た言葉。
しかし、ヴィランはそれをしっかりと聞いていた。
「んなもん。くだらないってズバッと言うに決まってんだろ! なんたって、あのモナだからな!」
あっけらかんとした表情でヴィランは笑う。
よく落ち着いている。
俺とは違って……。
やはりヴィランの余裕というのを見習うべきかもしれない。
ヴィランに相談したことで、俺もやっと決心がついた。
「そうだな。……モナに話すか」
「それがいい。レオに抱えられるような問題じゃぁねぇもんな!」
「失礼なっ!」
ヴィランは馬鹿笑いをしながら、酒を飲む。
「おい」
「んあっ?」
「……俺にも一杯頼む」
「……おうよ」
その日はヴィランと酒を飲み交わした。
やけ酒みたいな勿体無い飲み方ではなく、しっかりと酒の味が舌に染み込むようによく味わって……。
もうちょっとだけ夢を見ていたい!
30000ptまであと3000ptを切りました。
もう少しで届きそう……でも、あとちょっと届きません!
まだまだ頑張りたいっ!
ぜひ、応援よろしくお願いします!




