【054話】永遠に続いて欲しい時間
「ただいま」
「帰ったわよ」
パーティハウスに帰宅すると、既にアレンとアイリスの姿があった。
「2人ともおかえり!」
「おかえりなさい」
2人は俺とモナの帰宅に出迎えの挨拶をする。
そして、部屋着に着替えている。
──俺たちは、そんなに戻るの遅かったのか?
……結論から言うと、めちゃくちゃ遅かった。
▼▼▼
『あっ、帰りにあそこ寄っていかない?』
『ああ、いいぞ』
モナのお願いを素直に受け入れ、俺たちは帰り際、近くにあった喫茶店に立ち寄った。
『ここのケーキは中々美味しいわ!』
『紅茶も香りがいいな!』
そこで30分程度時間を使う。
『レオ、次はあそこの屋台で串焼きを食べましょ!』
『ええ、でも結構並んでるんだけど……』
『大丈夫よ。すぐに買えるわ!』
『そういうことなら──』
串焼きを買うまでに15分、食べるのに10分を要した。
もっとすぐに食べ切れるようなものかと思いきや、かなり大きめの本格的なものであり、中々食べ切るのに時間がかかったのだ。
『美味しかったわね!』
『ああ、まあね』
『あっ、ねぇねぇレオ!』
『今度は何?』
『次はあっちに行ってみましょう!』
──モナの興味の矛先は次々と周囲にあるものへ移り変わっていったのだった。
▼▼▼
「2人とも随分、遅かったね」
爽やかにアレンはそう聞いてくる。
確かに、俺もそう感じている。
まさか、帰宅するのが、アレンとアイリスの修羅場を見てから約4時間後となるなんて、想像もしていなかった。
──モナがどうしても行きたいって言うから、断りきれなかったんだよな。
もう遅くなるから、これくらいにしようと言えれば良かった。
しかし、モナの喜ぶ顔を見るたびに俺は、少しだけなら……あとちょっとなら、と帰宅を先延ばしにしてしまっていた。
「もう、心配したんだよ?」
「別にそんな心配いらないのに」
「モナちゃんったら……」
偉そうにそんなこと言うモナ。
しかしながら、口周りに付着した食べ歩きの残りがあると説得力が薄れるぞ……。
威厳ゼロ。
モナの堂々たる振る舞いにアレンとアイリスは困った顔であったが、すぐに破顔する。
「ははっ、どうやら楽しんできたみたいだね! なら、仕方がないな」
「そうだね! モナちゃんがこんなになるくらい遊んできたんだったら、怒る気も起きない……」
クスクスと笑う2人。
和やかな空気が流れていった。
アレンとアイリスの様子を意味が分からないというような顔で見ていたモナ。
これには、流石の俺も笑いを堪えきれない。
「ははっ!」
「ちょっと、なんでレオまで笑うのよ!」
「いや、ごめんって……ふっ」
「もう!」
事情が分からず、地団駄を踏むモナ。
それがまた可愛らしくて、思わず笑みが溢れてしまう。
結果、笑いの渦は収まらない。
「本当にどうしてみんな笑っているのよ!」
この笑いの嵐が終わりを迎えたのは、俺がモナの口もとに付いていた食べかすを拭き取ってあげたことによってであった。
おかしな話である。
けれども、俺はこんなくだらないやりとりをしている時間が好きだ。
仲間と笑い合えるこの空間が、
俺の生涯でもきっとかけがえのないものになるのだろう。
「モナ」
「……なによ」
「また、行こうな!」
「──っ!」
──こんな時間が永遠に続けばいいのに。
思わずそう願ってしまう。
いつかは終わりを迎えるこの幸せな空間をまだまだ堪能していたい。
だからこそ、今という限られた時間を俺たち人間は大切にするのだろう。
▼▼▼
……そして、今回ヴィランと顔を合わせることはなかった。
理由は簡単だ。
彼が二日酔い……いや、それ以上に酒が回っていたため、ベッドで数日間ぐーたらしていたからである。
まったく、酒に溺れ過ぎだ。
──ついでにヴィランはこのあと1週間禁酒命令をアイリスに告げられるのだが、これはまた別の話になるな。
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そして、これにて4章完結となります。
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