【051話】最初の勇者(アレン視点)
『これから、どうしようか……』
【レスト】を抜けた。
しかしながら、その後の予定なんてものは当然立てていない。
手元に資金もあまりない。
無策のままに飛び出して、僕は、孤独に薄暗い狭い道へ座り込んでいた。
何もない。
全てを失った。
噂に踊らされた愚か者。
僕は何者なんだ?
今までやってきたことは何だったんだ?
──自身の存在価値を疑った。
『はぁ……』
重く苦しみを含んだため息が自然と漏れる。
この裏路地の薄暗さと同じように俺の心にも深く真っ黒な感情が溢れていた。
そんな時であった。
転機は突然訪れる。
『よお、色男。悩み事か?』
『──っ!』
僕の人生が変わる瞬間──。
ヴィランとの出会いは、まさに運命的なものであった。
酒瓶片手に自信過剰そうに笑うヴィラン。
なんだこいつ、というのが初対面の印象。
『……僕に構わないでくれませんか? 今は、誰とも話したくない気分なので』
『ははっ! そんな寂しいこと言うんじゃねぇよ。なぁ、俺で良かったら話くらい聞くぞ?』
『いえ、ですから』
『赤の他人だから、話せることもあるってもんだろ?』
ヴィランは今と変わらず、無鉄砲な物言いで、遠慮なんてものはなかった。
──変わった人だ。
一応僕は、冒険者としてそれなりに有名であるという自負があった。もちろん、悪い意味でも有名であると……。
しかし、目の前の男は、特にそれらのことを気にしている様子がない。
知らないのか。
それとも、興味がないのか。
どちらにせよ、僕にフレンドリーな接し方をしてくる時点で、普通の人ではないことは確かだった。
『……こんな路地裏で座り込んで、居場所がねぇのか?』
『そんなところ、ですかね……居場所も、存在意義も、何もない』
『そうか』
──自分には何もないと告げたことが、きっと彼の気を引いたのだろう。
『ならば、お前は今日から俺が預かってやる!』
『えっ……⁉︎』
理解が及ばなかった。
しかしながら、ヴィランは強引に僕の手を引き、パーティハウスに招き入れた。
誰もいない。
僕とヴィランの2人だけ。
『これから、仲間を集めてSランクパーティになる予定だ! ガンガン活動していくから、しっかりついて来い!』
無計画過ぎる……と、この時は半笑いするしかなかった。
僕なんかを入れてもメリットがない。
有能な冒険者であれば、悪い噂の渦中にいるような人物がパーティに所属していると知った瞬間に断り文句を告げるに決まっている。
そんな風に考えていた僕だったが、まさか本当に有能な仲間を短期間で掻き集め、Sランクパーティに成り上がっていくなんてことを想像できなかった。
──当たり前だ。
──そんな急速な成長ができたのは、僕たち【エクスポーション】以外に前例がなかったのだから。
25000ptまであと少し!
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本日、3本目の投稿は夜になります。
時間は未定です。
出来上がり次第出していきたいと思います!




