【047話】聖女は決して隣を譲らない!
そこからの展開は想像を絶するものであった。
「……アレンを……返しなさい!」
激昂するスカーレットと、
「アレンさんは、貴女の物じゃない。もう、アレンさんに関わらないでください」
空気を凍りつかせるようなアイリス。
炎と氷がぶつかり合うようだ。
感情の起伏は全くの別物であるが、アレンを手放すまいと2人とも必死である。
「アレンは、私に告白してくるくらい、私のことが好きなの! 後から出てきた見知らぬ女がでしゃばらないでよ!」
「私なんて、アレンさんに高価な魔法書をプレゼントしてもらいました。それから、過去にアレンさんを振ったと聞きました。今更、言い寄ったところでもう遅いと思います」
「黙ってよ! 部外者は引っ込んでで!」
「アレンさんは、私のパーティメンバーです。部外者というのであれば、貴女の方では?」
──うわぁ、バチバチにやりあってる。
俺では、きっと体験することすらできない無縁な争い。
アレンの人柄とビジュアルの良さだからこそ、争われるような事態になってあるのだろう。
……あれ、なんか自分で言ってて虚しくなってきた。
「……モテモテだな」
「あの状況を見て、よくそんなこと言えるわね。ちょっと引くわ」
冷静なモナに指摘される。
「いや、それな」
「レオが言ったことよ?」
本当にその通り。
茶番劇ではなく、修羅場というやつなのだ。
冷やかしている暇ではなかった。
言い争いは、苛烈さを増しているが、均衡しているように見える現状。
そろそろ、俺たちの出番かなと思い、モナに耳打ちする。
「2人のところに行くか?」
「……行くわけないでしょ。空気を読みなさい」
──拒否された。
「……あれはきっと、私たちが介入しちゃいけない問題だわ。大人しくここで見守りましょう」
モナの言葉に俺は頷いた。
確かに変に場を掻き乱したところで、良い方向に物事が転ぶとは考えにくい。
むしろ拗れてしまうことだってある。
「手を貸すだけが、仲間じゃないってことか」
「そういうこと。時には、試練を乗り越えさせる。そうやって、私たちは成長してきたんだから……今回だってそう」
「分かったよ」
この場を収めるには、きっとアイリスだけでは無理なのだろう。
アレンがどう動き、どうスカーレットと向き合うのか。
きっとその選択によって、色々変わってくる。
言い争うアイリスとスカーレット。
終始、困ったような反応であったアレンも、アイリスの頑張りに呼応されたのか、強く拳を握り締める。
アレンは、決意を固めた表情になるのだった──。
本日4本目の投稿でした。
なんとか間に合った……!
また明日からもよろしくお願いします。




