【044話】楽しいけど、なんか忘れてない? これって、お出かけじゃない?
なんだろう。
妙だな……。
俺たちは、アレンとアイリスを尾行していたはずだ。
幼馴染スカーレットとアレンが出会ったとしても大丈夫なようにアイリスが付き人として、アレンの行先についていく。
俺とモナは、2人が安全に1日を過ごせるのかどうかを温かい目で見守っていこうというコンセプトのもとで動いていた。
そのはずだった──。
「うん、これは中々に絶品ね!」
「そうだな。……って、そうじゃない!」
「何興奮してるのよ。冷めるわよ?」
モナと俺の間には明確な温度差があった。
目の前には、美味しそうな肉料理。
見ての通り、俺とモナは昼食の真っ最中である。
いやいやいや、ちょっと待てと。
こんな優雅にランチタイムを楽しんでいる場合なのか?
モナが楽しそうに食事をしていたから、流されて俺も肉料理を口に運んでいたが……。
──これじゃあ、まるで、俺とモナが楽しくお出かけしているみたいじゃないか!
「アレンとアイリスを見守るってやつは⁉︎」
「ん? ……ああ、そんなことしてたわね」
しれっとモナはそんなことを言う。
おいおい、ちょっと自分勝手が過ぎるんじゃありませんかね?
まあ、楽しそうならいいんですけどね。
俺も楽しいし。
……。
…………。
………………。
あれれ?
無意識のうちに懐柔されたっぽい?
己の気持ちとの葛藤をしているが、俺たちは既にアレンとアイリスの姿を見失っている。
つまり、事実として、俺とモナがただ出かけているということになっていた。
──それに、黒ローブも暑すぎて脱ぐ羽目になったし。
現在は通常の私服を着ている。
あの黒ローブは、なんのために着ていたのだろうと思うくらいに今はとても快適だ。
「2人の観察は終わりか?」
俺が尋ねると、モナは唸る。
「終わり……でも、いいのよね……」
「その割に迷ったような顔をしてるんだな」
「うるさい……」
モナは、食事の手を止めた。
そして、俺を見つめる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……もし、私が2人を追いかけるとか、言わなくても、レオは私と外出したりしてくれてた?」
……これは、どう答えるのが正解なのだろうか?
モナの言う外出というのは、魔物の討伐や仕事関係での外出とは違う。
おそらくだが、プライベートで遊ぶ目的でのことだろう。
そして、俺の考えは「もちろん、構わない」である。
モナは、恥ずかしそうに視線を合わせてくれない。
どんな回答が返ってくるのか、不安そうな色も見える。
──まあ、素直に言っちゃってもいいよな。
「モナとなら、お出かけ大歓迎だよ」
「──っ! ……そ、そう。大歓迎なのね」
──なんでそんなに嬉しそうなんだよ。
モナの反応は、本当に喜びを噛み締めているようなものであった。
俺と出かけるのがそんなに楽しかったのか?
いや、俺も実際こうして食事しているだけでも楽しいと感じる。
しかし、それは親しい仲間と共に外出することがいいのであって、今に始まったことではない。
モナは違う。
最近のモナは変わった。
なんというか、俺への接し方が以前よりも柔らかくなった印象である。
元から彼女は優しかった。
しかし、最近はそれが顕著に見え隠れするようになっている。
──悪いことじゃないんだけど。
やっぱりモヤモヤする。
何か自分が大事なことを見落としているような気がして……。
『モナのこと。……仲間のことをちゃんと観察しろ。きっと、お前の知らないことがあるはずだ』
ヴィランの言葉が頭の中に響き渡る。
──俺の知らないこと、か。
モナの方に意識を向けたまま、俺は目の前にある香ばしい香りの肉料理を口に運ぶのであった。
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ですので、本日は4話投稿していきたいと思います!
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