【040話】アイリスは守りたい!
「それ、私が引き受ける」
ニコニコと笑みを浮かべたアイリス。
俺がモナに相談しているところに割り込んできた彼女は、自信満々にそう告げたのだった。
「アイリス⁉︎」
突然の登場にモナは動揺する。
「聞いちゃった」
「もう! 聞き耳立てるなんて、卑怯なことしないでよ!」
「偶然通りかかったら、声が聞こえてきちゃったから……」
「はぁ、最悪……」
普段と違い、アイリスは小悪魔感を漂わせている。
そして、彼女は脇にアレンが買った魔法書を大切そうに抱えていた。
「アレンからプレゼントされたのか?」
「うん。私に合うはずだから、使ってくれって……嬉しかったなぁ」
おそらくアイリスは、アレンに魔法書をもらったことを俺やモナに自慢しようとしたのだろう。
それだけ、喜んでもらえれば、長い時間アレンの魔法書選びに付き合った甲斐がある。
──それで、偶然にもこのタイミングで、アイリスは俺とモナのしていた会話を聞いちゃったってことか。
アイリスは緩んだ顔色をすぐに直して、コホンと咳払いをする。
「さっきの話は本当なんですか?」
俺に向かって、少し強い口調で尋ねてくるアイリス。
「ああ、事実だ」
「そうだったんだ……アレンさん、私に魔法書を渡す時、そんなことがあった素振りを見せなかったのに」
「心配をかけたくないと思ったんだろ。せっかくプレゼントをしたのに、空気が重かったら気不味いだろうし」
──まあ、アレンがそんな気遣いをアイリスにしたところで、後々俺が全部話しちゃうから意味ないんだけどな。
……いや、意味ないわけではないか。
アイリスに喜んでもらえたこと。
これは、アレンが得た最大の成果であるのだろう。
──さて、そんな楽しい時間をもう少しだけ続けさせてやりたいところだったが、聞かれてしまった以上は仕方がない。
「聞いていたんなら、分かるよな?」
「うん。だから、私が適任だと思ったの」
アイリスの意思は固そうである。
反応の悪いモナより、アイリスの方が向いているか?
「アイリスはいいのか? 俺も一応アレンに合わせて行動するつもりではいるが……アレンに付きっきりになる分、大変かもしれないぞ」
「問題ないです。というか、全部私に任せてもらってもいいですよ!」
「そうか」
アイリスの押しが強い。
ならば、アイリスに任せてしまおうかと口を開きかけたその時であった。
「いっつ……」
……理不尽な激痛。
モナが俺の脇腹を物凄い力でつねっていた。
「ちょっと、勝手に納得したような顔しないでくれるかしら?」
「ええ……?」
モナの言いたいことがサッパリ分からない。
しかし、俺の物事を理解できていないという気持ちが表れていたのか、モナは更に不機嫌になる。
「はぁ……」
──そんな、ため息吐かれましても……。
モナは少々考え込むような素振りを見せ、パッと思いついたかのように顔を上げた。
そして、アイリスと俺を交互に見てから、俺の耳にそっと口を近づけてくる。
「ひとまず、アレンの件はアイリスに任せていいと思うわ」
モナはそう告げた直後に和らいだ声音で一言。
「……ただ、このあと少しだけ時間をちょうだい」
まるで2人っきりになりたいかのような言い方。
俺は、無言で頷くしかなかった。
本日3本目でした!
明日もよろしくお願いします!




