【037話】勇者の相棒は、過去の残響を消し去りたい
俺とスカーレットは、互いにアレンを渡すまいと睨み合う。
そして、アレンは俺の後方にいる。
当然だろう。
幼馴染ともう会いたくないという話は、聞いたことがあった。
──あの時の辛そうな顔をしたアレンを俺は忘れたくない。
『もう、スカーレットのことは忘れて、前に進みたいんだ』
お前が踏み出した一歩は無駄ではないぞ。
【エクスポーション】がSランクパーティにまで駆け上がったのはアレンの活躍あってこそ。
それは確かにお前が残した証。
──アレン、お前は、前に進むことはできたんだよ。
だから、過去の亡霊がアレンにチラつくようであれば、今の仲間が助け舟を出してやる。
困っているヤツは見捨てない。
俺たちは、不遇な過去を乗り越えて、ここまで来たのだから。
5人で乗り越えて来たのだから──。
「アレンはこれから大事な用事がある。世間話ならいつでもできるだろ」
「アレンは私のパーティメンバー。貴方にそんなことを言う権利はない!」
「元、だろ? 今は俺たちの大事な仲間だ」
「そんなこと知らない! アレンは、アレンは私が好きで!
私がいないと何もできない! だから、アレンは私の近くにいるべきなの!」
スカーレットはヒステリックな叫びをあげる。
なんなのだろうか。
彼女は少しズレている気がする。
アレンはもう、彼女のパーティを抜けている。
それなのに、未だに仲間であると思い込んでいるようなそんな風に見えた──。
違和感を抱きつつも、俺はアレンをスカーレットから遠ざけるように手を引く。
「とにかく、アレンは忙しい。じゃあな!」
「あっ、待ちなさい!」
俺は走る。
アレンの手を引き、道を引き返す。
パーティハウスに帰ることは考えていない。
ただ、アレンをスカーレットの近くに長くいさせたくなかった。
アレンは、俺に連れられ走りながら呟く。
「レオ……」
「ん?」
「ありがとう。助かったよ……」
今のアレンに似合わず、爽やかさを取り繕うこともない。
自然な感謝の言葉であった。
「俺がやりたくてやったことだ。気にすんな」
……かなり遠回りすることになったが、俺とアレンは無事にパーティハウスに帰り着くことができた。
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