【035話】蘇る過去の苦い記憶
アレンの熱狂的なファンから逃亡してきた俺たち。
逃げ切れたことに安堵したからか、アレンは、魔法書を持ち、優雅に街中を歩いていた。
キラキラオーラが周囲に振り撒かれる。
──せっかく撒いたのに、意味なくないか?
別に、アレンの追っかけが魔法書の売っていた本屋に全員集合していたわけではない。
あれは、ほんの一部だ。
アレンのファンは街中にいる。
それをコイツは自覚しているのだろうか?
アレンの肩を叩き、俺はこそっと耳打ちする。
「……お前、やっぱ目立つぞ」
アレンはポカンとする。
いや、そんな心当たりないですみたいな顔やめろ。
爽やか系イケメンが無自覚系なんて、笑えない話だ。
「……今日の服装は、変だったかな?」
「違うわ! アレンという輝かしい存在が人目を引くって言ってんだよ」
「ははっ、レオは考え過ぎだよ!」
「はぁ〜」
この気持ちが通じないもどかしさ。
アレンはもっと自分の置かれている立場を自覚すべきだ。
もっとも、アレンは今、手に持つ魔法書をアイリスにプレゼントすることしか考えていないみたいだが──。
いいヤツゆえの困りごと。
俺がそんなアレンと共にパーティハウスに向かっていると、アレンがふと立ち止まる。
「ん?」
「──っ」
「おい、どうした⁉︎」
アレンの顔色が悪い。
本当に真っ青だ。
先程までは、俺と問題なく会話していたとは思えないほど。
アレンの視線は小刻みに揺れ、瞳の鮮やかさは失われていた。
──なんだ?
胸騒ぎがする。
アレンにとってよくないことが。
周囲を観察する。
人混み。
……アレンはその人混みの中に視線を向けていた。
嫌な予感が脳裏に浮かぶ。
「……なあ、アレン。やっぱり向こうの道から帰ろう」
俺はアレンの手を強引に引いた。
アレンをこのまま進ませてはいけないと警笛が鳴ったから。
しかし、俺がこの判断を下した時にはもう手遅れであった。
「……ア、レン?」
女性の声。
アレンに飛び付かんとする狂信的なものではない。
驚きと戸惑いの混じった声。
──最悪だ。
赤毛の若い女性が、アレンのことをじっと見つめていた。
そして、俺はこの女性のことを知っている。
アレンに聞いたことがあったから──。
「スカー、レット……」
アレンが女性を苦手に感じてしまうようになった原因。
アレンの幼馴染であり、元パーティメンバーであった想い人。
スカーレットと呼ばれた女性は静かにこちらに歩み寄ってきた。
──アレン……。
俺の相棒が望まない3年越しの再会。
アレンの怯えるような顔を見て、俺は、何も言えなかった。
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