【034話】振り返らず、前だけを見ろ
アレンとは、その後1週間程接しているうちにすっかり心を許せる仲になっていた。
我ながら、単純なものだと思う。
けれども、悪いことではない。
俺たちは互いに自分の過去を話した。
誰かにその時の辛い気持ちを吐き出せた。
それがきっと、俺たちにとっては、心を軽くするきっかけになったのかもしれない。
『俺は、守ることしかできないやつだから、元パーティメンバーから煙たがられて、追い出された』
『そうか。レオも辛かったんだね』
『いや、アレンの根も葉もない噂を流されたなんてことに比べたらまだマシな方だ』
俺はパーティから追放された経緯や詳細について話した。
恨みつらみを口に出す。
アレンは俺の話を真剣に聴いてくれた。
まるで自分がその立場に立ったかのように悔しい表情もしていた。
顔に似合わず、情に熱いヤツだと感じた。
──本当に、なんでこんなに良いやつが追い詰められなきゃならなかったんだろうな?
不思議でならない。
アレンは元冒険者仲間と険悪な感じではなかったようだ。
むしろ、仲は良好であったとすら思えるほど。
ただ一つ。
噂が蔓延しただけのことだ。
女性関係で見境がないなんて話。
証拠なんてものは微塵も存在しない。
それでも、噂が大きくなっていくと信じる者たちは増え、
……そして、アレンの平穏だったその立場は崩壊したのだ。
『僕のなんて、くだらない話さ。レオに比べたらね……』
アレンは笑い話のように語る。
しかし、彼の瞳が全く笑っていないことを俺は感じていた。
辛い過去。
決して消えない心の傷。
それは、きっと幸せになる以外に紛らわすことはできない。
だから、
『まあ、過ぎたことなんて気にしても仕方ない。前向いてこうぜ!』
あえて、明るく振る舞う。
これからの未来。
俺たちの進む先に光が満ちた世界があると願って──。
『そうだね。レオとはいい関係になれそうだよ!』
『当たり前だ。なんたって俺とお前は──』
『相棒、だよね?』
『その通り。分かってきたみたいだな!』
並び立つ親友のような存在。
それは、俺にとってアレンが初めてであった。
……こうして、俺とアレンは相棒としての華やかな活躍を今後していくことになるのだが、
それは、【エクスポーション】のメンバーが出揃ってから本格的に始動することである。
皆様のおかげで月間10位に入り、15000ptを達成致しました。こんなに上がれたのは初めてです。ありがとうございます!
本日も3本投稿するので、よろしくお願いします。
ブックマークと評価を下さると励みになります!




