【033話】前衛の最強コンビ邂逅
『おい、名前……聞いてもいいか?』
少し、過去の話をしよう。
俺がアレンと初めて接した時の話。
アレンと喋ったのは、俺がヴィランに誘われ、当時Fランクパーティ【エクスポーション】に加入してから、1日過ぎた頃だった。
初対面での印象は、俺よりも絶望感が漂ってくるような残念系なイケメン。
濁り切った瞳は、ひたすらに地面を見つめ、無気力さを感じさせる。
俺の声に反応したアレンは、軽く頭を上げるとボソリと一言。
『アレン……』
──それだけかよ。
長く喋るでもなく、名前だけを端的に告げてくるアレンを俺は、冷めた目で見ていた。
それと同時に不安も感じた。
こんなやつらと共にパーティを組んじまって大丈夫なのか、と。
能天気なヴィラン。
無気力なアレン。
そして、呆気なくCランクパーティ【聖剣の集い】から追放された俺。
ポンコツ三銃士なんて不名誉なことを言われないか心配なくらいである。
『……お前は、どうしてここにいるんだ?』
アレンに問う。
なんとなくだが、コイツも俺と同じでヴィランに拾われた類の人間であると感じたからだ。
拾われたということは、訳あり。
それも、アレンの場合は相当酷い環境で過ごしてきたのかもしれないと感じた。
『僕は……そうだな。冤罪……みたいなものだよ』
『冤罪?』
物騒だと感じた。
つまり、目の前にいる金髪イケメンは罪人としての人生を歩んできたのかと、一瞬ビックリしたが、もちろんそういうことではなかった。
『僕は、ここに来る前も冒険者だったんだ。けど、仲間内で揉めて、俺が悪いってことになった』
『追い出されたのか?』
『いや、居づらくなって、自分から辞めたんだよ……情けないことにね』
『そうか……』
パーティ内のトラブルの原因として、排除された。
それがアレンが【エクスポーション】に加入することになった理由であった。
なんとも理不尽な話だ。
しかし、この世の理不尽を呪ったところで、虚しいだけのこと。
不満を解消してくれるのは、己がその理不尽に打ち勝つことのみなのだ。
──コイツの味わった悔しさ。
俺にもよく分かる。
……話も聞いてもらえず、誰1人として味方してくれるような存在も現れず。
孤独に落ち。
全てを失う。
『なぁ……アレン』
だからこそ、俺はアレンに手を差し伸べた。
アレンが情けないからではない。
同情でもない。
……ただ、コイツと一緒に高みを目指して、俺たちを裏切った者たちを見返してやりたいと心の底から思ったから。
『俺はレオだ。【エクスポーション】の新メンバーにして、お前の相棒になる男だ』
『相棒……?』
『ああ、俺たちは歳だって近い。仲良くしたいって思ったからさ』
手は伸ばしたまま。
俺はアレンがその手を掴むのを待った。
視線はアレンの瞳に向ける。
決して逸らしたりはしない。
『俺も、パーティから追い出されたんだ。だから、お前の辛さ、よく分かるよ。だからさ、俺たち、いいコンビになれると思うんだ』
──これは、俺の本心だ。
同じ苦しみを超えてきた者同士、お互いを支え合えると俺は思っている。
なにより、同じパーティで今後も活動していくのであれば、仲良くなるに越したことはない。
俺の手をアレンがとる。
『……そういうことなら』
雰囲気に流された感は否めない。
落ち込んでいる相手に付け込んだと言われるようなことかもしれない。
けれども、俺は目の前のアレンと一緒に頂点を目指そうという気になっていた。
無茶で無謀。
ほぼ不可能なこと。
それくらいは、俺でも理解している。
そして、同時に不可能でないことも……。
『アレン、これからよろしくな!』
『ああ、レオ……いや、相棒』
出会って2日。
俺は、アレンと打ち解けることができた。
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