【031話】勇者は中々選べない
「見てよ。もしかして、アレン様じゃない?」
「本当だ! ……その横に、レオ様も⁉︎」
「私、握手してもらおうかな?」
「抜け駆けはずるい! 私はサインを書いてもらうわ!」
──はぁ、やっぱりな。
周囲を無数の女性に囲まれている。
彼女たちの目当ては勿論、アレンだ。
……そして、ついでに巻き込まれた俺。だいたいこんな人の少ない本屋にアレンが居座ってたら、目立ちまくるに決まっているだろ。
俺たちがいるのは、裏通りにある本屋であった。
というのも、アレンはアイリスに相性のいい本を探していたのだが、中々お気に召すものが見つからなかったらしい。
隅にあるものから、片っ端に目を通しては違うと首を振り、それを延々と繰り返す。
──時間がかかり過ぎたな。
本屋の前を通りすがった人が偶然アレンのことを発見し、その噂が付近に伝わった。
少数の野次馬。
しかし、その少人数の集まりが更に人を呼び、時間経過ともに俺とアレンは完全に包囲されていたのであった。
「アレン……」
「すまない、レオ。今集中してるから……」
苦手意識を持つ女性が沢山いるというのに、アレンは魔法書の選定に全神経を注ぎ込んでいる。
──お前のこだわり強すぎだろ!
現在進行形でお前にとっての窮地がやってきてんだぞ?
「見てみて、レオ様がアレン様に耳打ちしてるわ!」
「素敵ね。あの2人の組み合わせ……最高よ」
……しかも、周囲の女性から変な視線向けられるし。
「ふむ……おお! この魔法書はかなりいい! アイリスへの贈り物はこれにしようかな。……いや、もしかしたら、隣のも……」
──おいおい、優柔不断か!
アレンの魔法書選定は終わらない。
結局、その後も小1時間程度を費やし、アレンはようやく気に入った魔法書の購入に踏み切るのであった。
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