【029話】絶対に諦めない!(モナ視点)
……どうしよう。
レオとまともに顔を合わせられないわ。
私は焦っていた。
こんなに顔が熱くなることは、今までなかったから。
自分自身の感情を自覚した時、レオの存在がこんなに大きかったのかと、驚いたから。
冒険者ギルドの受付。
私は気晴らしに簡単な依頼を受けに来ていた。
「これを受けるわ」
「はい。ロックバードの討伐ですね」
「ええ、概要の説明をしてくださるかしら?」
「かしこまりました。最初にロックバードの生息地なんですが──」
冒険者ギルドの受付嬢に、依頼の概要説明を受ける。
けれども、その会話内容は頭に入ってこなかった。
意識をそっちに向け続けられなかったから……。
どうして?
気が付けば、レオのことばかり考えてしまう。
ずっと前から、レオのことは好きだった。
だから、今更その気持ちを認知したことで、動揺するなんて思わなかった……。
──だって、昨日のアレは、流石に反則よ。
『俺のことを想ってくれて、ありがとう』
動揺しない方がおかしかった。
あんなことを好きな人から言われて、嬉しくないはずがない。
けれども、まるで恋する無垢な女の子みたいに赤くなっちゃって、
言葉が出てこないくらいに舞い上がっちゃって、
情けなく、足から力が抜けて立てなくなっちゃって……。
──あんなの、私らしくないわよ。
恋なんて、貴族時代以来。
──いいえ、貴族時代のは、きっと本物の恋じゃなかったわね。
家柄を考慮しての婚約。
婚約者のことを好きになろうと努力した。
好きになれたと思っていた。
──でも、
……そんなことはなかった。
本気になっていれば、きっと私の心は、壊れてしまっていたかもしれないもの。
「……モナさん?」
受付嬢の人が私のことを心配そうに見つめてくる。
ああ、ロックバードの説明が終わったのね。
「ごめんなさい。少しぼーっとしてました」
「大丈夫ですか?」
「ええ、平気よ」
そう、問題ない。
ロックバードの討伐に関しては、だけれど……。
「そうですか。……では、いってらっしゃいませ!」
一旦レオのことを考えるのはやめよう。
私からの一方的な想い。
きっとレオは気付いてすらいない。
でなければ、中々会話の続かないあの状況に戸惑ったりしないはずだもの。
本当に鈍い男。
でも、優しくて、生意気な態度だった私に対しても、ちゃんと接してくれた。
「レオ……」
片想い。
初めての経験。
胸が苦しくて、でも気分は自然と高揚する。
その想いをどこかに放出することができれば、きっとスッキリするのかもしれないが、私はまだその時ではないと感じている。
──私の気持ちを伝える前に、レオが私のことをどう思っているのかを知る必要があるわ。
いくら私であっても、レオに拒絶されたりすれば辛い。
これまでであれば、そんなことを考えずに言いたいことを好き放題ぶつけられた。
けれども、今はもうそんなことできない。
慎重になんて、私には似合わない。
周囲からだって、そう思われるでしょう。
けれど、今回だけは例外。
──絶対に振り向かせてみせる。
諦めたりはしない。
……もし【エクスポーション】に入る前の私だったら、こういう恋愛ごとに関して、消極的な動きをしていたのかもしれない。
私は当時の婚約者と婚約破棄していた。
理由は、色々あるが、婚約者の浮気やその浮気相手に対して私が取った対応が良くなかったというのが、1番の理由。
家からも追い出された。
絶望とまではいかなかったが、何もかも上手くいかず、貴族としての肩書きも無為になった。
だから、あの時ヴィランに拾われ、【エクスポーション】に加入したのは、私にとっての好機だった。
信頼できる仲間。
一緒に居てくれる大切な人たち。
最初は、色々と衝突することもあったが、今では、心を通わせられるパーティの仲間たち。
──そして、レオに出会えたことも……。
「よしっ! ここからは狩りに集中よ!」
思い出に浸るのはいつでも出来る。
私は、Sランク冒険者のモナ。
中途半端な仕事は絶対にしない!
【殲滅の悪役令嬢モナ】は今日も槍を振る。
彼女の浮かべる顔は、目の前の魔物に集中していながらも、どこか嬉しそうなものであった。
本日2本目の投稿となります!
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