【027話】初恋のスタンピード
「……モナ。俺のことを思ってくれてありがとう。なんていうか、凄い嬉しかった!」
「──っ!」
途端にモナは顔を真っ赤に染める。
高熱でも出たかと思うくらいに、それはそれは朱に染まる。
「え、ちょっ!」
そのまま、フラフラ倒れそうになるモナをギリギリのところで支える。
……危ない。
もう少しで、床に頭打つところだったぞ。
「え、その……レオ……?」
「大丈夫か? 具合が悪いなら、ベッドまで運ぶぞ」
「ベッ、ベベッ、ベッド⁉︎」
狼狽えるモナ。
足に力が入っていないのにも関わらず、モナはじたばたと暴れ始める。
──急になんなんだ⁉︎
「い、いいわ! 私は大丈夫だから!」
「いや、何をそんな意地になって……辛いなら、俺がなんとかしてやるよ」
仲間として当然だ。
モナは俺のことを考えて、動いてくれた。
であれば、俺だって、モナが弱っているのであれば、良くなるまで付き合ってやるのが道理である。
モナを支える。
暴れて逃げ出そうとしているが、また転びそうになってしまってはいけないから。
「ほら、自力で立ててないじゃないか」
へにゃへにゃになっているモナ。
──急に脱力したのが、不思議であるが、今は休ませてあげるのが先決だろう。
抵抗するモナを俺は強引に背に乗せる。
「きゃっ!」
「……遠慮しなくていいから」
「あ……べ、別に、遠慮とかじゃないわよ」
相変わらず歯切れが悪いが、普段の口調である。
俺の背中に顔をうずめるモナの体温を感じながら、俺はゆっくりと足を進める。
「そうかい。なら、寝室に向かうから大人しくな」
「ええ」
──なんか、視線が痛いのは気のせいか?
他の3人が無言のままこちらの様子を見ている気がするが、今は気にしないでおこう。
寝室にモナを寝かせるために俺は、パーティハウスの階段を上がっていった。
▼▼▼
「あ〜あ、ありゃモナの方は大変だな」
「レオは、特に気付いてなかった感じでしたもんね」
リビングに残された3人は、そんなことを語っていた。
レオとモナの関係性。
2人の話題で3人が盛り上がることは、しばしばあるのだ。
「モナちゃん、凄く照れてましたね」
「レオの言い方がなぁ……ありゃあ勘違いしちまうよ」
アイリスは嬉しそうに笑い。
ヴィランは頭をガシガシかきながら、酒を飲む。
アレンは、レオとモナのことを頭に思い描きながら、遠くを見つめる。
「僕は、2人が羨ましいと感じますよ。……本当にね」
アレンの呟きは消え入るように小さな声であった。
スタンピード後にあったレオの謝罪。
思わぬ形で、【エクスポーション】の物語は進んでいく。
予期せぬスタンピード。
それが引き起こしたことは、国の混乱だけではなかった。
【エクスポーション】の人間関係も少しづつ変化を見せつつある。
この先も、少しずつではあるが、彼らは変わり続けるのだ。
本日ラスト投稿!4本目になりました。
2章はこれにて完結となります。
お付き合い頂きありがとうございます!
三章もよろしくお願いします。




