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【023話】悪役令嬢の気遣い(ヴィラン視点)





『今回のスタンピードに関する件は、レオには言わないで欲しいの!』


『……!?』


 モナからそんな言葉を聞いた時は、流石の俺もビビっちまった。

 レオが熱で寝込んでいる時のことだ。

 俺たち【エクスポーション】のパーティハウスに冒険者ギルドから緊急の手紙が届いた。


『近辺に邪竜が出現したことにより、突発でスタンピードが発生。【エクスポーション】には、高難易度モンスターの対処を頼みたい』



 邪竜。


 それは、人類にとっての厄災みたいなもんだ。

 邪竜が通った場所は廃れ、邪竜の放つ黒い霧によって、付近の魔物が凶暴化、増殖する。


 邪竜の寿命は短い。

 長くて3年。

 短いと1年以内に自然消滅する。


 しかし、仮に1年以内に邪竜が消滅したとしても、その時期に邪竜が周った地域への被害は計り知れない。

 だからこそ、スタンピードの収束と邪竜の討伐は、迅速にかつそれらに打ち勝てる者が行わなければならない。


 そんな大事な任務において、モナの発言は信じ難いものだ。


 ──邪竜が関連している危険度の高いスタンピード。

 レオにこのことを教えないだと?



 ……それは、あり得ないぞ。



『意図が分からんが、どうしてだ?』


『察しなさいよ。鈍感ね』


『おいおい、珍しく真面目に聞いてんだぜぇ、こっちはよ』


 モナに対してこんなに強い言葉で聞き返したのはいつぶりだろうか。

 スタンピード制圧において、レオの参戦は必要不可欠。

 アイツなしでスタンピードを抑え込めるなんてことは考えられない。


 レオは強い。


 特に猛攻を耐え抜くという一点において、右に出る者はいないくらいに強い。

 だからこそ、レオは外せない。

 例えモナがどんな理由を出したとしてもだ。

 そんな心意気の元、俺はモナに強い視線を向ける。


 しかし、モナは、俺の普段と違う調子に少し気押されながらも、真剣な表情を崩さなかった。


『レオは、過去のパーティメンバーと対面したことで傷心中なのよ。それなのに、これ以上心労を与えたくないわ! 風邪だってまだ完治していないのに……レオの精神にこれ以上過度な負担をかけるのは、看過できないの!』


 モナはそう言い切る。


『いや、でもなぁ……』


『……勘違いしないで欲しいんだけど、これはレオにスタンピードということを話さないだけであって、魔物の討伐にレオを参加させないわけじゃないわ』


『……というと?』


 モナは、指を立てて説明を始める。


『スタンピードの制圧。これをレオに勘づかせないまま終わらせる。それだけのことよ』


『そんなの無理だろ』


『馬鹿ね。ただ黙っているだけじゃレオに気付かれちゃうわ。工夫するの』


 モナは自信満々にそう告げる。

 どう工夫するのか、俺にはさっぱりわからねぇが、先ほどまでの話を無言で聞いていたアレンが手を挙げる。


『モナの言いたいことは、スタンピードをスタンピードと思わせないようにする。つまり、単純な討伐任務としてスタンピードを抑えさせるということだね?』


 アレンの冴えた回答にモナは頷く。


『その通りよ。レオに事情は伝えず、スタンピードの制圧を一緒にやってもらう。レオに無理をさせないように、私たちがレオを手助けしながらスタンピードを収束させる。ね? 簡単でしょ?』


『言いたいことは分かったよ。けど、レオにスタンピードがバレないようにする算段はどうするんだい?』


『筋書きとしては、ヴィランがうっかり高難易度の任務を受ける。ギルド長からの誘惑に釣られたとかって言っとけば、レオは多分信じると思うわ』


 おい、さらっと俺がヘイト集める役なのかよ。

 不満はねぇが、なんか俺への印象が毎回ひでぇものなのは、俺の気のせいなのか?


 モヤモヤした感情を抑えつつ、話の続きを聞く。


『そんで? 俺が任務を受けたことを伝えてそのあとはどう話を進めるんだ?』


『いい質問ね。端的に説明すると……そのタイミングで、私がヴィランにブチギレるわ!』




『……は?』


『えっ?』


『ふぇ⁉︎』 



 おいおい、とんでもねぇことを言い出したな、と。

 俺は心の底からそう感じた。


 どうしてそういうことになったのか、意味もわからねぇよ……。




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皆様本当にありがとうございます!

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  邪智暴虐の闇堕ち聖女〜追放された元聖女は理不尽な世界へ復讐するため、悪逆非道な制裁を執行する〜

新作です。
よろしければこちらもご覧ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] モナが健気でカワイイですね。方法は強引ですが。
[一言] 久しぶりに陽キャ寄りの作品が来て幸せ
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