【176話】脳筋攻略がお好み(モナ視点)
【176話】
【アウトローズ】捜索を進める。
私たちは勝手に命名されたチーム『本能』として、チーム『人格者』と離れた場所を散策している。
人気のない人工林の中。
茂みを掻き分け進み続ける。
私を先頭にし、後ろからはアウグストとヴィランが周囲に目を光らせて【アウトローズ】の行方を追っていた。
「いないっすね〜」
見通しの悪い人工林で中々人影は見つからない。
弱音を吐くアウグストにヴィランは小声で笑う。
「根気よくやってりゃあ、きっと見つかるさ!」
「そすか? 小動物すら見つけられないんすけど……」
それは私も思っていた。
虫程度なら、ちらほら見受けられたが、それなりの大きさを持つ気配は本当に感じられない。普通は野生の動物くらい居てもおかしくないはずだ。
「静か過ぎるわ」
「そうかもな」
「待ち伏せされてるとか、あるのかしら?」
懸念点をあげると、アウグストが半笑いで告げた。
「待ち伏せされてたら、モナっちの魔法で焼き払えばいいんすよ。脳筋ばっかで魔法耐性ない奴多そうだし。割と簡単にボコせそ」
酷い偏見ね……でも、ちょっと納得してしまう自分もいる。
肉弾戦より、魔法で攻撃した方が効率が良さそうだ。待ち伏せてたら、真っ先に魔法を打ち込んでやろう。
暫く歩くと、私の服を掴みヴィランが泊まれと合図を送る。
……何?
ヴィランのことだ。
きっと、何かを察したに違いない。
「どうしたの?」
聞けばヴィランは神妙な面持ちで後方に目を遣っていた。
「いや、これ以上踏み込まない方がいいなと思ってな」
「主語がない。ちゃんと説明して」
「この先罠が張り巡らされてる感じがする。それもかなり巧妙に隠されてる……」
なるほど、そういうこと……。
巧妙な罠ということは、待ち伏せとかの単純なものではないということ。
けれども、それ以上の内容は伝わってこない。
「具体的にないんすか? 悪臭垂れ流してくるとか毛虫降ってくるとかさ……」
「アウグスト、アンタのそれは罠ってより……嫌がらせに近いわよ……」
「そすか?」
罠の意味……!
そんな下らない罠でヴィランが反応するわけないじゃない。
この場合、命に関わるくらいに危険なものが仕掛けられていると考えた方がいい。
一歩間違えば、即離脱案件かもしれない。
わざわざ敵の術中に嵌まらなくてもいい気がするけど、どうしようかしら?
ヴィランとアウグストと顔を合わせて二人の意見を聞くことにした。
「で、どうした方がいいと思う?」
ヴィランは少し考えてから、そっと告げた。
「……冗談抜きにして、モナに周辺焼き払って貰うのもアリなんだよなぁ。草木が多い分、罠が隠しやすい状況……それを打破するには、俺やアウグストじゃあ話にならん」
「自慢じゃないすけど、俺たち直接戦闘なら絶対に負けないっすからね。不意を突かれなきゃ、向こうに勝ち目なんてないんすから、その案採用でいいんじゃね?」
二人の意見としては、私の魔法で周囲の罠ごと無力化するという考えのようだ。けど、そこまで広範囲に影響を及ぼす魔法を使うとなると、魔力切れの可能性も高いし、準備まで時間がかかる。
アイリスなら、私以上に効率よくそれらの魔法が使えるかもしれないけど、私のメインは槍での戦闘。
……良い考えだけど、現実的じゃないわね。
「もう少し敷居を低くして欲しいわ。他に何かないの?」
「ならもう、俺とモナっちでゴリ押しで前出てけば、良いんじゃないすか?」
頭の悪そうな発言。
けれども、振り切った答えは嫌いではない。
コソコソと動くのは、性に合わない。いっそのこと、罠をも蹴散らせるくらいに私たちが強ければ問題なんて発生しない。
「その案採用で」
「……だな!」
そう決めてからの私たちチーム『本能』の行動は早かった。
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