【174話】イヴの術中
つい先日は本当に大変な一日であった。
【アウトローズ】なんていう厄介な冒険者パーティと揉めたんだから。
しかも、彼ら……詳しく調べた結果、冒険者ギルドの違反行為どころか、軽犯罪まで犯していたらしい。
無銭飲食や万引き、婦女暴行……とにかく、救いようもない悪党であった。
そして、あの騒動から数日経った今、
「ということで、君たちに【アウトローズ】一斉確保の協力をお願いしたい。彼らの残りがグラス街のどこかに潜伏しているらしいのです」
イヴさんから、とんでもない依頼を出されていた。
いや、待て。
俺たちは冒険者であって、犯罪者を捕まえる衛兵とは違う。
俺たちの専門は人の住むテリトリーの外側に生息する魔物の討伐が主である。例外として、ちょっと前は旧教会都市の調査なんかもアレンが行っていたが、それでも今回のことは納得がいかない。
「えっと、何故俺たちが協力を? それこそ、騎士や衛兵の出番だと思うんですが」
お門違いというものだろう。
しかし、イヴさんは譲る気はないというような態度で前のめりに話し出す。
「実は【アウトローズ】はかなり強者揃いのパーティ。騎士や衛兵だと取り逃してしまう可能性もある。そこで、Sランクパーティと名高い【エクスポーション】に彼らの捕縛に協力して欲しいと申し上げたわけです」
「なるほどなぁ。Sランクパーティと名高い俺たちだからこそ頼りたいというわけか……」
いや、ヴィラン。
『Sランクパーティと名高い』て部分を強調しなくていいから。
単なるヨイショだから、それ。
「その通りです。実力のある貴方たちにしか頼めないお願いなのです」
「そうか……俺たちにしか、頼めない……うん! その依頼、受けようじゃねぇか!」
うんわぁ……チョロ。
なんでそれで懐柔されてんだよ。
少し考えれば、気分良くさせて依頼を受けさせようとする魂胆ダダ漏れだったじゃん。
窮地では誰よりも冴え渡ってる癖に、なんでこういう時にはポンコツキャラ発動すんだよ。
禁酒令出してやろうかな……?
「俺たち【エクスポーション】に任せろ! この街の平和は俺たちが守る!」
「流石、頼もしいですね」
はぁ……マジか。
ヴィランの決定はパーティの決定でもある。
誰一人として文句を言う者はいない……ていうかさ。
「まあ、そういうことなら仕方がないわよね!」
「うへぇい! 俺たち最強っすからね!」
俺の彼女とアウグストはヴィランと同じで簡単に乗せられてるし。
「街の危険は見過ごせないですね」
「まあ、治安維持は必須かな」
アイリスとアレンも、街の安全優先に考えているからか、納得しているみたいだ。
ギフリエさんは、
「…………」
ひたすらに無言。
けど、解決しないといけないと考えていそうだ。
イヴさんの術中に嵌った気しかしないけど、俺だってあんな危ない冒険者が街中で暴れるのを看過できない。
騎士や衛兵だと対応が不十分になるというのなら、やるしかないんだろうな……。
憂いはないに越したことはない。
この際、安心して活動できる環境作りだと思うことにしようか。
「よっし、じゃあ……行くか!」
こうして、俺たち【エクスポーション】は流れの傲慢パーティ【アウトローズ】の捕縛に動くこととなった。
最後にチラッとイヴさんがしてやったり顔をしたのを俺はきっと忘れないだろう──。
そして、過労に見合った報酬はきっちりと頂こうと心に決めた。
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