【173話】指名手配っぽい扱い
「助けて頂きありがとうございました!」
絡まれていた受付嬢の子から感謝の言葉を貰った。
冒険者としての活躍で感謝されるのではなく、こんなイレギュラーな事態を収めた事で感謝されることにはちょっと複雑な気分である。
けれども、大事に至らなかったことは幸いか。
「あの、一部の相手に怪我をさせちゃったんですけど、大丈夫ですかね?」
不安になったので、質問をする。
主にアウグストが蹴り上げた男が目を覚まさないくらいボロボロになっていたからなのだが。
受付嬢の子が答える前に他のギルド職員が返答をしてきた。
「問題ありません。あれは正当防衛として処理しますから」
キリリとした表情で眼鏡をかけた長身の女性職員。
サッと答えを出した後に彼女は俺たちのことをマジマジと見てくる。
「それにしても、皆さまの活躍を拝見させて頂きましたが、暴漢を制圧するまでの手際の良さに……正直驚きました」
褒め言葉……だろうな。
けれども、素直に頷くことはできない。
そもそも、冒険者同士で争うのは褒められた行為ではない。
「でも、僕たちにも落ち度があります。話し合いで解決できればベストでしたからね」
アレンは俺の考えていたことをそっくりそのままギルド職員の女性に伝えていた。
周囲からの批判がなかったにせよ、穏便に済ませられなかったのは、こちらの落ち度。解決策ではあったが、最善策ではなかったのではないかと思う。
「暴漢を取り押さえたのに、とても謙虚なのですね。感心します」
「いえ、謙虚とかではありませんが」
「その点に関しても、気に病まれる必要はありません。元よりあの冒険者パーティは話の通じない者たちであると冒険者ギルドで周知されていますので」
女性職員からの言葉は棘を含んだ辛辣なものであった。
まるで、見てきたかのように話すな。
ギルド職員の女性は続けて語る。
「彼らの悪行に関してはちょうど今、会議室で話し合っていたところでした。【アウトローズ】という冒険者パーティが来たら、警戒するようにと注意喚起のつもりでしたが……セントール子爵領に来ている事が分かったのは、嬉しい誤算ですね」
何が嬉しい誤算なのか、俺にはさっぱり分からない。
彼女の話を聞き、分かったような顔をしたのはヴィランとアウグストであった。
「なるほどなぁ。つまり、アンタはあの冒険者パーティの行方を追ってたってわけだな!」
「概ねその通りです。彼らは元々王都近くにあるガレウス侯爵領で活動していた冒険者パーティだったのですが、多数の違反行為が発覚し、ガレウス侯爵領での冒険者資格を剥奪されました。それから活動拠点を他領に移すのではないかと予測されたため、各地の冒険者ギルドに赴き、注意喚起を行なっていました」
まるで指名手配犯みたいな扱いだ。
冒険者資格を剥奪されるのは、相当やらかしたんだろうけど……その要注意パーティがここに来るなんてな。
アウグストもその話を聞き納得したようにニヘラと笑う。
「あー、なるほど。だから冒険者ギルド本部の人間がこんなとこにいたってことね。納得したっすわ」
アウグストは彼女のことを知っているようだ。
そして、ギルド職員の方もアウグストに親しげな視線を向ける。
「久しぶりですね。アウグスト、【神々の楽園】を脱退した時以来ですか」
「そっすね〜、そん時以来かなぁ」
「トップパーティを抜けるなんて、貴方の意図が掴めずにいましたが……なるほど、将来性はこちらの方が高いと踏んだのですね」
「それもあるけど、こっちの方が居心地いいんすよね。規模だけデカいパーティが長く覇権を握り続ける保証もないしさ」
なにやら壮大な話を繰り広げている。
【神々の楽園】とかと張り合うつもりはない。
今のところは、この街で自由に活動出来ているだけで満足だ。
アウグストが加入した意図なんて、今更知りたいなんて思わない。ただ彼はもう俺たちの仲間である。
それだけ分かっていればいいと思う。
女性職員は、アウグストとの話を終え、俺たちパーティ全員に顔を向ける。
「自己紹介が遅れてしまいましたね。私は冒険者ギルド本部職員のイヴと申します。暫くの間はここのギルドに居ると思いますので、よろしくお願いします」
イヴさんは眼鏡をクイッと直して、軽く微笑んだ。
レオとモナから書籍の宣伝となります。
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モナ「今日も私たちの小説を読んでくれてありがとう。そして、今、『3タテ』の書籍版が発売中よ! まだの人は、すぐに買いなさい! さあ、書店に走って走って!」
レオ「いや、モナ。あんま強引な言い方しないほうがいいんじゃ……こういうのは、もっと丁寧な伝え方をした方がさ」
モナ「レオは甘いわね。時には攻めに転じることも必要なのよ」
レオ「なるほど」
モナ「それに、2巻が出たら、私たちの大活躍をもっとど迫力で見せられるわ! 私の槍捌きが輝くチャンスなの!」
レオ「いや、絶対そっちが目的だろ……私的な感情がダダ漏れじゃん」
モナ「うっ……そ、そんなことない……わよ」
レオ「目が泳いでるから、否定しても説得力ないぞ?」
モナ「もう、レオは細かいわね。とにかく、本作の書籍版が発売しているの。買ってね! ってことでいいの!」
レオ「雑にまとめたな……モナらしいけどさ」
モナ「ほら、レオも宣伝して」
レオ「わ、分かった分かったから。顔近いって……」
モナ「────! ご、ごめん」
レオ「えっと、モナも言っていたけど、書籍版が発売中です。俺たちの慌ただしくも楽しい物語を是非とも書誌にてお楽しみください」
レオ・モナ「「よろしくお願いします!」」
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