【169話】狂犬と亡霊が仲間となりて
本日より、『追放された盾持ちは3年の時を経て最強Sランクパーティの一角を担う』
がBKブックス様より発売致しました!
イラストは『うなさか』先生です!
是非とも、書籍版の方もよろしくお願い致します。
【エクスポーション】に二人が新しく加入した。
ギフリエさんがパーティメンバーと打ち解けて、少し経った頃にヴィランがそれを公表した。
新加入したのは元【神々の楽園】所属だったアウグスト。
それから、ヴィランの昔馴染みであり、完全無名のギフリエさんである。
この話は瞬く間に広がり、クラッシュ王国内では【神々の楽園】を脱退したアウグストがこちらに加入していることが知れ渡ると、アウグストに関しての話題が再燃することになった。
「聞いたか、あの話」
「ああ、【エクスポーション】にあのアウグストが加入したってやつだろ。しかも、引き抜きとかじゃなくて、アウグストから懇願して加入させて貰ったって話だぜ」
「マジか……けど、言っちゃ悪いがアウグストってあの傍若無人な振る舞いが目立つことで有名なSランク冒険者だよな。誰かに頭下げるとか想像も出来ないぞ」
「けど、アウグスト自身もそう公言してるんだから、間違いないんだ」
「【暴虐の狂犬】がそこまで魅力を感じるなんて……もしかしたら、【エクスポーション】は【神々の楽園】や【シリウス旅団】をも超える国内ナンバーワンパーティになるのかもしれないな」
特にセントール子爵領内はお祭り騒ぎであった。
【エクスポーション】の戦力強化は、領内の平和維持能力の向上とほぼ同義。
加えて、何度もスタンピードを鎮めている俺たちのパーティは、更なる期待を背負いながら再出発を遂げることになりそうだ。
「騒がしっ! なんすか、これ〜」
アウグストの素っ頓狂な声がパーティハウス内に響く。
窓の外には多くの人だかりが出来ていた。
パーティハウスを取り囲むように多くの人が押し掛けてきている。迷惑だとも感じるが、それだけ注目度の高いゴシップネタなのはこちらも想定済みだ。
「まあ、アウグストがうちに入ったと知られればそうなるって」
冒険者ギルド内ではかなり前から噂になっていたし。
アウグストを連れて依頼をこなしている俺たちのことを見て、納得した人も多いはずだ。
けれども、それを知らない人たちからすればこの人員補充に驚きの声を上げざるを得ない。
「アウグストの話題ばっかりだけど、ギフリエさんの方も色々噂されているわよ。無名なのにいきなりSランクパーティに加入したって」
モナがそう語ると、ギフリエさんも顔を下に向けた。
恥ずかしがるというよりも、困惑しているという気持ちが大きいように思える。
「…………」
黙り込むギフリエさんの姿を見ても、俺たちは特に焦ったりはしなかった。それが彼女の標準的な仕草であると理解したからだ。
「まあ、無名とはいえギフリエさんの実力はちゃんと高い。結果を出し続ければ、変な噂も立たないと思うけどね」
「流石、噂マスター。説得力が違うな」
「レオ、不名誉な称号を付けないでくれないか……」
アレンの困り顔を見て、俺たちは思わず吹き出して笑った。
月日は流れ続け、人と人との関係性は日々少しずつ変わりゆく。【エクスポーション】がこれから先もSランクパーティでありつづける保証はどこにもない。
けれども、彼らとならまだまだ上を目指せる気がする。
「なぁ、レオ。野次馬から俺たちを守りながら冒険者ギルドに向かってくれ、ガハハッ!」
ヴィランの無茶な要求に呆れてしまう。
「馬鹿。俺の盾は戦闘用なんだよ。人避けに使えるわけないだろ」
「ああ、やっぱり?」
「普通にうざいな……ヴィランがリーダーなんだから、解決策くらい提示してくれよ」
「解決策なぁ……やっぱ、レオとアレンが笑顔振りまいておけば、残った俺たちはコソコソ裏から出ていけそうな気がするぞ!」
なんで、俺とアレンが犠牲になる前提なんだよ。
本気で張っ倒してやろうかと思った。
アレンも苦笑いをし、
「それは……ちょっとね」
なんて言っている。
ヴィランの適当に考えたような案に頷くことはないだろう。
「はいっ! 野次馬全員ボコして、分からせよ!」
「えぇ……もっと穏便に済ませられないかな?」
アウグストの突飛な発言に眉を顰めるアイリス。
モナがちょっとやる気になっていたのが、困りどころだな。過激な思考をもうちょっと抑えてほしい。
「まあ、まだ時間はあるからゆっくり考えるか……」
パーティハウスからどうやって出ていこうか。
そんなことについて無駄な話し合いを続けて、俺たちは時間を無駄に浪費した。まあ、時々はこういうくだらないことに時間をかけるのも悪くない気がする。
本日より、『追放された盾持ちは3年の時を経て最強Sランクパーティの一角を担う』
がBKブックス様より発売致しました!
イラストは『うなさか』先生です!
是非とも、書籍版の方もよろしくお願い致します。