【167話】人付き合いは大変です
ギフリエさんが【エクスポーション】に加入してから一週間が経過。
彼女は──。
「…………」
「…………」
パーティの空気に順応出来ていなかった。
残念だ……いや、なんとかギフリエさんと他の皆んなを打ち解けさせようと努力はした。
ギフリエさんの弓の腕前はSランクパーティに相応しいもの。
残る課題として、仲間との連携を取るだけだなと感じた。なので、ギフリエさんがパーティに馴染めるように和やかな談話時間を確保した。
したはずなんだけど。
「……………………」
「…………っ」
「…………」
「…………」
「…………すぅっ」
「んんっ……」
卓上で向かい合うヴィラン以外のパーティメンバー。(ヴィランはまた飲みに出掛けた)
誰も会話しない!
「…………あー、なんか。腹減った……っすね……」
「いえ……さっき食べた……から……」
アウグスト、無理矢理過ぎる話題をぶち込むな。
それは返って空気が重くなるから。
朝食はさっき食べ終えて、もうなんかボケ老人みたいな会話内容だから!
ギフリエさんもなんとか返答してくれたみたいだけど、それっきり会話は途絶えてしまう。
「…………」
「…………」
──空気が重い。室温もなんか寒々しい感じがする。
誰も喋らない空間。アウグストはやっぱり耐えられないようで、なんとか話を繰り出そうと口を動かした。
「……そ、それにしても………すぅっ、今日はいい……天気で、すねぇ〜」
「アウグスト」
「?」
「……外は、雨よ!」
「あっ……っすね……」
モナの鋭い眼光がアウグストを貫いた。
「もう余計なことを喋るな。次変なことを言ったら槍で突き刺すぞ」と彼女の真っ赤な瞳がそう物語っていた。
怖い。
モナに睨まれたことで、アウグストも黙る。
そして、誰一人として話題を切り出そうとしない。初めのうちは、ギフリエさんに質問するような感じで会話をしようとしていた。
けれども、
『……ええ』
『……そう』
『……うん』
『……はい』
肝心の主役は言葉短かに返事を返すだけ。
それも無表情で、だ。
そんな調子で会話が続くわけもなく、沈黙がパーティハウス内を支配してしまったというわけだ。こんな時、ヴィランがいたらスベり倒しながらも会話が続くんだろうけど、出先でもう潰れてるだろうしなぁ。
「えっと、取り敢えず……今日は解散で」
やむを得ないことであった。
これは早急に対策立てる必要ありだ!
▼▼▼
ということで、ギフリエさんが皆んなと打ち解けるための計画を俺とギフリエさんの二人で立てることにした。
無策じゃ、ダメでした……。
「レオ……馴染むのは困難だった……」
「ああ、うん。目の当たりにしてたから、分かるよ」
「…………大勢の前で話すの……苦手、だった」
なるほど、いきなりハードルを高く設定してしまったことが鈍重な空気を高速生成しちゃった原因か。
ギフリエさんの口から告げられたことに俺は納得してしまった。
思えば、俺が初めてギフリエさんと会話したのも、旧教会都市で他に誰もいない場所でのことだった。
いきなり大人数から質問責めにされるのは、ギフリエさんには厳しい環境だったみたいだ。
「じゃあ、特定の人と仲良くするところから始めてみるか……」
ギフリエさんにとって同時に四人との親交を深めるのは、難易度が高過ぎた。であれば、一人ずつ打ち解けられるようにすればいいのではないだろうか。
そう思い立った。
「特定の人……?」
「うん、まずは……そうだなぁ」
最初の候補としては、アレンかアイリスだな。
で、アイリスの方が同性ということもあって話しやすい気がする。大人しい雰囲気なところもギフリエさんと相性良さそうだ……と勝手に推察しておく。
「ギフリエさん、最初はアイリスと仲良くなるところから始めましょう! 一気に四人と距離を縮めるんじゃなくて、一人ずつ交友関係を広げていきましょう!」
ギフリエさんはコクコクと頷き。
手を軽く握るような仕草を見せる。
瞳の部分は覆い隠されていて見えないが、多分やる気に満ち溢れているのではないだろうか。
──なんとか、なるかな?