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【165話】未経験者? 大丈夫そ?





 ギフリエさんの街案内役に抜擢された俺は、ギフリエさんを連れてセントール子爵領グラス街の至ると所に赴いていた。


「ここが冒険者ギルド、俺たちが仕事を受ける時はほとんどこの施設で仲介して貰う……って、これは知ってますかね」


「……うん」


 冒険者ギルドを含め様々な場所を見て回った。

 武器屋、鍛冶屋、雑貨屋や商業ギルド。

 金銭管理をする銀行……あと、ヴィランがよく通っている酒場とか。


 はぁ、最後のは必要なかった気がする。

 それなりに歩いたため、少し足の裏が痛い。


「ギフリエさん大丈夫ですか? 疲れたりしてませんか?」


「……平気。歩くのは慣れてる」


「そうですか。でも、少し休憩にしましょう」


 近くにあった公共のイスに腰掛け、俺とギフリエさんは休む。

 空が青いなぁ。

 流れる雲を見ながら、ぼんやりしていると不意に服の裾を引っ張られた気がした。手元に視線を落とせば、ギフリエさんがちょこんと俺の裾を摘んでいた。


「レオ……聞きたいこと、ある」


 聞きたいこと?

 街案内は割と丁寧に説明していたつもりだけど……疑問点とかあったのだろうか。


「何ですか?」


 何か分からないことがあるのなら、教えてあげようと密かに意気込み俺はギフリエさんの顔をじっと見る。


「その……お守りの中は見てない……よね?」


 彼女から飛んでくる質問は予想していないものであったが、身に覚えのある内容であった。


「見てませんよ。ほら、ちゃんと袋に入れたまま肌身離さず持ってます」


 懐から以前ギフリエさんに渡された小袋を取り出す。

 当然ながら、取り出した痕跡などは欠片もない。まあ、取り出した後で入れ直したとかはあり得るかもしれないが……俺は言いつけを守って中身に目を通していない。

 ギフリエさんは少し黙ったが、信用してくれたのかすぐに服の裾から手を離し、俺は向けていた視線を空に向けた。


「なら、いい……」


 何故か凄く緊張した。

 悪いことをした覚えはないのに、くそ……ヴィランが案内役なんてやらせるからだ。

 あとでたっぷりと徴収してやろう。

 秘蔵の酒の一本くらい貰わないと、心労に見合わないからな。


「あの、ギフリエさん。ヴィランと知り合いだったんですね……」


 ほのかに重くなった空気を払拭したいので、俺は張り付けた笑顔でそんなことを尋ねる。

 実際、これは聞きたかったことでもある。

 ギフリエさんとヴィランが面識アリだったなんて、「ギフリエさんパーティ加入」とかなんとか騒いでいるあの場では動揺してないように装っていたが、本心では色々とツッコミどころが多かった。


「彼が幼かった頃に……面識がある程度」


「そうなんですか。つまり、幼馴染みたいな……?」


「……? よく分からないけど」


 いやいや、今の流れは「そう」とか「正解」とかって肯定する場面ですよね?

 なんで、首を傾げて俺が変なこと言ったみたいな空気になってるのかな。

 新手の罰ゲームかな。


 こほん。


 悪い流れだ。断ち切らねば……。


「ギフリエさんって……冒険者だったんですね。なんか意外です!」


「冒険者は初めて……」


「ん?」


 今、「冒険者は初めて」とか言わなかったか?


「あの、ヴィランの知り合いで、実力もある……えっと、冒険者じゃなくて、傭兵を経験されてたり?」


「そんな経験、ない…………」


 待って。

 それってつまり、完全素人ってこと⁉︎

 ヴィランは実力は問題ないって──口からデマカセ言ってたのだろうか。

 はぁ、もう頭痛くなってきた。


「心配しないで…………レオ。迷惑はかけない」


 ギフリエさんは俺が俯いたのをフォローしようとしたのか、言葉少なに励ますような言葉を投げ掛けてくる。


「多分、大丈夫……?」


 そして、最後に本音もポロリ。

 一気に不安になって来ましたけど、本当に大丈夫そ?




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  邪智暴虐の闇堕ち聖女〜追放された元聖女は理不尽な世界へ復讐するため、悪逆非道な制裁を執行する〜

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[一言] お守りの中何が入ってるんだろう?
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