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【162話】騒動の行き着く先は?




 アウグストが【神々の楽園】を抜けたことは、うちのパーティへ加入するといったあの日の数日後に大きな話題となっていた。

『国内最大級のSランクパーティ【神々の楽園】から【暴虐の狂犬アウグスト】脱退⁉︎』


 そんな記事の載った掲載誌がクラッシュ王国中に出回っていた。

 当然、そこまでの話題になればうちのパーティにも情報は入ってくるわけで。


「アンタ……はぁ……」


 モナが頭を抱えている。


「へへっ、なんか有名みたい」


 当人はケロッとしているが、渦中の男をパーティに加入させるなんてことが周囲に知られれば、間違いなく【エクスポーション】にも注目が集まるだろう。

 俺も少しだけ、頭を抱えたい気分である。


「てか、この記事酷くないすか? 【暴虐の狂犬アウグスト】って、もう二つ名というか悪口じゃん!」


 アウグストよ、注視すべきはそこではない。

 アウグストがパーティを抜けただけでこの騒ぎなのだ。

 となれば、【神々の楽園】を抜けた彼をパーティに加入させた【エクスポーション】には少なからず非難の声が殺到することが予想される。


 災厄の火の粉がはっきりと見えた気がする。


「アウグストさんが本当に加入することになったら……どうなるんでしょうか。その……色々と」


 アイリスは不安そうに呟いた。

 騒ぎになることは間違いない。

 ヴィランがアウグストのことを引き抜いたなんて噂が流れでもしたら世間からの視線がどうなるのか。

 

 ……そんな不安が募る。


「やっぱり、今からでも解雇にしましょう! 実害が出る前に障害は排除すべきだわ!」


 現在のアウグストは仮加入状態である。

 正式に加入するのは、もう少しだけ様子見しようという意見がパーティ内でも多かったからだ。


「いや、モナっち。それはないって〜! なんで、邪魔者扱いなんすか⁉︎」


「だって、邪魔者だもの」


 そう言い切り、モナはツカツカとアウグストの方へと近付いていく。そして、大袈裟なため息を吐いた後に肩を落とす。


「うん、やっぱないわね。解雇で」


「レオっち……俺、悪役令嬢さんに虐められてるんすけど、助けて? 人を守るのがレオっちの仕事だったよね?」


 俺を巻き込むなよ。

 なんで俺に助けを求めれば、モナを言いくるめられると錯覚しているんだ。

 実力云々は抜きにして、言論でモナと言い合うというのなら、間違いなく俺は弱い。

 モナとの言論をしても、大抵負ける。

 アイリスが諭せるくらいなものだろう。


「レオ。レオは私の味方よね? だって、私たち……このノンデリ入居者なんかよりも遥かに親密な関係だものね」


「…………はい、その通りですね」


「……な、なんでぇ⁉︎」


 すまんアウグスト。

 モナと対立するのはちょっと無理な話です。




▼▼▼




 さて、小芝居は終わりにして。

 アウグストの【エクスポーション】加入は色々と考えなければならないことが多い。

 それは事実である。

 モナも冗談半分で解雇だとか言っているが、最悪の選択肢として彼女の言葉が現実になるという可能性も捨てきれない。


「アウグストは、ヴィランに誘われて、パーティに加入したわけじゃないんだよな?」


 念のためそう確認を取る。


「はい、俺の方からパーティに入れてくれって持ち掛けたっすね。いやぁ、仮でも加入できるなんて、ガチラッキーっす」


 ラッキー、か。

 何故彼がこちらに入ろうと思ったのか、本当に理解に苦しむ。


「アウグストは、前のパーティに不満でもあったのかい?」


 アレンがズバリ尋ねる。

【神々の楽園】をアウグストが捨てた理由。

 彼が抜けるとなれば、引き留める声も多かったことだろう。

 そんな彼が所属していたパーティを抜けてまでこちらにきたのが腑に落ちない。

 アウグストはケラケラ笑いながら、軽いことのように告げた。


「いやぁ、不満っていうか。前のパーティは俺にとってちょっと息苦しい感じだったんすよね。規模が大きかったってのもあるんすけど、規律とかでバリバリ縛られてさぁ」


 まあ、規律はそうだろうな……。

【神々の楽園】はクラッシュ王国においての冒険者パーティの模範となっている部分が多々ある。

 パーティメンバー一人一人の行動がパーティのイメージに直結する以上、不祥事などを起こさないように対策するのは自然なことだろう。

 だが、そういう意味であれば、


「俺たちのパーティも【神々の楽園】と同じSランクパーティだ。今後規模が大きくなった場合、環境自体は前いたパーティと同様になる可能性だってあるだろ」


【エクスポーション】も国内三つ目のSランクパーティに入る。

 彼が規範に縛られるのを嫌うのだとしたら、俺たちのパーティなんかよりも、もっと無名で自由の効くところに加入すれば良かったはずだ。

 アウグストもその可能性を考えていないわけじゃなかったようで、「確かにね」と頷いた。


「まあ、それは諸説あり……みたいな感じじゃないすか。今のこのパーティはすげー居心地良いし、俺的にかなり気に入っちゃってて」


 やめろ、そのテレテレ〜って顔。

 背後から感じるモナの圧が物凄いことになっちゃってるから!


「あっ、なんか外の空気吸いたくない? 散歩してきていいすか?」


 だから、思いつきで発言するのを控えろ。

 モナのイライラメーターが振り切れそうだから……。




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  邪智暴虐の闇堕ち聖女〜追放された元聖女は理不尽な世界へ復讐するため、悪逆非道な制裁を執行する〜

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[一言] やっぱりちょっと問題になっちゃいそう
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