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【141話】新たな起点





 アウグストの胴体を貫かんとする拳が吹き飛んだ。

 文字通り、それは、肩から先が消失したのである。

 黒い稲光と鋭い電撃が一瞬にして、その場の優位をひっくり返した。


「んっ……⁉︎」


「何が?」


 包帯女の顔色は悪くなり、アウグストでさえ何が起こったのか分からないような顔をする。


 ──当然だ。俺だって、今のが何か分かっていない。


 魔法?

 けれども、その強烈な一撃で包帯女の左腕を奪い去った者は、誰なのか。

 アイリス、モナはゾンビや竜との戦闘で手一杯。

 アレンやヴィラン、レジーナは論外だ。そこまでの魔法が使えないはず。

 調査隊も激戦につき、こちらに回せる援護などない状況。そもそも、これだけの威力で包帯女に大きなダメージを与えられる人がこの中にはいない。


 そうなると今の攻撃の出どころが特定はできない。

 悪辣の限りを尽くした包帯女に対する天罰である。……なんてことを言ってこの攻撃について考えを放棄するのは簡単だ。

 けれども、未知に対して脳死で対応するのはあまりに不安。

 これは人為的であると考えていい。


 誰かが俺たちの援護? あるいは、包帯女への明確な敵意から攻撃を行った。


 ──旧教会都市内。この中に迷うことなく入って来れるということは、それなりの実力がある者くらい。


 疑問の雲は厚く、晴れることはない。

 ただひとつだけ言えることがある。


 ──これは、俺たちにとって好機だ。


「アウグストッ、反撃を!」


「分かってるっつの!」


 包帯女の腕は再生していない。

 アウグストは、再度短剣で切り込む。

 このチャンスを逃す手はない。


「させないわ!」


 女が身につけていた包帯が生き物のように動き、アウグストの短剣に絡み付く。

 ピンと張られたそれは、決して切れなかった。

 攻撃の手段が封じられ、アウグストは目を細めて額から汗を流す。


「やっちゃったぁ……あのぉ……レオさん? ヘルプいいですかぁ? 助けてぇ……」


 情けないその声に、ガクリと頭を落とした。

 獰猛さはなくなり、どうすればそこまで落差のある対応が出来るのか不思議だ。

 けど、窮地に変わりはない。

 足は動く。

 痺れは取れた!


「待ってろ。今助ける!」


 アウグストに絡み付いている包帯の根本に向かって狙いを定める。

 距離、問題なし。

 威力……も、多分大丈夫。

 いくぞ。


 力の限り振りかぶり、重い盾を思いっきりピンと張られた包帯にぶつかる。

 包帯を切断するには十分な威力、アウグストの救出には難なく成功した。


「大丈夫か?」


「あーもう、余裕っすよ。逆にやる気出たみたいな?」


 ──嘘つけ。


 虚勢を張り続けるアウグストに苦笑いを浮かべるしかない。

 だが、包帯女に恐れを抱かないのはいい傾向である。

 彼は、復帰さえできればいくらでも敵に向かっていける度胸を持っている。寸前で動けなくなるということはきっとない。


「……はぁ、中々厳しくなってきたわ」


 対して、包帯女は片腕欠損。

 出血も止まっておらず、苦しそうな顔付きである。

 アウグストの拘束も咄嗟にしたことで、切り札のひとつであった動く包帯は、バッサリと切断してやったので、リーチの優位も取れないはずだ。


「このペースで行けば、勝てる」


 確信があった。

 こちらの消耗よりも、相手の消耗の方が激しい。

 失った腕を再生させていないのが何よりの証拠であった。


 アウグストと俺は並び立ち、再度攻勢に移る構えを取る。


「そろそろ土下座して詫びてもいいんじゃないんすか〜?」


「煽るなって……」


 調子に乗るアウグスト。

 包帯女はそんな安い挑発に乗ったりはしていないみたいだが。

 脅威度は下がったものの、それでも包帯女が不気味で何をしてくるか不明瞭。


「倒せるかな?」


 ゴクリと喉を鳴らす俺にアウグストは、飄々とした顔で告げる。


「倒せんだろ。俺とレオっちの2人ならさ」


 片腕を失っても未だ衰えることのない邪悪なオーラを持つ包帯女との対峙は続く。




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