【116話】異常事態
アレン及び調査隊の捜索。
俺とモナとアイリスの3人が動き、ヴィランはアイリスが浄化した仮拠点に残ることになった。
「気を付けろよ〜」
俺たちに向けてヴィランは大きく手を振る。
万が一ヴィランに危険が迫ったらと考えたりもしたが、そこは【エクスポーション】のリーダーらしく、
『俺のことは気にするな。危なくなったら、酔っ払ってても事前に察する』
そう高らかに話し、俺たちを送り出してくれた。
まあ、そんなに時間はかけない。
さっさとアレンと調査隊を発見して、ヴィランのところに戻る。
「急ごう。日が暮れる前に終わらせたい」
モナとアイリスは静かに頷いた。
▼▼▼
「アレン〜!」
「アレン〜!」
「アレンさーん!」
大声で呼びかけながら、俺たちは進む。
しかし、こちらの声に反応する者は、誰もいない。
廃墟となった周辺の建物に反響するだけ。
──不味いな。
捜索を開始してかなりの時間が経過した。
未だに手がかりすら掴めていない状況。
どうするか?
「レオ、まだ続ける?」
モナが背中を叩きながら、そう尋ねてくる。
泥沼だな。
こうも、手応えがないと流石に焦りも出てくる。ヴィランであれば、何か見えたりするのだろうか……いや、そんなことを考えるのはやめよう。
──ヴィラン任せにするのは良くない。なにより、拠点に残ってくれる人材として、ヴィランほど頼りになる人はいない。
好転しない状況を嘆きつつも、俺は考える。
探し方を変えてみるか、そんな風に思い立った時だった。
「アァダァッダァガァゥゥ………」
「────!」
ピチャリピチャリと湿り気を含んだ足音を立てて接近してくる影があった。
生存者かと思ったが、その瞳に生気はない。
死者が魔物化した姿。
ゾンビ……。
視認した瞬間、モナは槍を構える。
アイリスも魔法を発動できるような姿勢になる。
「気を付けろ」
警戒を促す。
耳を澄ませる。
足音は、目の前にいるゾンビみたいなやつだけじゃない。
遠くからこちらに這い寄ってくるような音が無数に聞こえる。
囲まれている……。
「レオの死角は私がカバーするわ」
「2人の援護は任せてください!」
臨戦体勢。
旧教会都市に入って初めて、敵と邂逅した。
だが、おかしい。こんなに急に現れるなんて──。
俺たちはこの周辺をずっと探索していた。その時は、こいつらの気配すら感じられなかったのに。
「ブァァグァァダァ……ゥゥ……」
声ではない。
理性のない魔物の鳴き声と相違ない唸り。
──やるしかない!
向こうが足取りを緩める素振りはない。
明らかにこちらに狙いを定めている。
「ガァダァッ!」
「──っ! 後ろもから来たわ」
「ああ、2人はそっちを頼む!」
飛びついてくるゾンビ。
こちらに走り込んでくるゾンビ。
大群で押し寄せてくる。
終わりの見えない戦闘が開始された。
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