【113話】始まりの朝
「モナ、モナ」
「うぅん……まだ、眠いわ」
「でも、もう起きないと」
布団を頭から被り、窓から差し込む日差しを完全にシャットアウトしようとしているモナを揺する。
武術大会から数週間。
あれ以来、俺たちは再び変わらない日常を送っている。
いや、変わらないというのは、少しだけ違うのかもしれない。
「おはよう。レオ」
「ああ、おはよう。モナ」
まだ眠そうなモナの顔をじっと見つめながら、俺は朝の挨拶を返した。
あの日、俺はモナと恋人になった。
忘れられない夜。
モナとの約束が果たされた瞬間。あの時のことは一生忘れないだろう。
幸せな日々を手に入れ、俺としては大満足の結果。
「ふふっ」
「どうした?」
「なんでもないわ。朝からレオの顔が見れて幸せだなって、思っただけ」
──モナが可愛すぎる!
思わず顔がほころぶ。
目と目が合うだけで未だに顔が赤くなるところも、それでも頑張ってジッとこちらを見つめてくるところも、モナの愛情表現の全てが愛おしい。
「モナ、朝ごはん食べようか」
頷くモナと共に俺は、他の3人がいる方へと向かった。
▼▼▼
「おはよう」
俺たちが降りてくるのを確認して、いち早くそう告げてきたのは、相変わらず爽やかな笑顔を浮かべたアレンであった。
武術大会から俺たちが帰ってきた時は、心配そうな表情を浮かべていたが、今ではすっかり余裕のある態度を見せる。
「ああ、おはようアレン」
「おはよ」
アレンは既に外行きの服に着替えていた。
「まだ早いのに、どっか行くのか?」
「ああ、ちょっと依頼がね。調査任務なんだけど、早朝の方がなにかと都合が良くてね」
──調査任務ね。
なんだかアレンには似合わないものだなと感じる。
もっとこう、剣を振り、実力行使をメインに据えたような任務を受けるのが適任であるというイメージがあるからだろうか。
まあ、その辺をとやかく言うつもりはない。
「そうか。気をつけろよ」
「うん。行ってくるよ」
アレンを見送り、俺たちは朝食の席に着く。
料理はアイリスが作ってくれている。
香ばしい香りが調理場を超えてこちらに漂ってくる。
「モナちゃん、レオさんおはよう! 今そっちに運ぶね」
「ありがとうアイリス」
朝食のプレートを手のひらに乗せて、アイリスはこちらへとやってきた。
「2人は今日も仲がいいね」
笑顔でアイリスにそんなことを言われる。
いや、その通りかもしれないが……。
恥ずかしい。
俺とモナは、ほぼ同時に狼狽える。
「ふ、普通だよ」
「そ、そうね。……前と変わらないわ!」
「ふふっ、そういうことにしといてあげる」
──なんだろうか。最近はモナとの関係に関してからかわれることが多くなったような気がする。
温かな食事を口に運びながらも、ちょっぴりやりづらい気分を抱く。
最近は、一緒のベッドでモナと寝るようになったから、余計にそういう感じの目で見られる。
だか、おかしなことは一切していない。
本当にただ隣同士で寝ているだけである。
しかしながら、周囲からはそうは思われず、昨日だって──。
『よお、ガキども。今朝はお楽しみだったな! ……ぐふっ!』
『くたばれ、酔っ払い!』
飲酒によって顔を真っ赤にしたヴィランに茶化されたんだった。
まあ、寝起きで機嫌の悪かったモナに枕投げられていたが……。
あれは、自業自得だ。
ヴィランが悪い。
──というか、あの酔っ払いはまだ寝てんのか?
「ヴィラン、今日は遅いな」
「どうせ2日酔いでしょ。1日中寝てればいいんだわ」
辛辣な反応を見せるモナにアイリスは苦笑い。
「あはは……昨日のことまだ許してないんだ……」
「当然よ。失礼なことばっかり言って……少しは気を遣うということを覚えてほしいわね」
「モナちゃんの要望は多分、実現しないと思う」
「……私もそう思っているから、余計に腹立たしいのよ」
なんだろう。
女性組からのヴィランへの評価が低過ぎる気がする。
我が【エクスポーション】のリーダーでありながら、威厳を全く感じさせないヴィランに心底同情した。
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