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【106話】負けるわけにはいかない!





 短剣で斬られるたびにその方向へと盾が持っていかれそうな感覚を覚える。

 構えがブレないよう必死に盾を持つ手に力を込めるが、その度に衝撃を堪えることで思考させてもらえない。


「──はぁっ!」


 アウグストは、息を入れて渾身の斬撃を繰り出す。


「ぎっ⁉︎」


 本日初めて押し込まれた。

 盾を構えたままであるが、少し後方に後退りしてしまう。


「かって〜けど、突破口はありそうっすね」


「それはどうかな?」


 俺はまだ手札を切っていない。

 もちろん、それはアウグストも同じ。

 己の手の内を明かさずに、探り合いのような無益な攻防。

 制限時間が10分という短い時間であることが惜しいように感じる。

 これだけ手練れな相手との本気の戦闘は、俺でも興奮してしまう。

 高鳴る鼓動。

 それを抑えつつ、俺は次の段階へと移行する。


「……俺に攻撃入れないと、勝てないぞ」


 安易な挑発、しかし……。


「あっは、言うねぇ! ……じゃあ、そろそろ遊びは終わりにしよっか!」


 アウグストは簡単にそれに乗る。

 いや、まるで挑発されるのを待っていたかのようだ。

 彼は真っ直ぐな瞳で、こちらにギラギラした視線を送る。


「【神速】……覚悟はいいかぁ?」



 ──瞬間、俺は宙に舞っていた。



「なに、がっ……⁉︎」


 覚えているのは、アウグストがとあるスキル名を唱えた直後に姿が消え、空中に放り出されたということのみ。

 スキル名からして、加速系統?

 いや、ならば今俺がこうして空中に吹っ飛ばされている理由にならない。


「驚いたっすか?」


 頭上からするアウグストの声。

 見上げると、無情に短剣を振り下ろさんとするアウグストが視界に入る。


 ──これはやばい!


 盾を上に構えて短剣の攻撃を防ごうとする。

 だが、その後はどうする?

 このままいけば、俺はアウグストの直接攻撃を防げたとしても、地面に思いっきり叩きつけられる未来が待っている。

 立て直しには時間がかかるだろう。

 その間に、アウグストから決め手となる攻撃をまともに食らったら?



 ──俺は、負ける。



 いいのか。

 モナと一緒に冒険者を続けられなくて?


 ……いいわけないだろ。


「おらぁっ!」


 アウグストの短剣での斬りつけによって、俺は急速に下へと落下していく。

 受け身は取れない。

 避けようがないことだ。

 けれども、追撃はさせない。


 ──我慢比べしてやるよ。タンクを舐めるな。


「ぐがぁっ……」


 痛い。

 骨が折れたかもしれない……。

 俺が叩きつけられた部分は、地割れし、防具越しに細かな破片が突き刺さる。

 アウグストは、俺の上に降りてくる。トドメを刺してやろうと言わんばかりに短剣を振り上げながら……。



【釘付け】


 心の中でそう唱える。

 痛みに耐え、意識を保っていればスキル発動は簡単なことだ。

 負けてたまるか。俺はモナに選ばれてこの場にいるんだ。無様な姿を晒して、モナに幻滅なんてされた日には、間違いなくショックで寝込む!


「守衛っ、覚悟〜!」


「……お断りだ」


 アウグストの動きが止まる。

【釘付け】の範囲に入ったからだ。


「うわっ、出た……そのスキルは厳しいって!」


 アウグストは身動きを取れない状態を嘆く。


 諦めない。

 俺はまだ、負けていないんだ──。





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