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【103話】準決勝のあとに




「それではこれより準決勝を行います」


 対戦相手は、王国騎士団の騎士団長と副団長様らしい。

 とにかく、デカい。

 鎧によって3割り増しくらいになっているのかもしれないが、頭上から見下ろしてくるくらいの高身長と猛獣のような眼光が突き刺さってくる。


 モナが女性だから手加減するという雰囲気でもなく、むしろ、モナのことを警戒している素振りを見せる。


 ──まあ、あんだけ大暴れしていれば、モナが危険人物だって認識もするか。


 圧倒的体格差。

 超重量級の相手に対して、身軽そうなモナは、余裕綽々な面持ちである。


「あのクマみたいな2人を泣かせたら、本当に楽しそうね!」


「発言がもう悪役そのものだぞ……」


 まったく、この娘は……。

 彼女に他意はない。

 モナは、強者と対峙してテンションが上がっているだけである。図体が大きいだけでなく、実力も折り紙付き。準決勝まで勝ち上がってきたというだけでその証明がされているのだ。


「それでは試合開始!」


 審判の宣言が入り、モナは瞳を輝かせる。


「行ってくるわ!」


 単独特攻。

 止まる間も無く、モナは大柄な騎士2人に怯むことなく突撃する。

 まあ、モナが負けるなんてことがないとは思うが、一応サポートに行くか。




▼▼▼




「勝ったわ!」


「ああ、そうですね……」


「なによ。嬉しいなら、もっと泣いて喜びなさいよ」


 横たわる大柄な騎士2人。

 頭につけていた被り物は、見事に粉々。

 そう、モナの仕業である。

 モナの槍で叩きつけた痕跡。……痛々しい。


 勝利を掴んだこと自体は、嬉しい限りである。だが、やっぱり苦言を呈したいと思ってしまう。


 ──槍で脳天ブン殴るのは、違うでしょ!


 モナの槍の扱い方が常軌を逸している。

 本来であれば、槍は手前に突き出すように攻撃するのが一般的であると思われる。

 長いリーチと鋭い刃先を生かした安全圏からの突き。

 俺の持つ槍使いのイメージはこんなものだ。


 ……で、モナはどうだろうか。

 槍を思いっきり横に振ったり、上から思いっきり振り下ろしたり、きっと彼女は、自分の持っている武器を棍棒か何かと勘違いしている。

 いや、用途として槍で打撃を与えるような戦い方は間違っていないが、それをメインに据えて、振り回しまくるのはちょっと……。


「モナ、決勝はもう少し落ち着いて戦おうな?」


「ええ、落ち着いてぶっ飛ばすのね!」


 ──違う。そのぶっ飛ばすという発想を抑えろと言いたいんだ……。


 アウグスト、レジーナペアにその戦法は悪手である。

 モナの性格が直情型であるということは、これまでの戦い方から読まれている。だからこそ、安易に突撃してしまえば、今回みたいに力押しをするまえに反撃されてしまう。


 決勝だからこそ慎重に。

 勢いというものも大切だが、準決勝で当たった騎士団とあの2人では、レベルが遥かに違う。


「モナ、次は慎重に行こう。大切な決勝戦だ」


 至極真面目に俺はモナにそう伝える。

 真っ向勝負も時には必要。

 でも、それ以前に布石を十分に撒き散らしておきたい。

 結末はモナに任せる。けれども、そのクライマックス前にモナが落ちているなんてことがあってはならないのだ。


「モナはアウグスト、レジーナペアとの戦いにおいて勝利の鍵だ。モナがやられてしまえば、俺たちは確実に敗北する」


 モナは槍だけでなく魔法だって使える。

 これまでが、強引な戦いばかりだっただけに、絡め手を使うことができれば、相手の意表を突いた有利な戦いに持ち込める可能性が高いと思う。


「分かったわ。今までとは、相手の格が違うものね」


「ああ、相手は近接アタッカー2人。アレン2人分と考えて挑もう」


「アレン2人分⁉︎ それは、ちょっと言い過ぎじゃ……」


「最悪の想定はしておくべきだ」


 アレンは【エクスポーション】で最高の長剣使い。

 相手にアレンが2人いるということは、つまり、高速、高火力のアタッカーの猛撃に対して、有効な対策を複数練らなければならない。


「【腐食】も今回使う。とにかく、大会ルールにおいて、勝てるように立ち回ろう」


「レオがそう言うなら。私も慎重に動くわ」



 決勝戦は、1時間後。

 それまでに俺とモナは、アウグスト、レジーナペアへの対抗策をギリギリまで考えるのであった。





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