【100話】躍進と称賛の声
武術大会2日目。
4回戦から9回戦まで行われ、大会日程の中でも特に試合数の多い1日。
1日6試合ということは、昨日の倍。
勝ち抜けてきた人数は、当然初日よりもはるかに少ない。そのため、試合数が多くなってしまっているのだ。
「コンディションは?」
「最高よ!」
「よし、行くか」
俺とモナは、今日も強者を払い除け、優勝のために戦う。
▼▼▼
「はあっ!」
本日の6試合。
簡単に言ってしまうと、呆気ないものばかりであった。
爆速で槍を振るうモナを止められる者がおらず、次々と相手を跪かせる。
怒涛の躍進。
モナの過激な槍は止めどなく風を切り、勝利を切り開いていく。
モナは、一躍注目の的となり、会場中で噂されるほどに有名になった。
「ねぇねぇ、あの子見た?」
「女の子なのに、槍で無双してる子でしょ! カッコいいよね!」
「不正した相手も実力で倒したんでしょ」
「そうそう、もしかしたら、今年の優勝はあの子が取るのかも……」
「いやぁ。強い女性ってのは、憧れるな!」
「まあ、お前は初戦負けしてるもんな」
「うるせぇよ。お前も2回戦敗退だろうが!」
「へいへい。ていうか、勝ち上がったところであんなに強い子に当たったら即敗退だろ」
「美人で強いなんて……世の中不条理ってやつだな」
そこらじゅうでモナの話題が上がる。
モナがその場所を通るたびに羨望の眼差しと、嬉しそうな顔をした者たちがヒソヒソと話し始めるというのが、会場各所で垣間見られた。
「人気者だな」
モナは、不本意そうな顔である。
「別に人気者になりたくて大会に参加しているわけじゃないのに……」
「いいことだろ。嫌われるよりは好かれる方がいい」
「……アレンに同じこと言えるんだったら、それも正しいのかもしれないわね」
「うっ……」
痛いところを突いてくる。
そんなこと言われてしまえば、一概に大衆から好意的な視線を向けられるというのが、いいことであるとは言えない。
モナは、周囲からこのようにキラキラした視線を向けられることに慣れていないように見える。
いや、Sランク冒険者なのに、そんなわけないだろと思うかもしれない。しかし実際、冒険者ギルド内でモナに向けられる視線は畏怖とか怯え混じりのものばかり。
彼女の苛烈な言動と衝動的な力の証明が生んだことではあるものの、やはり冒険者ギルドと武術大会とでは少し違うのだ。
強さは、その人の価値。
武術大会において、その人となりはあまり関係ない。
戦いを勝ち上がり、その頂点に近い者こそが憧れの対象となるのである。
「まあ、煩わしいなら俺がなんとかするよ」
「煩わしいってわけじゃないけど……」
──なんだ、やっぱり恥ずかしいだけか。
ツンツンしているからか、素直に喜ぼうとしないモナ。
そういうところもモナの魅力であると俺は、感じている。
「ちょっと、何考えてるのよ?」
……モナの行動を微笑ましいなんて考えていると、察したようにモナは顔を赤らめて俺のことをじっと見てくる。
「……普通にモナが可愛いって考えてた」
「はぁ⁉︎」
──あっ、なんか自然な感じで喋っちゃった。
モナは顔を手で覆い隠し、指と指の間からこちらを睨みつける。
「変なこと……言わないでよ……」
「ご、ごめん」
別に貶したわけじゃない。
褒め言葉であるはずなのだが、モナにはそれが本当に嫌であったみたいだ。
以後、気を付けよう。
──しかし。この分だと、モナのことを好きだなんて伝えるタイミングが無さそうだな。
モナとの付き合い方はちょっぴり難しい。
けど、
「レオ」
モナが俺の手を引く。
「はぐれたら困るから……その、会場を出るまで、この手は離しちゃダメだから」
なんだかんだ言って、モナは俺にとって嬉しい行動を取ってくれる。
モナと手を繋ぐというのは、やっぱりドキドキするし、手汗とかいっぱいかいてしまう。そんな俺であるが、モナに言われた通り、その手をギュッと握った。
「離さないって、はぐれたら困るもんな」
「ええ」
宿泊は、パーティハウスではなく、近場の宿を取っている。
俺とモナは、2人でそこに向かった。
繋がれた手から伝わるモナの体温を感じつつ、モナの歩幅に合わせて歩く。
──明日は、ついに決勝戦まで行われる。絶対に優勝しような。
9回戦までが終わり、タッグ戦で勝ち上がったのは8組。
明日から始まる準々決勝、そして準決勝、決勝と勝利を重ねて、俺たちは武術大会の頂点を目指す。
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