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【コミカライズ】異世界転生したら辺境伯令嬢だった 〜推しと共に生きる辺境生活〜  作者: 凪
青き春の章

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書籍4巻発売記念SS。妖精界のお土産。

ライリーの厨房。朝の9時頃。朝食は7時に終わってる。


今日はアズマニチリン商会から早朝に仕入れたビワを料理する。


袖をまくり上げながら冷たい水と石鹸で手を洗い、エプロンを腰に巻き、今日は自分で料理をする。


料理人は料理を覚えて貰うために二人だけ残ってもらってる。そう難しいものでもないけれど、今夜はめんどくさい紙の仕事をいっぱい頑張るらしいお父様とお母様のために、美味しいデザートを作るのだ。



「お嬢様、本日は朝も早くから何を作られるのですか?」


若い料理人が問いかけてくる。


「びわのコンポート……。この季節の甘い実を、優しく煮詰めるのよ」

「びわの……コンポートですね」


一人の料理人がノートと筆記具を手にメモを取り始めた。


窓辺に置かれた籠には、仕入れたばかりの瑞瑞しいびわが入ってる。


それらを丁寧に一つずつ手に取り、縦に一周包丁を入れ、くるりとひねって二つに分け、種と薄皮をスプーンでそっと取り除き、すぐにレモン汁を垂らした冷水に浸す。


これは変色を防ぐためだ。


そして果肉から甘い香りがふわりと立ち上る。

美味しそう!


鍋に水と上質な砂糖を入れ、弱火にかける。

砂糖がゆっくり溶けていくのを眺めながら、私はインベントリから瓶を四つ取り出した。


ほんの少しだけの大人の味の仕込み用。リナルドがくれた妖精界からのお土産!



「これは……お二人への、ささやかな贈り物」



まず普通の分を煮る。

びわの果肉を鍋に入れ、優しくかき混ぜながら5〜6分。果肉が透き通るように柔らかくなり、シロップがほのかに黄金色に染まる。


火を止めて冷ましている間に、もう一つの小さな鍋を用意した。


こちらは大人向け。


リナルドが妖精界からお土産に少し持って来てくれたアマレットの甘く杏仁のような香りを数滴、そしてこれまたリナルドのお土産のラム酒をほんのひとさじ。


両親が夜に少しだけくつろげるように、アルコールの柔らかな風味を加える。


びわを入れ、弱火でさらに2〜3分。アルコールが飛ばないよう注意しながら、香りを閉じ込めるように煮詰める。


キッチンに甘酸っぱいびわの香りとほのかに大人びたリキュールの芳醇な匂いが混ざり合い、なんとも贅沢な空気になった。



「ふう……できたわ」


二種類のコンポートをガラス瓶に移し、粗熱を取る。


黄金色のびわの果肉が、透き通ったシロップの中で美味しそうに輝いている。これを魔導冷蔵庫にて夕食の後まで冷やしておく。


「あとは夕食後に、お父様とお母様にサロンに来ていただくから、これらをそれぞれ別の皿に盛って、仕上げにミントの葉を1枚添えて出してくれる?」

「かしこまりました」


◆ ◆ ◆


夕食後、サロンに私と両親の三人が集まった。



「ティア、今日は何かいい匂いがするな」



お父様がシャープな瞳を細めて微笑み、お母様も優美に頷いた。


「はい! 今日はびわでコンポートを作ってみました! どうぞ召し上がってください」


私は少し緊張しながら皿を置いた。


お父様はフォークで柔らかなびわを一口。

シロップが滴る果肉を口に運ぶと、目がわずかに見開かれた。


「……ほう。これは……甘くて美味いな」


甘く優しいびわの風味が、舌の上でとろけるように広がる。酸味は穏やかで、砂糖の優しい甘さが果実本来の味を引き立てている。


お母様も一口食べて、ほっとしたように息を吐いた。



「美味しい……上品なデザートね」



そして、私はワゴン近くに控えていたメイドに合図をおくって、追加の皿をそっと差し出して貰った。ちゃんと忘れずにミントの葉も添えてある。



「こちらは……少しだけ、大人向けにアレンジしたものです。紙のお仕事お疲れ様でした、の、お父様とお母様に」



アマレットとラム酒の香りが、ほのかに立ち上ると、お父様は驚いた顔をした。



「お前は自分では食べないお酒入りを?……」

「レ、レシピはリナルドが教えてくれたし、お酒もリナルドが妖精界からお土産にくれたやつなので!」


どさくさに紛れて妖精のリナルドを言い訳にした。


一口含むと、びわの甘さにアーモンドのような深みと、ラム酒のまろやかな余韻が重なる。


「あー、でもアルコールは飛ばしてあるので、ほんのり温かく、心地よい香りだけが残るはずなんですよね、いかがです?」


母も頰を緩め、目を細めて味わった。



「まあ……なんて優しい味わい、香りもいいわ」

「どうです? 疲れた脳、いえ、頭に効きますか?」

「ふふ、そうね、満たされた気持ちになったわ」



胸が熱くなった。

ずっと長く貧乏生活だったので、推しの満たされたの言葉が私の五臓六腑にしみわたる!!


こうして推しの両親が美味しそうに、本当に幸せそうにお手製のコンポートを味わってくれる姿を見ているだけで、私は幸せだ。


黄金色のシロップに光が反射し、サロンに小さな輝きを落とす。初夏の夜風が窓から入り、甘い香りを優しく運んでいく。



「ありがとう、ティア、本当に美味しいよ」



お父様の穏やかなイケボが耳に心地よい。



「さ、私もアルコール無しを食べよ! んー! シンプルながらも美味しい!」


ビワ大好き! 今度は何を食べようかな? 今の季節はさくらんぼといちごとマンゴーあたりもあるだろうから楽しみ!


リナルド!お酒のお土産ありがとね!


──そしてその頃のリナルドは5月の森の中、木々の間を渡るように飛んでいたのだが、枝に止まって一休み。


『ハックちゅん!……誰かボクの噂でもしたのかなぁ?』





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