File No.32:英雄異世界に夜空の花が咲く
トクサツ少女・石ケ谷ヒロミは、異世界へ転生された(自称)花の美少女である!
彼女が転生してきた世界は、悪の組織に支配された英雄都市【ブレイドピア】である。
神より授けられたチートツール【トクサツールベルト】で『トクサツ戦士HIROMI』に変身しながら、いつかは巨乳になるために……な訳じゃ全然なくて!!
英雄異世界の平和を守るために『1ヶ月ぶりに』戦うのだ!!
ヒロミ『何時までもゲーム・ウォーリアー書いてる場合じゃ無いわよ作者!!!!』
――今年のお盆、如何御過ごしでしょうか?
異世界で英雄やってます、石ケ谷ヒロミが残暑お見舞い申し上げます。(お辞儀)
……別に今更改まることも無いんだけど!1ヶ月振りのトク転だから挨拶しないとね。
皆はこの夏はどう過ごしたのかな?
あたし達は悪の組織『ジャックス』の襲撃が1ヶ月間ずーっと無かったから一時の平和、夏休み感覚を味わえたの!(ホントは作者がゲーム・ウォーリアーの執筆に集中してたんだけどね)
どんな感じで過ごしてたかとゆーと……
≪ヒロミちゃんの場合≫
「ルリナちゃんが上で~」
「ヒロミさんが下で~」
「「百合サンドイッチ~~♪」」
……要はベッドで押し倒されイチャイチャってだけの話よ。
――――ポンッ!
「ヒロミニもはいる~☆」
カプセルから勝手に出てきたあたしの子供(仮)のヒロミニちゃんもイチャイチャに乱入してきた。やっぱり子は親に似るのかしら。
「ヒロミニ、真ん中入って具になりなさい」
「ダメっ!!ヒロミニちゃん苦しがるでしょう!!!」
ちょっとした冗談なのに。仕方ない、ヒロミニちゃんは更に上に乗っかってサンドのオリーブになりなさい。
≪W.I.N.Dのタケル達の場合≫
「――――プライベートビーチってのも久々ね!」
「そうだな、ヒロミもジャックスも居ない海ほど静かで平和な事はない」
アイツらあたし達を差し置いてタケルとフィーリア専用の海に隣接している別荘で寛いでやんの!リッチでちょっと腹立つわね。
あら~海辺じゃビキニに競泳水着なんか着ちゃってる女の子達がキャピキャピ遊んじゃって!あたしからすれば眺めるだけで視力3.0は保養されるわ!!
いつもはクールで装ってるタケルもあれが目に入った途端に鼻の下伸ばしてサングラスを隠してにやけた顔。良いのかなーそんな下心見せちゃって……?
「タケルきゅん……――――エロい目してたらサングラスごと顔面叩き割るわよ?(ノイズ有り)」
※タケル小刻みに震え中。
≪作者の場合≫
「仕事暑いし、彼女出来ねぇし、ゲーム・ウォーリアーが思ったほど読まr」
――――こいつはどうでも良いや。
……とまぁこんな感じで平凡な夏を過ごしたのだった。
☆★☆★☆★
そして今日、現実ではお盆も終わりに近づいてきた頃、英雄異世界『ブレイドピア』ではあるイベントが開催されようとしていた。
「――花火大会!?異世界でもそんなお祭りがあるの!?」
これをルリナちゃんから聞いたあたしはびっくらこいた!ファンタジーを装った異世界でも風流な事が行われるもんだなと感心もした。
「えぇ!このお祭りは納涼と世界の繁栄を祝うためのもので、年に1度真夏の夜にドカーンと綺麗な花火を打ち上げるんですよ!!」
へぇ~、ここでも日本と似たような事をするんだね。
「開始は夜の7時からですって!せっかくですからヒロミさんも一緒に花火見にいきましょうよ!!」
こんなにはしゃぐルリナちゃんも久々に見た。あたしゃ嬉しいわ(泣)
……となると、あたしとルリナちゃんの百合デートが花火によってより際立つって訳か!よーしだったら話が早い!!
「じゃルリナちゃんに似合う浴衣をトクサツールで作ってあげなきゃ!」
「……ゆかた?何ですかそれ??」
……あ、そっかこの世界じゃ浴衣の文化って無いのか。だったら尚更教えてあげなきゃ!
「こーゆー事!『トクサツール・着せ替えビーム』!!」
あたしは腰の『トクサツールベルト』にエネルギーを放出して、ルリナちゃんの衣装を変換させるビームを浴びさせた。
「……うわぁ~☆これが『ゆかた』ですか!凄い綺麗ですね!!」
ルリナちゃんの黒髪は星座ベースの髪止めで短く束ねて、抹茶色と花柄の衣に白い帯。
それにサンダルもセットで雅な浴衣姿のルリナちゃんの完成だ。
「やっぱりルリナちゃん緑が似合ってる~♡︎」
「でもちょっと動きづらいですねゆかたって……」
まぁね、浴衣はいそいそと歩く感じが似合うように作られてるのもあるしね。
まだお昼だし、あたしは一旦ルリナちゃんの浴衣は元に戻した。
「早く夜にならないっかな~~♪」
☆★☆★☆★
――――毎度お馴染み所在地不明の『ジャックス』のアジト。
1ヶ月以上も何してるかと思えば……花火大会を前にして、やっぱり良からぬ事を企んでいたみたい!
「あ゛~~~~~~~~~~」
……ちょっとベクター大佐のおっちゃん!何を呑気に『扇風機であー』やってんのよ!!
「だって涼んでるとどうしてもやりたくなるんだもん。アジトだからムシムシするし、ゴホッゴホッ何か煙が充満して……って煙!!?」
と驚いて周りを見渡せば、扇風機の横から団扇でパタパタ扇いでると思いきや。
炭火焼きでイワシ焼いてるプロフェッサー・ファントムのおじいちゃん……
「――オイジジイ密なアジトで何イワシ焼いてんだ!!!!」
「バカモノ、花火と言ったら酒じゃろ!!その為に肴になるもん作ってんじゃろうが風情が無いのう大佐は!!」
「風情もクソも室内で肴焼くなボケ!!!!」
あーあー、地下アジトだから煙で辺りがモクモク。換気扇付けないと!いやアジトにそんな設備無いか。
そんな中、戦闘員が煙の影響で口を押さえながら報告しに来た。
「――ニィイ!!ベクター大佐様、花火大会専用の迎撃花火の用意が出来ました!!」
「おぉそうか!これで夏休みボケした人間共を燃やす火祭りの準備が整ったわ!!」
夏休みボケしてほしいのはあんた達悪の組織の方よ!また物騒な事が起きそうな予感……!
「……あの、換気扇付けませんか?ケムいんですけど」
だからアジトだから無いのッッ!!!
☆★☆★☆★
――英雄異世界はあっという間に夜。
終始お日柄も良かった事で、絶好の花火日和となった夜空。
でもせっかくの花火なんだから、眺めの良いところで観たいもんね。そこで……
「――何で俺らの基地で花火観ようとしてんだお前ら」
「良いじゃないのタケル!あんた達の基地が丁度条件に合ってるんだから!!」
ここはW.I.N.Dの本部基地!ここなら標高も高いし、都会の町並みもネオンで輝いて良い外観。ベストポジションね!
ルリナちゃんはさっきの緑、あたしはピンク、それとフィーリアはキラキラの黄色ベースの浴衣で今か今かと花火を待ち構えていた。
「あたしはルリナちゃんと二人きりで居たいから、そっちはそっちでご自由に!」
「勿論そうさせて貰うわ!行きましょタケルきゅん♡︎」
「お、おぅ……」
そうそう、お互いに干渉されないカップルの鉄則、最低限のマナーをあたし達は弁えてるの!
なんてそうこうしている内に……
ひゅ~~~~…………
――――ドーーン!!!
パッと光って咲いたファイヤーワークという名の大きな花が夜空に花開いて、一瞬の内に散った……!
「た~まや~~!!」
花火と来たら、やっぱりこう叫びたくなるよね。
「ヒロミさん、たまがどうかしたんですか?」
「え、違う違う!花火が上がった時の掛け声よあたしが元いた世界の!『たまや~』とか『かぎや~』って言うのが一般的なんだって!」
「そうなんですか?ちょっと変わってますね」
外国の人も変って思っちゃうのかな。そして今もこの掛け声掛ける人いる?
――ドンッ、ヒュルルルルル……
「ほら、今度ルリナちゃんもやってみてよ!『かーぎや~』って!」
「え~!出来るかな……」
ほらほら火種がドンドン舞い上がって消えて、まもなく大きな花火に…………あれ?
ちょっと待て、火種が消えるどころか火の玉になって大きくなってる。てか、こっちに来てる!!?
「か~ぎ……」
――――ドォォォォォォォン!!!!
「!?」
とてつもない爆発音で耳を塞いだあたし達。ふと後ろがパチパチと音がするから振り向いて見ると、W.I.N.D基地がさっきの火の玉に直撃してメラメラ燃えていた。
アカーーーン!!!『かーぎや~』ってか、基地が火~事や~~ッッ!!!!
「ちょっ……何これ!!?」
更に爆音のような爆発が続いたかと思えば、下方の都会が数ヶ所花火の直撃によって火災が発生していた。これはもしかして……!
「ゴルゴ◯の仕わ」
「誰だよ!?ジャックスの奴等だろ!?」
タケルの言うとおり。ジャックスが夏場に危ない火遊びを始めちゃった!!
――――トクサツ戦士、久々の出動だ!!!