File No.30:明日、天気にな~れ!!
【前回のあらすじ】
メランコリーな涙を流すと、大量の雨を引き起こして洪水を引き起こす怪人『レイン公女』がヒロミの住むマウンペアの町で大洪水を引き起こした!
トクサツールで産み出した救命ボート、ノアの方舟に乗って救助に向かうヒロミとルリナ。ヒロミよどうかいたいけな小公女の悲しみを聞いてやってくれぃ!!
「はい、院長先生!」
誰が院長先生だ!!!
――マウンペアの町に100年に一度の大洪水警報発令!!
あたしヒロミとルリナちゃんで力を合わせて、洪水で溺れかけている住民たちを助ける救助活動に出た。
「あっ、あそこに人が!!」
「急いで向かわないと!!」
大雨によって引き起こした水のかさは10分も経たずに2階建ての家を屋根ごと沈めてしまい、逃げ場を失った住民達は屋根や看板に捕まりながら救助が来るのを待っていた。
「早くボートに乗って!!!」
勿論あたし達の救命ボートだけが動いている場合じゃない。
タケルやフィーリアがいるW.I.N.Dも緊急出動して、ヘリコプターや船も出して各所で救命活動に出ている。
流石特捜機関ってのもあって、人命救助はウルトラプロ級。犠牲者も出さずにマウンペアの住民を皆助けていった。
『――ヒロミ!マウンペアの住民は皆救助したぞ!』
「良かった!ありがとー!!」
スマホからタケルの報告を受けたあたしは救助成功にホッと安堵した。何より一人も犠牲を出さずに救出したことが大きい。W.I.N.D様々!
「ヒロミさん、早く洪水を引き起こしている怪人を探さないと!」
「でも誰がこんな大雨引き起こしてるか分かんないわよ!」
怪人の場所を特定できずに困り果てるあたし達に、ボートで救出された住民の一人の男が話に割り込んだ。
「……あ、そういえば!北の方で何か屋根の上で滅茶苦茶泣いていた小公女みたいなお嬢ちゃんが居たな。確か、藍色のドレスで大きくてブルーな傘持ってた!」
「え、小公女??ここの住民じゃなくて?」
「いや、こんな田舎にあんなドレス来た娘は居ねぇよ!何でもあの娘、お父ちゃんの事で泣き叫んで雨呼び起こしてる感じでさ!!」
「……ヒロミさん」
「――ちょっと行ってみる!」
証言が確かならば、間違いなく彼女が洪水の原因、ジャックスの怪人かも!!
「トクサツール・ジェットスキー!!」
トクサツールで生み出したピンクボディーのシャープなジェットスキーが水上に現れた。このマシンは最大時速80キロで加速する!
「ルリナちゃんは住民の皆をお願い!あたしは小公女とやらを説得してみる!!」
「お願いします!!」
ジェットスキーに乗り込んだあたしは勢いを上げて加速し、雨の湖と化した町を突っ走る!
確かこの町で一番高い建物は、さっきの人が言ってた北の方にある『マウンペアの時計塔』だったわね。
マウンペアは田舎だけどクラシックな雰囲気で有名なのはこの時計塔がシンボルとなってるからなの。
「――あ、居た!!きっとあの娘だ!!」
時計塔の尖った屋根に佇みながら泣いている女の子が一人、ジャックスの雨降り怪人・レイン公女だ。あの娘の涙が洪水を引き起こしたんだ!!
「……ひっく、ぐすっ……うぅ……」
両頬に滝のような涙を流しながらすすり泣きをするレイン公女。時計台まで浸水している水の上から、あたしは彼女に呼び掛けた。
「――ちょっとー!何でこんな所で一人泣いてるのよーー!!」
「……? 貴方はだぁれ?」
どうやらレイン公女はあたしの事は存じて無いようだ。
「あたしはヒロミ!貴方が泣いて町が洪水になっちゃってるから止めに来たの!!」
「ヒロミ……?」
あたしの名前を聞いた途端、彼女は形相を変えてあたしを睨み付けた。
「――貴方ね、トクサツ戦士ヒロミは!ダイヤモンド鉱山売買に失敗して伝染病に掛かって亡くしたお父様の仇を取らせて貰うわ!!」
……だからダイヤモンド鉱山って何よ!?
「ちょっと待ってよ!あたしは貴方のお父様なんか知らないしダイヤモンドなんちゃらで詐欺もしてないわよ!!」
「嘘よ!!お父様を亡くして1年以上女学院で下働きさせられた屈辱も忘れたとは言わせないわ!!」
あんた女学院に通ってたの?勿論お父様の事はあたし知らないし、どうやら彼女は相当思い込みが激しいみたい。
「許さないわ!!お出でなさいジャックスのジェットスキー部隊!!」
レイン公女の掛け声で颯爽と現れたのは数台のジェットスキーに乗ったジャックスの女戦闘員!戦う気満々のようね……
でも良く考えれば、自分の不幸を勝手に思い込んで、涙で何の関係のない人を洪水で巻き込んで……迷惑極まりないわ!!
「――仕方ない、洪水を止めない気なら……変身よ!!」
あたしはピンクのジャンパーを開いて、腰のベルトを露にさせた!!
さぁ、皆さんも一緒に変身しよう!!!
「クルックル~♪シャキーン!!」
ザーーーーーーッッッッ
……ありゃ、いきなり雨が強くなってきたよ?雨が湖に滴り落ちる音が強まるなかで、変身コールが始まる。
「――巻~き毛、クルク(ザーーーーー)!
――わ~(ザーーーーーー)ル~♪
――クル(ザーーーーーーーーーーーー)…………」
――ダメだ、雨の音で変身コールが書き消されてる……こうなったら、腹の底から息を吸い込んで、スゥゥゥゥゥ……
「ト・ク・サ・ツ変身ッッッッ!!!!!!」
よし、ちゃんと聞こえた!!
掛け声が終わったと同時にベルト中央のシャッターが開き、虹色の結晶『トクサツールコア』が現れた!!
「そ~~れッッ!!!!」
――ギュビビビビビビィィィィィン!!!!!
(ナレさん)トクサツ少女・石ケ谷ヒロミは、変身ポーズでベルトの『トクサツールコア』にエネルギーを溜めることによって、【トクサツ戦士・HIROMI】に変身するのだ!!
空中1回転からの、ジェットスキーにすたっと着地!!
「雨に滴る良い美少女!トクサツ戦士HIROMI、参上!!」
――クルンッ♡︎(バイザー越しのウィンク時に出る効果音)
「やっつけちゃってください!!」
「「「ニィィイ!!!」」」
女戦闘員のジェットスキーが水上を走る!!
「よーし、掛かってきなさい!!」
時計塔側から迫る女戦闘員ジェットスキー部隊、凡そ十数名!迎え撃つはあたしヒロミちゃん一人!!ヒーローは孤独なのだ!!
プロの部隊の流星の如く突っ走るジェットスキーを避けながら、あたしは右往左往と水上を駆ける!
そして女戦闘員達が固まってあたしを追いかけてる所を俯瞰で見てみると、まるでトラックになって突っ走るボートレース、競艇のようだ。
「……そうだ!だったらこの技、クルクル~~!!」
あたしが腕を回してエネルギーチャージ、そしてそのパワーがジェットスキーに宿る!!
「HIROMIちゃん・神すぎるターン!!」
最低限幅を縮めて曲線を描いての急ターン!
急ターンにより女戦闘員はハンドルが取られて曲がりきれずに外側の時計塔の壁に激突!!
「「「ニィィィィイイイイイ!!!!」」」
うぁ、痛そ~……だけど勘弁してね!
さて残りはレイン公女ちゃん!!
「ねぇ少しは話聞いてよ!!あたしは貴方を倒したくないの!!だからこの雨を止めてお願い!!!」
「騙されないわ!!また院長先生に告げ口するつもりなんでしょうラビニア!!!」
――院長先生?ラビニア??だから何の話なのよ!!?
「貴方なんかに私の苦しみなんて分かってたまるものですか!!!!」
ゴォォォォォオオオオオオ!!!!!
「うわっ!!」
大雨転じて今度は台風並みの強烈な暴風が横殴りに吹いた。風速は約30メートル程か、水は波打ちジェットスキーも転覆寸前。
これはレイン公女の怒りが暴風を巻き起こしているって言うの!?
「くっ……あの娘相当嫌な事があったみたいね……でもこのままにするわけにはいかない!絶対助けないと!!」
……あ、ちょっと待てよ?
さっきあの娘『ラビニア』とか言ってなかったっけ。
確か『小公女』でセーラを虐める意地悪女だったよね?あっちも美少女だけど全然似てないし何であたしがあんな女呼ばれされなきゃいけないのよ!!解せないわぁ……
――!よーし、こうなったら……
「――分かったわレイン公女!貴方のお父様を亡くした原因のダイヤモンド鉱山がどうなったか弁護士に聞いてみましょう!!」
「……弁護士?」
「クルクル~~の、HIROMIちゃん・真実の弁護士召喚!!」
ベルトから発射された光からあろうことか、ハンサムな弁護士マンのカーマイクルさん(28歳)を召喚して書類を手にレイン公女の前に現れた。
「――貴方がレイン公女、もとい……『セレナ・レインブルー』さんですね?」
「え?は、はい……」
あ、セーラじゃなくてセレナって言うのねあの娘。
突然弁護士が現れて流石の彼女も戸惑う。
大雨である事も相まってかなりシュールだ。
「貴方のお父様が売買していたダイヤモンド鉱山の契約がこちらの書類にあります、是非御一読を……」
彼女は言われるままに書類を読む。……てか雨と風強いんだから飛ばさないでよ?
その書類にはこう書かれていた。
≪ダイヤモンド鉱山の所有権はレインブルー家と合同経営されていたマリー・B・クインが所有する。
――なお、彼女の証言により鉱山の所有後継ぎをレインブルー家の長女『セレナ・レインブルー』に譲ることに同意済み≫
…………え゛??『マリー・B・クイン』って、元ジャックス怪人のビークイーン!?
何かさらっと物凄いカミングアウトしてるよこれ!!!!
「まさか……お父様が売買していたダイヤモンド鉱山が戻ってくるって事ですか――!?」
「そうです。所有しているマリー・B・クインさんの養子になる条件で、貴方はまた裕福な暮らしに戻れるんですよ!」
おぉぅ……この展開『小公女』そっくり!
亡くなったお父様の友達が遺産を私に娘を探し見つけた時の大逆転劇みたい!!
――あ、雨もどんどん収まっていく!!レイン公女の心が晴れてきたんだ!
「ねぇレイン公女……じゃなくて、セレナちゃん!あたしそのマリー・B・クインって人知ってる人なの!是非貴方に会わせたいから、この雨止めてくれる?」
「本当ですか!?――あ……でも、こんな悪い事してしまってのうのうと会おうだなんて……」
レイン公女改めセレナちゃんは洪水を起こしたことに自分を責める。
怪人とはいえ、悪いことをしたと認める良心があるんだ。あたしは尚更倒したくない!
「大丈夫!あたしが貴方を元の良い子ちゃんに戻してあげる!!じっとしててね、クルクル~~!!」
あたしはクルクルとエネルギーチャージ、胸に蓄えて両手にハート型に掴んで……
「愛情全開!久々のHIROMIちゃんキッス!!」
――ちゅぱっ♡︎♡︎
ハート型ビームが抵抗しないセレナちゃんに直撃した!
「ぽわわわわわ~~☆☆」
ビームを受けたレイン公女の雨に濡れた藍色ドレスがダイヤモンドの白銀ドレスに変わる。
改めてセレナちゃんに生まれ変わった事により、急激に雨の勢いが弱まり、数分後には完全に雨と風が止んだ。
そして雨の上がった曇天の空に、一瞬だけ日の光が差した――!!
「……やっと泣き止んだ!天気もセレナちゃんの心も止まない雨は無いって、分かったでしょ?」
すると邪念が消えて純真な女の子に戻ったセレナちゃんは再び涙腺に涙を溜めてうるうるとして眼であたしに抱き付いた。
「うあああああぁぁぁぁぁぁ…………!!」
大雨のち晴れ、にわか雨からの晴れ。
女の子の心、本日晴天なり。
★☆★☆★☆
――翌日。マウンペアの町はすっかり洪水の水が引いて一段落した頃。
舞台はサウザンリーフの街にあるナイトクラブ『ローヤルゼリー』。
オーナーの『マリー・B・クイン』は改心したセレナちゃんを見て最大級にビックリしながらも抱き合いながら再会を喜んだ。
というのもマリーさんはセレナちゃんが小さいときから顔馴染みだった為、生涯会えないものかと思っていたのだ。
……何か矛盾してる。
元々レイン公女はジャックスのアンドロイドとデータで生み出した怪人だよね?
生身の人間を改造した訳じゃないのに、何で彼女の事をマリーさんは知ってたのだろう?
あたしはマリーさんに聞いてみた。すると……
「実はね……信じられないかも知れないけど、セレナちゃんって一回、死んでたのよ。お父様の後を追うように……」
「――――――!!」
……こんな事ってあるのかしら。
ジャックスは故人の記憶等のデータを怪人に移植して、違う形で転生していたんだ。
つまりあたしが改心させたことで、セレナちゃんの来るべき未来に辿り着かせた事になる……なんかややこしいなぁ!!
「ヒロミちゃん、セレナちゃんを生き返らせてくれてありがとう!!」
マリーさんはむぎゅ~っとあたし目掛けて抱きついて感謝した。
ルリナちゃんよりもおっぱいデカいから顔の息の行き場が見つからなくて若干苦しい。
(……今度、ルリナちゃんにもセレナちゃんに会わせてみようかな)
今日の天気はまた曇天。セレナちゃんに会うなら青空でって決まってるの。
……天国にいる本当のセレナちゃんにも見せたいから……ね!
「――明~日、天気にな~れっ!」
ヒロミ「全国の良い子の皆!
今が苦しくても、辛くても、生きてるだけで皆偉いんだよ!!親の愛から貰った命を大切にしてね……!!」
――クルン♡︎
そしてブックマーク、感想、評価等でこれまで以上にヒロミ達を応援しよう!!
皆さんの応援が作者だけでなく、ヒロミ達のファンレターになります!!!