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記憶のかけら
ー9月27日ー
『奏……愛してる…』
はっ、目が覚めた。
何か声がしたような…
心の中で一つだけ、何かの記憶が抜かれてる気がする。それは、あの事件の日から、思い出すと涙が出て、忘れてしまう。文香は俺にとってなんだったんだ?
なぜか思い出せない。なんなんだこの気持ち…
「おはよう、奏くん。」
「おはようございます、え、っと」
なんて呼べばいいのかわからなかったがすぐに。
「結弦くん、でいいよ。」
と言ってくれた。そして、
「今日から俺をお兄ちゃんのように扱ってくれ、少しでも仲良い方が信頼できるパートナーになれるだろ?」
「はい!わかりました!」
自分には兄がいたことがないからとても嬉しかった。
「一つ、昨日から気になったことがある。」
といきなり真剣な顔をしてるのでびっくりした。
「俺とは昨日、初めて出会ったんだよな?」
と意味不明な質問を言ってきた。
「はい、そうですけど…」
俺はこの答え以外に思いつかなかった。
昔どっかで見たとかかな?とも思えるくらい覚えていなかった、というか多分初対面だ。
「そっか、なんでもない。」
と彼は言ったが、顔は少し暗かった。