正義に休息なし
「……状況は分かったが……ここまでするほどか?」
ギルド本部から派遣された「治安維持ギルド」の構成員がそのようにジョシュアに問う。ジョシュアは眼下の惨劇の痕跡をちらりと見遣ると、大きく、微塵のためらいもなく首を縦に振る。
「もちろん。そうでなければ俺たちが死んでいた」
ジョシュアの力強い返答に、治安維持ギルドの構成員は大きくため息を吐いて頭をぼりぼりと掻く。
「アンタがそう言うのならばそうなんだろうな」
大きく息を吐き出すと、彼はジョシュアに背を向けて状況の分析に当たる。
「治安維持ギルドにしては聞き分けがいいな? てっきり俺たちを犯罪者扱いして牢獄にぶち込むつもりかと思っていたが」
ジョシュアはセレブロを指でもてあそびながらそのようにつぶやく。
治安維持ギルド、『バルホーク』は、界隈でも有名なギルドだ。
『正義に休息なし』をギルドの理念とし、その構成員もその言葉を文字どおりに受け止めて活動している。
「俺達は治安維持のための組織だ。お前の言葉が正しいか正しくないかは俺たちの管轄ではない」
背を向けたまま、「バルホーク」の構成員はそのように応えた。
ジョシュアがふうと息を吐いて周囲を見渡すと、いましがた聴取が終わったのか、エルザとエクスレイと目が合う。
「あーあ。お金にならない仕事なんてついてないわ」
大きく伸びをして、エルザがそう言った。