同盟成立
エレクトリック・カフェとその他ギルド連合が扉の向こう側に消えたことを確認してから、ジョシュアは「グレイブディガー」の面々を見遣る。喪服を身にまとった陰鬱な雰囲気を醸し出す4人もまた、「ステイン」を観察している。
「……これで俺たち2組に対して扉は3つ。カギを見つけられればどうやったって次の試験には進めるってわけだ」
グレイブディガーのギルドマスターだろうか、黒髪の青年が言う。
「あいにく俺たちには考えがない。もしよければ、あんたたちと組みたい」
青年のその提案に、ステインのメンバーは驚いたように顔を見合わす。先ほどエレクトリック・カフェの誘いを蹴ったばかりだというのに、何のつもりだろうか。
「エレクトリック・カフェは確かに実力はある。それに口も巧い。だからこそ俺たち以外のギルドが全部あいつらと組んだ――いや、吸収された。俺たちは独立して先に進みたいからさっきの誘いを蹴った。そうだろ?ステイン?」
青年の言葉にジョシュアは軽くうなづき、エルザもまた、苦々しげにうなづいた。
「ならば、互いに手を組むべきだ。どうせバラバラに試験を突破しても次の戦闘試験で叩き潰される。だったら互いに協力していくべきだろ?」
「君も口が巧いね」
思わずジョシュアが賛同の意を述べそうになったときに、エクスレイが口をはさむ。
「互いに素性は不明、魔法も不明目的は――ギルドランク試験の突破だとしても、あまりにもわからないことが多すぎる」
エクスレイの言葉にジョシュアは目を見開く。いつの間にか口車に乗せられそうになっていたことに気づいたのだろうか。
「でも、悪くない提案じゃないかしら? 彼の言う通り、この後の戦闘試験で私たちステインだけでどこまでできるかなんて、わかりきったことじゃない。なら戦力は多いほうがいいわ」
エルザがグレイブディガーの面々を見遣りながらそう言うと、エクスレイはジョシュアに向き直る。
「君はどう思うね?」
「……」
ジョシュアは少しばかり考え込んだが、やがて回答を導く。
「エルザの提案に賛成します。ギルドの連合が相手では、少し分が悪い」
「なら、決まりだ」
黒髪の青年はふっと穏やかに笑うと、エクスレイを見つめる。
「俺たちの素性はこの後ゆっくりと説明するさ。まずは手を組んて、ここから出ることにしよう」