エレクトリック・カフェ
ステインのギルドメンバーが扉を開く。その場所は魔術ギルド本部ではなく、どこかの喫茶店につながっていた。空間さえも捻じ曲げて別の場所同士を接着する。
空間魔法だ。
カランコロン、という軽快なドアベルの音にジョシュアとエルザが驚いたように周囲をきょろきょろと見渡す。すでに喫茶店内にいる人々はステインのメンバーに関心さえ払っていない。
「いらっしゃいませー! お客様は3名様ですか?」
ジョシュアとエルザがつぶさに状況を観察している間に、給仕服の女性がそんな問いを投げかける。突然のことにうまく言葉が繋げない二人を見かねてか、温和な声色でエクスレイが言葉を紡ぐ。
「あぁ。3人だ。魔術ギルド『ステイン』」
にっこりと笑みを浮かべたエクスレイがそう答えると、給仕服の女性はエクスレイに負けないくらいににっこりと、そして屈託のない笑みを浮かべて言った。
「ようこそ、『試験会場』へ」
そして口元の笑みはそのままに、目元の笑みだけ消して給仕服の女性が続ける。
「『ステイン』。最近勢いのあるギルドですねぇ。ルーキーハンターを返り討ちにしたとかなんとか」
口元だけは不気味にひきつらせて、さらに女性が言う。
「でも、腕っ節だけじゃ試験は通れませんよ? ギルドランクBは、そんなに甘いものじゃない」
ぎょろりと、品定めするようにジョシュアとエルザに視線を遣りながら女性は小さく笑った。今度はどこか蔑むような、ぞっとする声色を含んで。
「バカにするのもいい加減にしなさいよ?」
それに負けないくらいぞっとする声色でエルザが言葉を紡いだ。