あは
私は一人でそう呟いた。
依頼された仕事は今までどれも馬鹿げた殺人で
いつ命を落としてもおかしくない。
そのような仕事ばかりだったので
今回のこの依頼は殺人に比べれば盗むだけ
簡単に思われた。
ただ依頼の報酬額が見間違うかと目を擦りたくなる実際したかもしれないが、桁違いだった。
このスラムで生きるだけであれば一生分充分暮らせるであろう金額であった。
それだけになにか企てや危機を感じなかった訳ではない。直感ではあったがこの依頼は普段の仕事より危険であると、脳が震えた。
背中に冷たい汗がつーっと流れ、
しかし今までの自分の実績を思い出し、
今回も成功を捥ぎ取りやっと築いた平穏を
この手で守ろうと決意した。
私は依頼を受けるためこの人工人間用のデータ
というものの調査を始めた。
私は周りに30人、部下と呼ぶべきか最早私の
一部の如き者達を従えていた。
どれもがこのスラムの出身で頭のいい者から
身体能力の高いもの、商才あるもの
この底の底で生き、さらになにかに抜きん出て
いる者ばかり、私が自らの力と行動で自然と集まった私の世界そのもののように感じる。
約3ヶ月、この依頼に関して調べあげてきたヨン
は淡々と言った。
「このスラムのあるS国ですが他の国にはない最先端のロボット技術があり、基盤となる人工人間と
その頭、容れ物を動かす脳味噌みたいなものをデータと呼んでるみたいだ。
人工人間は普通の人間ではできない様々なことができてなんでも亜空速で走れと言うデータを人工人間に入れればその通り地面を吹っ飛ばす勢いで走りだすそうです。
また手術ができるデータなら医者になるし、
数学者、政治経済、文学者なんかのデータもあるみたいですね。
いよいよ我々人間はいらなくなるんじゃないかって泣きたくなるような代物でした。」
とヨンは言って自分の左の手の甲に埋め込んだ
小型のディスプレイでなにか操作し、私達にデータと人工人間の映像を見せた。
映像に映ったのは確かに人ではあったが手足を有り得ない方向に曲げながらニタニタ気味の悪い笑みを浮かべながら絵を描いていた。
絵は美しい女性の絵だ。
この映像の化け物が筆を持っていなければ写真
をなぞっているようにも見えただろう。
ヨンは続けた
「この人工人間を作っている工場の中に
今回の目的、破格のデータがあります。
場所はS国東部ですね。
警備が非常に厳しいのと軍隊並みの戦力が24時間
糞に集る蝿みてぇに辺りを警戒してます。」
私は「それを突破するのが私達の仕事だ。
奪うだなんていつもと変わらなねぇな。
言い方が違うだけでヤることは同じだ。」
始める時はいつも血管の中に冷たい鉄が流れてる
気がする。。。