奴隷少女は離さない
彼とスペリア、ラリーの三人は洞穴の中を歩き続ける。日の光は入り口で殆どが遮られ、中に設置されている松明の明かりだけが中を照らす。
今回の依頼は洞窟内に拠点を作っている盗賊たちの討伐。
そのため、中に入るときにはスペリアは剣に。
ラリーは数本の木の根へ変わり、それは触手の様に蠢いている。
新たな厄介者のラリーは普段少女の姿で左手に寄生しているが、元々は魔物である故、姿を変えることが出来る。ただ、その姿は木の根で出来た触手。そのため、知らぬ人が彼らを見た場合、魔物だと勘違いしてしまうだろう。
(見つけた)
「早速で悪いが、死んでもらう」
「はぁ?何言ってるだ。このクソガキは」
奥へ進んで行くと、少し開けた場所があり、そこに何人もの盗賊らしき者の姿があった。
盗賊達は彼を見つけるや否や、武器を持ち襲い掛かる。
対して、彼もスペリアを構え、ラリーの根を蠢かし交戦する。
向かって来る相手を剣で武器や鎧ごと切り裂き、逃げる相手はラリーの根っこが高速で伸び、彼らの身体に巻き付いては、細い枝を折るかの様に締め上げ絶命させる。
自身の両手が使えないというデメリットはあるが、その分彼女たちの能力は高く、そもそも彼自身の能力も高い。それは戦闘になれば、例え多数相手でも比較的楽に戦える程であった。本当に両手が使えないデメリットがなければ、喜んで使用するほどである
そして、彼らによる盗賊たちへの一方的な戦いが終わり、数分が経つ頃には彼らの辺りには盗賊たちの死体が転がっていた。
その光景を見てラリーは彼に語り掛ける
(この人たち食べちゃって良い?)
「あー……、そこの偉そうな奴以外は食っても良いぞ」
(やったー!)
ラリーは喜びの声を上げながら、根を盗賊の死体に突き刺す。
養分を吸い取っているのか、彼らの身体はドンドンと萎んでいき、最後にはミイラの様な姿に変わっていた。
「……一般人にそれするなよ」
(しないよー)
無邪気に笑う自身の左腕がいずれ村人を襲うではないかと不安に思いしつつ、洞窟の先へと進んで行くと、首輪や手枷を付けた少女がいた。
見た目は身長だけなら子供であるが、胸には大の女性でもあまり見ない程の大きな果実が実っている。他に特徴的なのは頭とお尻に生えている灰色に汚れた獣の耳や尻尾だった。
(獣人……それも奴隷の……)
「そうみたいだな……」
(あれも食べて良い~?)
「駄目だ」
少女は彼がこちらを見ている事に気が付くと体をビクッと震わせ、灰色の尻尾を自身の股に挟み込む。それは明らかに脅えている様子であった。
「あらあら、凄い脅えようね」
「お姉さん大丈夫?」
そんな彼女の様子を気にすることはなく、スペリアとラリーは人の姿変わり、彼女へ近寄る。無論、彼は二人から離れることが出来ないため、彼も引っ張られる形で彼女に近づく。
「うーん……これは面倒な奴ね」
「スペリア、何とか出来るのか」
「もちろん」
彼女の状態を見たスペリアは近くにあった奴隷契約書を探し始め、それを見つけると魔法を契約書に発動させる。
突如少女の首輪が光始めた。
「ふえ……?ふぇぇぇぇぇぇ!?」
「んがぁ!?」
「きゃっ」
「ふにゃ!」
そんな情けない声を上げながら、彼女は彼の方に引っ張られるように飛んでくる。あまりにそれは突然であったため、彼は受け身を取ることも出来ず、左右にいる彼女たちと共に一緒に倒れてしまう。
彼に覆いかぶさるように飛び込んできた彼女は自身の大きな胸を相手の鎧で大きく歪ませ、服から見える谷間が強調される。残念な点と言えば、彼自身は鎧を着ているため、その柔らかさを感じることは出来ないことだろう。
「ご、ごめんなさい……今すぐ……あれ?」
彼を押し倒してしまった彼女は、すぐに離れようと立ち上がろうとするが、何かに邪魔されているのか、上手く立ち上がることが出来ず、彼の顔の目のまでもがく事しかできない。そして、彼から離れようとするたび、彼の首が何かに引っ張られるような感覚があることで、彼は嫌な予感を覚えた。
彼は押し倒されたまま、スペリアに聞く。
「スペリア……てめぇ……」
「あら、何かしら?私はただ奴隷契約を済ませただけよ?」
「だけじゃねえぇだろ……これは」
奴隷契約。
それ自体問題ではあるが、今一番気にする程の問題ではない。なぜなら、普通の奴隷契約ならこんな状態になる訳がなかった。奴隷契約の際、ある程度の制限などを相手に付与することが可能であるため、今彼女が彼から離れられないのはそれが原因だと彼は考え付く。しかし、こんなおかしな契約をする人間がいる訳がないと思った彼は、スペリアが原因だと考え問いただした。
「そうね……ちょっと、契約の内容を変えたのよ。あなたとこの子を繋ぐ首輪の鎖を拳2個分にするって」
「おまぁ!?」
「拳二個?すっごく短いねー」
無邪気な声を上げるラリーを傍らに彼は目を丸くした。
その間にも彼女は頑張って離れようと動き、その度にお互いの首が引っ張られる感覚を味わう。そして、長くもがいていたためか、彼女自身の息が少し荒くなり、漏れ出る吐息が彼の鼻腔をくすぐる。
「おい、お前」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ちょ、話を聞け!」
2、3回声を掛けようやく彼女は彼の声に反応した。離れようと努力していたためか、今までの会話を聞いておらず、頭に疑問符を浮かべており、仕方なく彼は今の状態を説明した。
「ってことだ。理解できたか?」
「えっと……はい……」
「とりあえず、起き上がって良いか?流石に寝たままは辛い」
「あ、はい。ごめんなさい……」
今の今まで寝っ転がっていた彼は起き上がり、洞窟の地べたに座る格好になる。お互い顔は目と鼻の先、むしろ鼻先が当たっているくらいの近さであるため、彼が早く起き上がろうとすると、鼻先以外もくっついてしまう。そのため、彼は慎重に彼女が起き上がる速度に合わせていた。
ただ、地べたに座る格好もかなり危険であった。彼女は彼の太ももに座り、後ろに倒れないように腕を首へ回す。その恰好はさながらカップルのようであった。
「そんなに見つめ合って、あなたたち仲が良いわね」
「ひゅーひゅー!」
「お前の所為だろお前の。そしてラリーそんな言葉どこで覚えた。……はあ、もうこいつらといると面倒になる」
顔が近くて緊張しているのを誤魔化すためか、彼は二人に対して悪態を付く。
〇
いくら大変な状態になってしまったとは言え、このままここに居座る訳にも行かず、しばらくすると彼らは洞窟を離れようとする。
そのためには歩く必要があるのだが、そこで問題が生じた。彼女の胸は大人にも負けていない程大きいが、身長は子供かそれ以下しかない。そのため、ただ立ち上がるだけでは、首輪の鎖の長さが足らず、彼は腰を下ろして歩かなければならない。加えて目の前には彼女の顔が視界の殆どを埋め尽くす。
無論、そんな状態で長い距離を歩ける訳がない。
「ご、ごめんなさい……」
「しかたがない。これしか方法がないんだから」
「ねーねーお兄さん。私も抱っこ!」
「やらねえよ。これは仕方ない処理だ」
「えー」
結果、たどり着いた方法は、彼が彼女を抱っこするだった。彼女は彼の首へと腕を回し、向かい合ってお互いの顔しか見えない視界は体を密着させることで、顔を近づけお互いの肩に自分の顎を乗せることで解決させた。
本来なら彼も彼女が落ちないように腕を身体に回すべきだろうが、現在進行形で彼の両手は二人の少女によって塞がれていたため出来なかった。
〇
街に戻った頃には日が傾き辺りはオレンジに染まっていた。そんな中、街に入って一番に感じたのは周りからの目線であった。前々から可愛い子を侍らせているといったことで、嫉妬などの視線を受けてはいたが、今回は奴隷少女を抱っこした状態での帰還、嫉妬だけでなく憎悪に近い視線を送られていた。
そんな目線に耐えられず、彼は依頼を終えたことを報告すると、そそくさと拠点の宿屋へと戻った。
「はあぁ……疲れた……!?」
部屋に戻ったと同時に疲れた溜息を吐き、ベッドへと腰かける。その瞬間、スペリアは彼の装備を鎧から普通の服へと変化させた。
今までは硬い鎧で守られていたため感じることがなかったが、普通の服へとなった瞬間、彼女、後から聞いたがリッシュの柔らかい身体を全身で味わう羽目になった。胸や太ももに押し付けるリッシュの胸とお尻、その心地よさに彼は頑張って耐えようとしていた。
「あら?疲れたなら体でも拭いて、寝る準備にする?」
「ふざけんな……」
この状態で裸にされようものなら、彼自身耐えられるかわからなかった。何とかして、今日だけは体を拭くことをやめさせると、暗くなる前に寝ようとベッドに寝転がり寝ようとする。
無論寝る際も彼から離れられないリッシュは彼の身体の上で寝る事になるのだが、布からでもわかる柔らかさと彼女から香る匂いの所為でマトモに眠れる気がしなかった。
一回、これらをしっかり構成練ってしっかり書きたい欲