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第2話 会見

全面的に改装したいなぁ。



「どういう事だ?!」


4月17日の壊滅してから6時間後の18時。

「放置対戦☆クロスラミナ」社長澤田和俊は思わず叫んだ。

6人ほどの管理人と共に1つの画面を見つめている。

それはネットの記事だった。

そこにはこう書いてあった。




『「放置対戦☆クロスラミナ」は事実上壊滅?!

(一部省略)ログインすらできない状態が続くクロミナはアプリケーション自体が運営できない状態に陥っていた!更にその原因として(4月17日18時現在から)6時間前にクロミナ内でリアルタイム放送された「合体魔王と聖騎士エグバートの戦い」が挙げられるという。そのリアルタイムで放送された映像は何かのイベントを暗示するものだったのかもしれないが、その魔王が今回のクロミナ壊滅に関与しており、その元凶はクロミナを陥れる存在として現れたチートを使うハッカーの"metalia"というプレイヤーだと今回の件に関与した上級プレイヤーは語る。(一部省略)自分の個人情報を守る為にもクロミナを消去した方がいいのかもしれない。』




「"metalia"の存在が公になるとまずいことになるぞ……!」


澤田社長が改めて事の重大さを身をもって実感していると佐藤管理人が話し始めた。


「魔王と聖騎士の戦いをリアルタイムで放送したのはあながち間違いではなかったと感じたのですが。現にこの記事であるように何らかのイベントを暗示しているなどと言った憶測が立ちましたから。」


すると井上管理人が口を開いた。


「いや、リアルタイムで放送したことは間違いだった。"metalia"ではないかと思わせるような人物は写ってはいなかったが、バトルフィールドと中心都市の隔離の映像は、確かに"バトルフィールドを前面的に改装する為の工事の開始"と捉えることもできなくはありませんが、勘のいい人ならば事の真髄まで気づいてしまうような内容だったと記憶していますよ?」


2人の言い合いを仲裁することもしない様子の社長は口を開く。


「兎に角。今すべきことは、"metalia"の存在を隠し通す事だ。これから私は今回の件についての会見を開くことになってしまった。海外からも大勢の記者がくるようだから訂正するなら絶好の機会だ。そして1人でも多くのクロミナ引退者を減らすのだ。今はあのイカれた記事のせいで辞める人が増えている。クロミナの個人情報に関することは全て安全である事を知らしめるのだ。」


社長は少しご立腹のようだった。

管理人たちの了解の意味の頷きを見た後ぶつぶつと「漏らした上級プレイヤーは誰だ…?」と言っていた。

"metalia"の存在及び目的は上級プレイヤーにしか伝えていない。

経験値、技術(スキル)、レベルなど全てを総合的に評価して選んだ約50人にしか教えていない。


はぁ、と1つ大きな溜息をつくと、社長は独り言のように

「そろそろ集める時期だな。」

と言った。





「えー、それでは「放置対戦☆クロスラミナ」運用に関する緊急会議を始めさせていただきます。」

司会者のようなマイクを持ち、タキシードを着た男が低い声で開始を宣言する。

大きな会見場に500人程の記者団がカメラ片手に鎮座していた。

ガチャリと右奥の扉が開き、澤田和俊社長が入って来るのを確認すると記者団は一斉に席を立ち、押しかけるようにカメラとマイクを向けた。

そして早くも大勢の記者から質問が投げかけられていた。

その様子を見て司会者は止めに入った。


「鎮まってください。落ち着いてください。答えられる質問は全て答えるつもりです。1人ずつ質問して下さい。」


その言葉に落ち着きを取り戻し、席へと戻った。

司会者と澤田和俊社長は息を吐くと姿勢を正した。


「えー、それでは会見を始めます。質問のある方は挙手をお願いします。」


司会者が全て言う前に既に多くの記者が手を挙げた。

1人の記者が指名されるとその記者は自分の苗字と組織名を明かすと、質問した。


「世間では「放置対戦☆クロスラミナ」は事実上壊滅したとなっていますが、それは事実なのでしょうか」

「壊滅はしていません。」


「では、ログインすらできていないこの状況は一体どういう事なのでしょうか」

「大きなアップデートの準備です。」


「質問を変えます。長期アップデート終了日にアップデートの準備が入ることは極めて異例であり、あり得ない事だと思いますが、それはどう説明されますか」

「長期アップデート後に大きな不具合が見つかった結果です。このままでは大きな事態になり兼ねないと考え、プレイヤーの皆様の事を考え、止むを得ず再びこうしてアップデートの準備に入りました。」


一区切り付けると次の記者が手を挙げた。


「プレイヤーの皆様の事を考えている、と仰いましたが、プレイヤーの個人情報は安全なのでしょうか」

「はい。間違いなく、安全です。」


「その根拠は」

「「放置対戦☆クロスラミナ」のデータ及び個人情報は世界各国の高セキュリティスーパーコンピュータ内に全て保存されています。運営側が許可しない限りデータ及び個人情報の移動は不可能です。」


「ネット記事で囁かれていますが、"metalia"と呼ばれるチートハッカーは存在するのですか?また、存在する場合個人情報漏洩の問題はどうなるのですか」

「まず、"metalia"というアカウントはこちらで調べた結果現在アカウント自体消失しています。存在はしていました。しかし、今現在は存在していません。なのでこれからハッキング行為やゲーム内でのチート行為はないでしょう。そして個人情報漏洩もその結果あり得ないと考えます。」


そう、先程「放置対戦☆クロスラミナ」管理オペレーション室で"metalia"のアカウントの存在を調べた結果

見事に消失していたのであった。

佐藤管理人は存在していたら追跡し、位置情報までも割り出そうとしていたが、そう一筋縄ではいかなかった。


やはり"metalia"も逃げという道を選んだ。

そしてアカウント自体は消失していたため、今後ハッカーらしき者が現れたとしてもそれは新たなる刺客として世間に捉えられるだろう。

そのため別アカウントでのハッキング行為も懸念されるが、アカウント自体が消失したことは事実であり、"metalia"の存在を遠回しに否定することができたのだ。


「しかし、信頼も低下していく中、これから「放置対戦☆クロスラミナ」はどうなるのですか」


澤田社長は1つ大きな息を吐いた。

先程世界各国の「クロミナ」を管理する組織と話をつけてきた。

これから信頼を取り戻す、もしくは既存のプレイヤーを辞めさせない。

それがこのアプリケーションが成り立つ上での最優先事項であると考え、遂に"あの情報"を解禁することが決まった。


「先程から大きなアップデートがあると言っていますが、1つ、大きな変化をこのアプリケーションにしようと考えています。"VRMMO"への対応です」


部屋全体が騒然とする。

その発言を待っていたかのように部屋を飛び出していく記者も多数いた。

号外として今頃拡散されていることだろう。

澤田社長は一回目を閉じると再び大きく開け、堂々と話した。


「我々はその為にも沢山の準備が必要です。ですからプレイヤーの皆様。時間はかかるかもしれませんが、待ってくださると幸いです……!」


感情がこもった社長の言葉にそこにいた記者は圧倒される。


同時にネットでリアルタイム放送していた画面には沢山の「待ってます」「絶対やる!」「楽しみ!」「今消すとか勿体ない」「ずっと待ってます」「運営がんばれ」などといったコメントで溢れかえっていた。


その後の記者からの質問はあまり関係の無かった話だったため省略させていただくが、この会見を通して「放置対戦☆クロスラミナ」の信頼と期待は大きく膨れ上がったことだろう。


いつも見てくれてありがとう。

そして別の小説も投稿し始めました。

私のページからチェックしてみてください!


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