第17話 現状
攻撃が当たった…だと?!
俺は翼の攻撃が奴に効いたことに驚いていた。
みんなが"影"と呼んでいるのはおそらくメタリアである。
奴は、今回の長期メンテナンスが終わる時を待っていた。
そして、まだ他のフィールドに比べれば不完全と言えるこの氷雪地帯で魔王2体を召喚させ、俺らがこの地帯に入ってきたタイミングで外部からのアクセスを禁止させ、自身を攻撃不可プログラムにアカウントを移行させたと考えられている。
それは全て運営の佐藤さんという人の考察らしい。
そして、今俺が見ている画面はリアルタイムで運営に見られている。
運営とコンタクトを取り、俺は俺のアカウントへのアクセスを運営に許可したのだ。
その結果、奴の姿も確認できた上に、メンテナンス終了時から今までの氷雪地帯へ入ったアカウントのログを確認し、1つの怪しいアカウントを見つけることにも成功した。
そのアカウントを解析し、なんとか無力化に繋げてくれればいいが。
しかし、それよりも新たな発展があった。
翼の攻撃が当たった。
俺らの攻撃は当たらない。
俺らと翼の攻撃の共通しない点はなんだ?
折れた剣での攻撃か?
いや、それも攻撃として存在しており、
通称"フィニッシュブロー"と呼ばれ、壊れた剣や杖を対象の敵に投げ当て、攻撃を与えると武器の攻撃力に応じて何倍かに攻撃力が上がる技…それに奴が対応しないわけがない。
特定の武器か?
それも対応するだろう。
だとすれば…なんだ?
俺が考えているとチャットが飛んでくる。
運営からだ。
[もしかしてバージョンが違うのでは?]
バージョン?
もしかして、翼のやつ…アップデートしてないのか?!
いや、それだったら考えられる。
奴は最新バージョンに更新されたプレイヤーが放つ攻撃を全て無効化にするとすれば、最新バージョンではない旧バージョンの攻撃は効くことになる。
これはデカイ情報だ。
「早く逃げるぞ!クエスト入り口へ走れ!」
俺はみんなに指示を出す。
もうここには用事はない。
あとは運営が仕事をしてくれていればいいのだが…。
俺は再び魔王2体と応戦する。
勝てない相手ではない。
いや勝てる、奴がいなければ。
俺は極力魔力や剣技を使わず力を温存し、後ろに下がりつつ剣を交えた。
「カイトー!」
後ろから俺を呼ぶ声がする。
ちらりと後ろを見ると出入り口の前で止まっている5人を見つけた。
他のプレイヤーも確認できた。
どうやらまだ閉じ込められているらしい。
俺は魔王を遠くへ吹き飛ばすとみんなの方へ向かった。
「やっぱり通れないか?!」
「うん…どうしよう!」
武器を失い、丸腰となった美咲は不安そうだ。
他のメンバーも同様だが。
俺はバトルフィールドと、その出口の先のワープポイント及び帰り道の境界線の上にある結界のようなものに触れた。
バチっと音を立て、HPを減らす。
全く、恐ろしい。
俺は自らやってみることで、これを見ている運営に早く仕事をしてくれと訴えた。
するとその時、チャットが届いた。
送り主は運営だ。
[遅れて申し訳ありませんでした。解除致します。]
そのチャットを確認した直後、結界は解除され、皆解放された。
「中心都市へワープしろ!」
俺が叫ばずとも皆行動していた。
氷雪地帯を飛び出すと急いでワープを選択した。
ワープ時間が異様に長い。
ワープしている時は自分のメニュー画面と設定が画面に表示される。
こんな状態だ、運営も対応に追われているのだろう。
すると、その運営からチャットが届く。
随分と長そうだ。
[調査の方、ご苦労様でした。貴方のお陰で運営の仕事が円滑に進めることができ、更には新たなる情報も得ることができました。感謝致します。さて、現状はあまり良いものではありません。他のバトルフィールドでも魔王の出現が見られました。奴は発見できませんでしたが、氷雪地帯同様地方のバトルフィールドを蹂躙し、中心都市「ラミナ」に侵攻してきているとの情報が入ってきています。急いで中心都市に向かってください。そして中心都市には魔王は入れさせないでください。運営一同は貴方の武運を祈っております。]
らしい。
どうやら俺は運営によく使われているようだ。
急いで行けって言ったってワープが長いんだもの。
だが、やはり中心都市まで侵攻してきたか…。
中心都市にはクエストやバトルはしないチャットや電話、掲示板のみを使うプレイヤーも多くいる。
そんなプレイヤーが巻き添い食らう時は俺らクエストプレイヤーが守らなきゃな。
他のバトルフィールドには上級プレイヤーが派遣されているのだろう。
先程のチャットも何人かに一斉送信したかのような文章だったからな。
さて、俺はどうするか。
先程は奴が魔王に常時回復魔法、もしくは常時回復プログラムなのかはわからないがそれをやっていたため倒すことができなかった。
他の魔王はそうでなければ良いんだが。
そうであったらえらい大変な作業となる。
そして、俺は運営の最終手段も聞いた。
一番理想的な乗り越え方は敵を全て殲滅することだが、それが無理ならば最終手段として中心都市「ラミナ」とバトルフィールドを完全隔離するらしい。
そうすれば敵の干渉は無くなる。
だが、それはこのゲーム、「放置☆対戦クロスラミナ」の壊滅を意味する。
あとは運営の判断に任せるのみだ。
俺は言われた仕事を遂行する。
期待には応えたいと思うからだ。
誤字がありましたら教えてください。




